俺だってたまにはゆっくり温泉に入りたくてヤバイ
温泉回です。
聖騎士PTをレオヴァイザーのディメンションマイルームに案内する。残念ながらまだ温泉が追加されていなかったので、先に夕飯をとる事にした。温泉の追加完了まであと2%位だったから、夕飯を食べてる間に完了するだろう。
リビングに案内されたイサム達は、それぞれにレオの中を探索し、日本のマイホームに驚いていた。もちろん転生者であるイサムやサチコは懐かしがっていた。
「あ~あここにTVがあればなぁ。明らかにTVを置くスペースなのによ」
「キッチンには冷蔵庫と電子レンジを置く場所があったわ」
「いいなぁ。トイレとお風呂もあるし。どんだけヤマトは贅沢してるんだよ」
「ホント。ここに住みたいくらいね。住みたいわねーあー住みたい」
イサムとサチコが不穏な会話をしているが無視する。
ナナとポポルは柔らかいソファーが気に入ったらしく、飛び跳ねて遊んでいた。ショコラとセリスは料理中だ。アップゥはみんなが楽しそうなのが、うれしくて部屋中飛び回っていた。
今日の夕飯はもちろんカニ鍋だ。鉱山で倒したニードルクラブを持って帰って来たのだ。ディメンションマイホームに電化製品は付いていないが、食器棚と食器は付いていた。柄のない白い食器だ。
ちなみに照明類は電気じゃない何かで光っている。
木箱から出した缶ビールをショコラの氷魔法で冷やし乾杯する。初めて飲むビールの味にナナとショコラはビックリしていたが、気に入ったようだ。
「ビールもあるのか!レオヴァイザーはすげぇな」
「ホントねえ。住みたいわねぇあー空き部屋とかないかしら」
ギクッ
「二部屋開いてるよ~」
おいこら糞猫スマホ妖精!
「今日だけだからな、明日には世界樹の森の方へ行くんだ」
「あら、残念ねぇ私たちはギバライに行くつもりなのよ」
ホッとした。世界樹の森とは逆方向だな。
イサムが誇らしげに言う。
「俺様の願いはさ。みんなの笑顔を取り戻す事だ。戦争を仕掛けて来るギバライ王にあってみるつもりなんだ」
「流石イサム様です。ゴクゴクゴクお代わり貰えますか?」
「かっこいいのら~」
イサム達の目的は世界平和らしい。1の女神の聖騎士に選ばれるだけはある。ほかの転生者もそういう奴ばっかりだといいんだが。俺は16の女神だし、あんまり目立たない様に自由に生きよう。もちろん身を守る位はするつもりだが。学校長の話じゃ面倒ごとが勝手にやって来るらしいし。
「PON!ディメンション温泉追加されました。すぐにご利用出来ます」
ナビ水晶が見計らったかのようなタイミングで案内する。
「出来たようだな」
「ひゃほおおおおおおおおい!温泉だ行くぞーーーーー!」
我慢しきれず鎧を脱ぎ捨てながら走り出すイサム。サチコが追いかけながら「イサム!ちゃんとたたみなさい」と叫んでいる。すでに奥さんじゃないか。
「よし、じゃあまずは温泉さがしだ」
「は?ヤマトどういう事だってばよ。追加されたんじゃないのか?」
「追加はされた。だがその場所までは指定されていない。俺も知らんのだ」
「ヤマト!ポポルはもう見つけたよ!!廊下のとこ!!!」
ポポルが言うように廊下には温泉宿でよく見る「男」と「女」の暖簾が掛かった入口があった。
「よかった。混浴じゃないみたいね」
「ヤマト様、混浴ってなんですか?」
セリスが不思議そうに聞いた。
「男女で一緒に入れるお風呂だよ」
「だ、男女で・・・一緒に・・・」
赤面するセリス。久しぶりに見る恥じらう乙女はいいものだな。
「私たちは片付けてから入りますからヤマト様達はお先にどうぞ」
「おう、悪いねー」
セリス達が言うまでもなく、イサムはすでにパンツ一丁だ。進められて即男湯の方へ入っていった。
「じゃあ後でな」
「はい。ヤマト様」
なんとなく見つめあったが、新婚さんみたいだなこれじゃ。セリスも何か感じ取ったのか頬を染めていた。
中に入るとまさに温泉の硫黄の臭いが漂っていた。ヒノキ作りの脱衣所に藁の籠。旅行に来た気分になる。ちゃんとバスタオルも用意されていた。どんな仕組みなんだ。
イサムは既にパンツを籠に投げ込み浴室に入っていた。
「ヤマト~~~~すごいぞ来てみろ!!!!!ひゃっほおおおおおおおおおおおい」
浴室の曇りガラス越しで見えないが、バシャーーーーーンと温泉に飛び込む音が聞こえる。
あのさ、俺のレオヴァイザーなんですけど?なんで一番風呂を取ってる訳?
