表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/72

俺だってこんなめんどくさい奴に絡まれたくなくてヤバイ

結論から言うとセリスを見失った。


 露天風呂から森の奥に入っていくセリスを見つけたので、慌ててレオヴァイザーから降り、大声で叫びながら追いかけたのだが見つからなかった。

真夜中な事もあって明かりもないと先に進めそうもない。薄っすらとした月明りはあるが森の奥は木が茂っているので真っ暗だ。セリスはいったいどこにいったのだろうか?


探したいのだがその手段がない。


 仕方なくレオヴァイザーに戻りアップゥを起こす。ダメ猫スマホ妖精に頼むのは不安だがしょうがない。アップゥはすごく眠そうだ。


「セリスが森に入っていったんだ。探す方法はないか?」

アップゥが少し悩んだ後答える。


「ん~あるよ~やってみる~」

「おう。頼む」


 爆発したり、隕石が降って来るとか恐ろしいことが起きない事を祈りながら待つ。

アップゥがパン!と一回手拍子する。すると俺の体が白く光りだし、その光は天井まで伸びる。

見るとアップゥの体からも白い光の柱が伸びていた。外を見ると森の中に沢山の白い光の柱が見えた。

アップゥがもう一度手拍子すると、森の奥の一つの白い光の柱が赤い光の柱になった。


「あの赤いのがセリスだよ~」

「そうか。ありがとう。で、一体何をしたんだ?」

探索(サーチ)と~目印(マーキング)だよ~」

「お前なんでもできるんだな」

「えへへ~森全部にやったよ~」

「ぜ、全部って・・・それはヤバイ」


 俺の予感は的中した、自分の体が突然光に包まれた森のモンスター達が騒ぎ始めたのだ。森の中にモンスター達の鳴き声が響き渡る。狂喜乱舞するモンスター達。


「セリスがますます危険だ。急ぐぞ!」


 セリスの位置の再確認の為、高度跳躍(ハイジャンプ)を行う。上空から確認し、そちらへ向かって短距離高速移動(とんずら)で突き進む。


 モタモタしている間にセリスは大分進んでしまったらしい。木々の間を抜けながら走っていると、突如レオヴァイザーが吹き飛ばされる。何かがぶつかったようだ。


「なんだ!! 何がぶつかって来たんだ!」

「ヤマト~あれ見て~黒い奴だよ~」


 そこには目印(マーキング)によって白い光の柱に包まれた、黒豹ディオニュソスが赤い目をこちらに向けていた。明らかな敵意。今は構っている暇などないのだが。


時間が無い。


セリスの赤い光の柱がどんどん遠ざかる。一直線に進んでいる事から迷っている訳ではない様だ。


 レオヴァイザーを人型にし、ディオニュソスを迎え撃つ。

一歩も歩けなかった以前の俺ではない。

レオヴァイザーが人型になると同時にディオニュソスも人型になる。


ナビ水晶に通信が入る。どうやらディオニュソスかららしい。


「おい。白い奴。聞こえるか?」

ナビ水晶に映った相手は、黒いフルフェイスの兜を被っていた。声から感じるに若い男の様だ。


「聞こえるが、今急いでるんでな。ちと見逃して貰えないだろうか」

「ああぁん?お前が先に攻撃して来たんだろうが!なんだぁこの白い光は!早く消しやがれ!」

「見せて見せて!!」

「ってちょ!おい!邪魔だドロシー!」


男の前に水色の髪の猫耳妖精が現れ、ナビ水晶いっぱいに映される。


「あ~おんなじだね~」


アップゥもナビ水晶の前へ行く。向こうの通信画面にはアップゥが映っているだろう。


「あなたお名前は?」

「アップゥだよ~」

「私はドロシー!よろしくね」

「よろしく~」


えっと。急いでるんだが・・・


「おいドロシーどけ!!邪魔だ!!」

「もージンのケチ!!」

「うるせぇ!白い奴!この光を消せってんだヨッ!!」


 喋りながらディオニュソスが斬りかかって来る。

前に戦った時よりも早い。なんとか斬撃をヴァイザーシールドで弾き返す。

相性が悪い。ディオニュソスの攻撃を受けても聖剛壁ホーリープロテクションで防げるが、逆にこちらの攻撃はかすりもしない。


「おいアップゥ。あいつの目印(マーキング)を消せないのか?」

「一週間は消えないよ~」

「一週間だと!!」

俺とアイツの声が重なる。


「殺すしかねぇみてぇだな!!」


 ディオニュソスの攻撃が早まる。テクニカルな攻撃が上から横から襲い掛かって来る。だが、レオヴァイザーの防御を突き破ることはない。速さを重視した攻撃では最早聖剛壁ホーリープロテクションを削る事すら出来ないのだ。


