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俺だってミスリルを上手に加工出来てヤバイ

 意識を取り戻すとそこはセリスの膝の上だった。腹の上ではポポルが泣いていた。

「ヤマト死んじゃった~わーーーん」

「死んでないっつーの」

「あ、生きてた!よかった!」

「よかったね~」


 俺が倒れた直後に、サチコが魔力回復(マジックヒール)を使ってくれたおかげで、なんとか助かったが、危ないところだった。

 ファフニールはミスリルで雁字搦めになって動けないままだ。ミスリルで編み込まれた縄はかなり頑丈で微動すらしない。グルルルルルルと威嚇の声を放っている。


「さて、ポポル。詳しく教えてくれ」

「待って!ポポル先にファフと話す」


 ポポルはトッテッテッテーと小走りにファフニールの顔の前へ行くと話しかける。初めて聞く言語だ。

やがてファフニールの怒りに満ちた真っ赤な目が、緑色へと変化していく。


「もう縄を解いても平気だよ」

「ああ、本当か?」

どうにも信じられずに周りを見渡すと、セリスやサチコさんがゆっくり頷いた。

俺は再び地面に手を付き操者力を込め、ゆっくり縄を溶かしていく。今度は気絶しない様に。


 縄を溶かし、一辺が20m位の正六面体にして、広場の端に置いた。ファフニールは落ち着いている様で、ポポルに頬擦りをしている。こうしてみれば竜も案外可愛いのかもしれない。


「ヤマトこれ見て!」

ポポルに案内されてファフニールの奥の通路を見る。


ああ。納得した。


 通路の奥に、岩で出来た巣があり、1m位の大きな卵が収まっていた。

「ファフの卵が具合悪くなっちゃって、ポポルを連れてきたの。竜の病気を治すのが竜人族のお仕事なんだー」

「だからポポルを連れて行ったのか」

「うん。もうすぐ産まれるはずだよ」


 遠くで「今日は巨大オムレツだ」と言ったイサムに、ファフニールの火炎のブレスが直撃して丸焦げになっていたが、気にしない。もちろんみんな気にしていない。サチコだけが頭を抱えていた。

 

 ポポルが言った通り、卵にヒビが入り、やがて小さな黒いドラゴンが産まれた。


ピーッピーーーッと元気な鳴き声が響く。


「可愛いね~」

アップウとポポルがドラゴンの雛にスリスリしている。雛といってもポポルと同じくらいの大きさだ。

「ポポルが竜魔法で加護したからもう大丈夫」

「ポポル姫様は竜人族だったのですね。モリオア国は竜人族の国とは聞いたことあります」

赤いオカッパから生えてる鹿みたいな小さな角は、竜人族だからだったんだな。

「すぐ出ていくから攻撃しないでくれってファフが言ってるよ」

「ああ、もう戦う理由も無くなったしな。帰ろう」

「そうね。イサム帰りましょう。ここには何もいなかったわ」

「いなかったのら~」

「流石サチコ様です」

「わ、わかった帰ろうぐわあああ」

ファフニールの尻尾でゴムボールの様にもてあそばれながらイサムが言った。


 帰り支度をしていると、イサムが泣きながら言った。

「俺のジークムントが・・・ショボン」

そういえば、折れたんだったな。いい機会だから片手剣に変えたらどうだろうか。

「貸してみろ」

ポポル救出に付き合って貰った手前、申し訳ないのでジークムントを直してみる。


 正六面体にしたミスリルを少し溶かし、接着剤の様にして折れたジークムントの根元と先っぽをくっつけた。

一応、ジークムントの刃をすべてミスリルで覆って傷が目立たない様にした。切れ味はわからん。なるべく刃は薄くしたが、どうせイサムじゃ両手剣を使いこなせないだろう。

「青い剣から銀の剣に変わっちまってすまんが、これでどうだ?」

「おおおおおおおおありがとう!!ヤマト!!!心の友よ!!」

「そうだな。せっかくだから名前はグラムにしよう。北欧の伝承通りだし」

「魔剣グラム!!!!いいじゃないか!!!」

魔剣なんて言ってないが・・・・

 

