俺だって一緒にポポルを助けにいきたくてヤバイ
ギバライ国に攻め入ったモリオア国の軍勢だったが、ギバライ国の最新型獣人機に苦戦し、撤退を開始した。これでほぼ同時期に起きた四国の争いはすべて休戦状態となった。
だが、休戦状態となっただけであり、次の戦争に向けて、急ピッチで獣人機の開発が進む事となったのだ。
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「俺様参上!!!その依頼!!最強の俺様が!君達の笑顔を!取り戻す!」
ファフニールにポポルを攫われ、地面に倒れたままの俺達の背後から、恥ずかしいシャウトが聞こえて来る。後ろを振り向くと、金髪の男が笑顔でポーズを決めていた。黄金の鎧に身を包み、巨大な青い剣を背負った彼。殴りたいほどの笑顔がまぶしい。
「流石イサム様です」
「イサムかっこいいのら~」
「恥ずかしいから早くやめなさい」
イサムと呼ばれた男の後ろには女性が3人立っていた。
流石と褒めたたえている女は、メイド服で上品な拍手でイサムを称えていた。むろんメイド服がよく似合っている事からもわかるようにスタイルは抜群だ。
のら~語尾の頭の緩そうな女は犬耳の獣人で、ほぼ半裸だ。ブラとパンティーが硬そうな金属性だが、それって防御に役に立つのか? だが、その金属製のブラが、はちきれんばかりに膨れ上がっている事からもわかるようにスタイルは抜群だ。
恥ずかしいからやめなさいと叱っている女を見て思い出したが、たしかヴァチの乗合馬車であったカップルだ。残念ながら胸はまな板だが、背負った胴回り1mを超えるハンマーの威力は抜群のはずだ。というか抜群だ。恥ずかしいポーズを止めなかったイサムが、フルスイングで遥か彼方に飛んで行った。
「ぐわああああああああああああサチコーーーーーーーーーー」
「流石サチコ様です。ホームラン」
「はわわ~飛んで行っちゃのら~」
飛んでいったはずのイサムが、バンジーのゴムが繋がっているかの様に同じ角度で戻って来る。
戻って来たイサムは犬の獣人の胸の谷間にホールイン・ワン!した。
いいなぁラッキースケベ担当なのか。
胸の谷間からでバンカーショットで再度吹っ飛び、胸の谷間に戻って来る事複数回、イサムがボロボロになりながら、口を開く。
「安心しろ!最強の俺様があの子を助け出す!!俺様は史上最強の[聖騎士]だ。名前は岸田 勇だ。気安くイサムと呼んでいいぞ」
「私は臼井 幸子。[聖僧侶]よ。巨大な竜が女の子を攫った一部始終見ていたの。協力させてもらうわ」
「ウチはナナなのら~JOBは狩人なのら~」
「私はショコラ。イサム様のメイドでございます」
「よ、よろしく・・・ヤマトとセリスだ」
あまりにも濃いメンツに思わず名乗ってしまったが、出来ればあんまり関わりたくない。まだイサム達に助けてくれと頼んだつもりはないが、いそいそと準備を始めている。
それにしても聖騎士と聖僧侶って事は転生者か。話は一度聞いてみたいところだが。
「じゃあ、俺様達は助けに行って来るから、そこのギルドで待ってるといいぞ」
「待ってイサム。ヤマトってあそこに停まってるトラックの運転手じゃない?確か聖操者だったはずよ」
ああ、向こうも俺を知っているらしい。
「そうだ。聖操者のヤマトだ。確かヴァチの乗合馬車でもあった気がするが」
「そうだっけ?俺様ヴァチでは忙しかったからな~ナナを拾ったり、ショコラを助けたり。ヤマトはそんな姿だけど日本人か?」
「お前も金髪だろう。俺も日本人だトラックで事故ったら転生しちまってな」
「やっぱイケメンだよなー。俺様も女神に頼んで金髪のイケメンに変えて貰ったんだ。サチコなんてそのままの姿でもったいないぜ。まな板もどうにかしてもらったら・・・」
最後まで言えずにハンマーで地面に打ち込まれるイサム。聖騎士じゃなかったら即死だな。
「私達は1番と2番の女神だったのだけど、ヤマトは何番だったの?」