俺も服を脱ぎ浴室に入る。
「ウオッ!」
思わず声が出る。そりゃ声位出る。何せただの温泉ではなく、露天風呂だったからだ。
夜空には異世界の満天の星空が瞬いていた。
そこは明らかに地球とは違う星空だった。色の違う月が二つ浮かび。見たことない星座が夜空を着飾っている。空気も澄んでいるのか、明かりが少ないせいなのかわからないが、星の数も半端ない。
「なんて綺麗なんだ」
「だな~」
温泉に浮かんで空を見上げるイサム。出来れば男となど見たくないもんだが。
男湯と女湯を仕切るヒノキの壁以外は、外の景色が見える様になっていた。温泉にお湯を足す蛇口はレオヴァイザーになっている。シャンプーもリンスもボディーソープも備え付きだ。
ああ、俺、この温泉見覚えがある。小学生の頃だったかな。もしかしたら、マイホームもTVのCMとかで見た家なのかもしれないな。俺の記憶にある設備にしてくれてるというのか?
だとしたらディメンション例のプールは・・・ゴクリ。
イサムと二人で湯につかりながら話す。
「なぁヤマト」
「なんだ?」
「俺達死んだんだよな?」
「ああ、女神はそう言っていたな」
「こういっちゃなんだが、死んでよかったな」
「半分同意だ」
「・・・そうか」
確かに地球でのつまらない生活と比べると、張り合いもあり生きてる感じがする。だが、命の価値が軽い。気を抜けば死ぬ。つねに命の危険を感じる世界より、地球は安全でよい気もする。
死んでよかった、か・・・答えは出そうもない。
「・・・セリスとはやっぱりあれか?寝たのか?」
「手は出していない」
「なんでだ。アレはヤマトが好きだろう」
「踏ん切りがつかないんだ。まだ、この世界に来たことも、彼女に対しても」
「そうか」
「お前だってサチコとどうなんだ?」
「ばっ!おまっ!ササササチコとなんてなんでだよ」
「俺と同じじゃないか」
「ち、ちげぇええよ俺はサチ・・・」
イサムが何か言いかけた時に女湯に人が入って来る気配がする。
「わーーーー綺麗なのら~」
「でっかいお風呂だね!!!」
「やっとお風呂に入れるのね」
「流石素晴らしいお風呂です」
イサムは俺と目を合わせ、人差し指を口に当て、ヒノキの壁から女湯を覗ける穴を探そうとする。
この後の惨事に巻き込まれない様になるべく離れる事にした。結果は目に見えているのだから。
「みんないいなーポポルよりお胸が大きくて!」
「流石です。特にセリス様はプロポーションが素晴らしいです」
「え、そんな。あれ?サチコさん胸が・・・」
「ああ、いつもは潰してるからね。昔イサムに馬鹿にされたからあいつの前では隠してるの」
「なんだと・・・」
女性陣の会話を聞いてイサムが必死に覗き穴を探す。その動きはすでにゴキブリの様だ。
「やっぱりイサムさんが好きなんですか?」
「そうねぇ。どうなのかしら? セリスこそヤマトと寝たの?」
「えっと寝たのは寝たんですけど。本当に寝ただけで・・・」
「ヤマトはこんな可愛い子と一緒に寝て、手を出さなかったの?」
「すみません。そのなんて言うか。私もその後どうしたらいいか知らなくて」
「知らないって?まさか・・・乙女ねぇ。コウノトリが赤ちゃんを連れて来ると思ってるタイプ?」
「キスしたら子供が出来ると思ってるタイプなのら~」
「流石セリス様乙女です」
「ポポル知ってる!!!神様がママのお腹に光を入れてくれるんだよ!」
「え、私もそうだと聞きましたが違うんですか?」
静まり返る女湯。
「そ、そうね・・・ヤマトに今度聞いてみなさい」
「はい。聞いてみます」
見えないがドン引きしているサチコの顔が思い浮かぶ。
イサムも俺に同情している様だ。
「きゃははは。やめるのらーポポルー」
「ママよりは小さいけどナナのやわらかいね!!!」
「素晴らしいです。ナナさん。あひゃはやあああああああん」
「あら、ショコラのもいいじゃない。どーれセリスのはどうかなー」
「や、やめて下さい。サチコさんあああんあああん」
「なんだと・・・」
俺も覗き穴を探す。この壁の向こうに天国があるらしい。あったんだ俺達のユートピアがここに!
イサムが指で上を指す。ヒノキの壁を昇れって事だな。OK!イサム。やってやるぜ!
俺とイサムは根性でヒノキの壁を昇る。これは練習ではない。本番だ!!
「ヤマトとイサムも入りたいんだって~」
アップゥがやっと壁の上までたどり着いた俺達の方を指さして言う。
ああ、わかったよお前がラスボスだな・・・・
「きゃあああああああああああああああああああああああああああ」
女性陣の悲鳴と共に、サチコの投げた桶がイサムの口にガポンと入る。続けてナナの光の矢がイサムの両目に刺さり、ショコラの氷魔法で全身が氷塊とかす。たまらず湯船に落ちるイサム。
俺にはセリスの桶が頭にコツンと当たる。おとなしく湯船に撤退した。
うむ、確かにセリスのプロポーションは素晴らしいし、サチコのは意外にでかかった。ナナのはバカでかい。ショコラは柔らかそうだ。ポポルはガキンチョ。
ごちそうさまでした。天国に行ったイサムも悔いはないだろう。