 イサムが誇らしげに構えたり触ったりするとグラムはヘニョっと曲がってしまった。

「おい!ヤマト!不良品じゃないか!!」

「え?なんでだ?ちゃんとくっついた筈だぞ」

確認の為、グラムに操者力を込めるとビンッとそそり立った。

イサムに返すとグニョッと曲がってしまう。


まさかな・・・


「イサム。まっすぐになれと念じてみてくれ」

「こうか・・・うーーーん!」

イサムがグラムを握り力を込めるとビンッとそそり立った。


 どうやら、鉱脈からミスリルの成分だけを直接吸い出したこの金属は、普通のミスリルと違うみたいだ。

言うなれば高純度(HQ)ミスリルってところか。確かに普通のミスリルと比べると輝きも違う。


 試しに正六面体から球を作ってそれぞれに触ってもらった。

反応したのは俺とセリスとイサムとサチコの4人だけだった。

転生者と操者のみの様だ。つまり転生者にも操者力があるということだろうか?


 ネールから貰った普通のミスリルの球は、俺とセリスしか形を変えられなかったので、高純度(HQ)ミスリルだけを転生者も操作できる様だ。

セリスが普通の操者は鉱脈からミスリルだけを吸い出す事なんて出来ないと言っていたので、高純度(HQ)ミスリルを作れるのは俺だけって事になるな。


 一応、この巨大な正六面体の、高純度(HQ)ミスリルは持って帰ろうかとも思ったが、重くて諦めた。

その代りに、高純度(HQ)ミスリルで俺の長剣とセリスの小剣を作っておいた。柄にはシロネコトマトのマークを入れて置いた。加工の技術は持っていないが、思った通りの形に出来るのでこれはちょっと楽しい。

残りの高純度(HQ)ミスリルも今度取りにこよう。

「ヤマト様とお揃いですね」

「ああ、レオヴァイザーのマークだ」

「うふふ。ありがとうございます」

セリスはすごく喜んでくれた。


「ヤマト!ファフニールが乗せてくれるって!」

ポポルが駆け寄って来る。

どうやら帰りはカニゾーンを通らなくてもいいようだ。

「それはありがたいな」

俺達はファフニールの背中に乗ると、ファフニールは大きな翼を羽ばたかせ、大穴を上昇していく。


一人を除いて。


ファフニールがイサムを乗せるのを嫌がったからだ。

「悪いなイサム。この竜、6人乗りなんだ」


「そんな~ひどいよ~ドラ○も~~~ん」

イサムの泣き声が聞こえた気がしたが既に姿は見えなかった。


 ファフニールはあっという間にギルド前まで運ぶと巣に帰っていった。

しばらくすると永遠の鎖(エターナルチェーン)の効果でイサムが飛んでくる。

イサムは出迎えに来た冒険者ギルドのおばさんの胸へギルド・イン!

「あんッ」

おばさんの喘ぎ声が聞こえて来る。

飛び込む相手は選べないのか・・・南無。


 冒険者ギルドのおばさんにファフニールの事を説明すると、即納得してれた様で、ファフニールの討伐依頼自体を取り消してくれた。仕事の出来るおばさんだ。どこかの青い髪のツインテールギャル受付嬢とは違うな。


「これで一件落着だな。流石俺様だぜ」

「そうね。あなたは何もしていなかった様な気もするけど」

「何もしていないのに自分の手柄にする。流石イサム様です」

「イサムすごいのら~」

ポーズを決めるイサムにそれぞれがつっこむ。これがこのPTの形なんだろうな。

正直、異世界を満喫しててうらやましいと思った。


「そうだ、イサム達。レオの中へ来ないか?」

「なんだ?礼ならいいぞ。素晴らしい剣も貰ったしな」

「ああ、お礼という訳じゃないが、そろそろ完成してるはずだしさ。浴びて行けよひとっ風呂」

「風呂!?」

イサムよりサチコの方が強烈に反応した。

「ああ、温泉だ」

「お、ん、せ、ん!!!」

「どどどどどういう事だ?レオの中に温泉が?」

首を絞められながらイサムが聞く。

「ああ、実は俺達もまだ見ていないんだが完成しているはずだ」



「早く入りましょう。転生してからまともなお風呂に入ってなくてつらいのーーーーーー!!」

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