「俺は16番だ。話はしたいんだが、攫われたポポルが心配だ。先に助けに行かないか?」
「16・・・そうね。当然ヤマト達も来るわよね。向かいながら話しましょう」
「ああ。そこの潰れたごみはどうする?」
「問題ないわ。私の女神のギフト永遠の鎖で勝手に飛んでくるから」
永遠の鎖か、さっき吹っ飛んだイサムが戻って来た不思議な現象がそれだな。
「ヤマト様。鉱山の中まではレオヴァイザーが入れません。私が行くので待っていて下さい」
俺がレオから降りた弱さを気にしてセリスが声をかけてくれた。
確かにレオの大きさじゃ鉱山の中には入れない。だが、ここで一人でお留守番って訳にもいかない。
「セリスありがとう。大丈夫だなんとかなるだろう」
「はい!私が守りますから!!」
本当にありがたいが、男としてはどうにも・・・恥ずかしいというか。実際セリスには手も足もでない位弱いから仕方がないが。
冒険者ギルドのおばちゃんが心配しながらお弁当を配ってくれた。
「あの鉱山はファフニールが来てからモンスターも増えちまってる。十分気を付けるんだよ」
「おうよ!俺様に任せとけ!キラッ」
イサムの笑顔が光る。表現ではなく本当に光るのだ。
ハイママ鉱山へ向かって歩きながらイサムがペラペラ喋りだす。
「笑ったら歯が光るようにしてくれって女神に頼んだんだぜ」
女神に何個お願いしてるんだ?
俺なんてトラックが壊れない様にとしか頼めなかったのだぞ。
もしかして制限時間内なら女神に何個でもお願い出来たのか?
「イサム。女神に何個お願いしたんだ?」
「ああ、最大10個らしいが個数が多いほど性能が下がっていくらしいぞ。俺様は当然10個だ!!!」
あ、イサムもやらかしてるぽいな。
「サチコさんは何を頼んだんですか?」
サチコは少し悩んだ表情の後、口に人差し指を当てて言った。
「世の中には知らない方がいい事もあるのよ」
「そうですか」
なんとなくだが理解した。というか永遠の鎖でバレバレだが。
姿を変えなかったのは、転生した時にイサムと離れ離れになっても見つけて貰えるようにだろう。
サチコはイサムにガチ惚れでイサムは気づいていないパターンの奴だな。どうせ幼馴染かなんかだろう。
「俺様とサチコは幼馴染でさ、一緒にスキーに行ったら雪崩にあっちまってお陀仏さ。転生出来てラッキーだぜ」
想像通りだな。雪崩にあったのもイサムのせいなんじゃないの?とか疑ってしまう。
「こっちの世界は天国だな。女の子は可愛いし、最強の力でモンスターは弱い。獣機だっけ?あのカバみたいなのもズバッズバッだぜ」
「まさか、獣機を倒してるのか?」
「まぁ、俺様からしたらでかいモンスターと変わらないな」
恐ろしい奴だ。聖騎士なだけはある様だ。
「あの・・・イサム様。獣機を倒しているのはサチコ様でございますが・・・」
「イサムがそんな剣で戦ってるからでしょ。聖騎士に両手剣のスキルなんてないのにさ」
「だってデカい剣のほうがカッコイイだろ。キラッ」
ショコラとサチコの鋭いつっこみにも余裕のポーズと笑顔で答える。
そうこうしている内にハイママ鉱山の入口へ到着した。
やはりレオヴァイザーは入れそうもない。巨大な竜はどこから出入りしているのだろうか?
どこかに裏口が?その答えはすぐに見つかった。
真っ暗な鉱山へ入って少し奥に進むと、突然明るい大広間に出る。どうやら吹き抜けになっている様で、見上げると青い空が見えた。
広間の真ん中には巨大な大穴が開いていた。かなりの深さで底が見えない。間違いないな。ここをアイツは通っているのだ。
「この下におっきなモンスターの反応があるのら~」
JOBが狩人らしい犬獣人のナナが伝える。
大穴の周囲には螺旋階段がついていて、そこから地下へ降りていけそうだ。
「ちょっとイサム先に見てきてくれる?」
「え?うああああああああああああああああさちこおおおおおおお」
サチコはイサムを大穴に突き落とした。