「んだてめぇの硬さは!はあああああ!闇の刃(ダークネス)!」

「いいよージン!やっちゃえー!!」

「耳元で騒ぐんじゃねぇ!」


 ディオニュソスの二刀流の刀から、黒いオーラが稲妻の様に(ほとばし)る。前に見たレオヴァイザーの聖障壁(ホーリーガード)を貫いてきた技だ。


「ひゃっひゃっひゃっひゃ!!俺の刃で踊れ踊れ踊れええええぇえ!」


威力の増した黒いオーラの刀が、レオヴァイザーの聖剛壁ホーリープロテクションを削っていく。

斬っては離れ、離れては一瞬で近づき斬りつけて来る。目で追えるスピードではない。

目を瞑って心眼でタイミングをって程、俺は達人じゃない。ただの一般人だ。


「くっそ。めんどくせい奴だ!」


なんとか近づいて来たタイミングを見計らって、円形広範囲のスピンスラッシュで樹木ごと斬る。

捉えた!と思ったが残像だった。


 うむ。撤退しよう。セリスを追うのが先だ。逃げながら考えるか。俺はレオヴァイザーをセリスが向かった方面に向けて高度跳躍(ハイジャンプ)する。


 流石に上空までは追ってこれないようだ。

だが、森の木々を抜けながら白い光の柱が追って来る。


「てめぇ!逃げるんじゃねぇ!」

「構ってる暇はないんでな」


 リキャスト毎に高度跳躍(ハイジャンプ)しながらセリスの赤い光を目指す。少し開けた場所に白い大理石で出来た遺跡がある。そこにセリスが居るようだ。

位置を調整し手前に着地する。少し遅れてディオニュソスも到着する。


「バッタかお前は!早くこの光を消せ!じゃねぇと・・・」

 

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


 レオヴァイザーとディオニュソスの丁度中間の地面が割れ、大地から黒い双頭の犬が現れる。尻尾がと鬣がそれぞれ蛇になっている。大きさはレオヴァイザーの2倍程で、アップゥの目印で白く光っていたが、邪悪なオーラを垂れ流していた。


「なんだあれは!」

「かっーだから言ったじゃねぇか。オルトロスだよ」


 オルトロスはそれぞれの頭をレオヴァイザーとディオニュソスに向け、低い唸り声を上げている。

オルトロスはどちらを獲物にするか決めかねているようだ。


「お前がピョンピョン跳ねてるから目立って呼び寄せたんだゼッと!」


喋りながら斬りかかって来るディオニュソス。当然オルトロスもこちらに突進してくる。

オルトロスのたてがみの蛇達が青いレーザーをこちらに向けて放つ。ディオニュソスはサッと回避するが、こちらは回避が間に合わずヴァイザーシールドで防ぐ。


 オルトロスは俺とディオニュソス両方に攻撃してくるが、ディオニュソスは俺にしか攻撃してこない。

つまり疑似的な2対1だ。

あれだけの巨体なのにディオニュソス並みの速さで動きまわるオルトロス。尻尾の蛇が出す火炎を避けながら、俺を攻撃するディオニュソス。

俺もなんとか反撃したいところだが、2匹の相手をしながらだと難しい。聖剛壁ホーリープロテクションを全開にし、防御に徹する。必ず隙が出来るはずだ。


「んがぁあ。かてぇ!なんなんだおめぇは!!」

「お前こそ諦めろ」


 防御方向に性能を上げておいてよかった。2匹相手でもなんとかなっている。たまに聖剛壁ホーリープロテクションを破られ攻撃を受けるが、女神のギフトのおかげで回復が間に合っているようだ。


 だが、そうも言っていられないようだ。オルトロスはディオニュソスに攻撃が当たらないと諦め、目標をレオヴァイザーに絞り始めたのだ。チャンス到来とばかりにディオニュソスも攻撃を強める。装甲を突き破られるのも時間の問題だ。


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴ


「なんだ!」

再び地面が割れ、今度は3個の頭を持つ赤い犬が現れる。大きさはオルトロスより少し大きい。

「ゲッ。ケルベロスまできたか・・」

ケルベロスはオルトロスと目を合わせると、俺の方を向いた。


どうやら今夜の獲物を決めた様だ。



レオヴァイザーは絶対絶命のピンチを迎えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