俺も獣人機部隊と一緒に戦ってヤバイ
ヴァチ国の特務獣機部隊は解散した。セリスが不在の間にヴァチ国軍が壊滅したという理由もあるが、獣機が獣人機へと変化した事で新たに部隊を編成し直すといった意味もあった。
本来であれば新しい部隊の隊長にはセリスが収まるはずであったが、研究所所長ネールと操者教育学校校長カナタからの特殊任務中であった為、別の者が隊長となった。
赤い馬の獣人機ブケパロスに乗り込む彼女が、その新しい隊長のライリーである。伸長は170cm位のモデル体型で、むろん部隊の男からの視線は熱い。その美しい亜麻色の髪がなびく度に男たちはため息を上げる。
操者学校での成績はセリスに次ぐ2位。もちろんあえての2位だ。
それはなぜか。
答えは簡単である。
セリス大好きっこなのだ。
常にセリスと行動し、セリスに近づく害虫を退治して来た。
もともと入学当初はライバルだったはずだが、剣術の試合に負け、決闘に負け、セリスの天使の様な天然ぶりに完敗し、いつの間にか付きまとっていた。お姉様は私が守ると。
セリスが恋愛に疎いのは本人の性格もあるが、ライリーの裏での害虫退治が激しかった事もある。
いつしか二人は青薔薇の騎士と赤薔薇の騎士と呼ばれる様になった。
セリスの事をお姉様と慕う彼女は、新しい部隊特務獣人機部隊隊長として初陣に出ようとしていたのだった。
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縞々の蛇の獣機の前に、赤い馬の獣機が倒れていく。
一瞬の出来事だった。
レオに乗り込もうとすると俺達の前に赤い馬の獣機が現れた。その赤い馬は俺達を飛び越え、縞々の蛇に体当たりしようと突進する。
ズガガガガガン!
縞々な蛇はその長い尻尾で後ろから赤い馬を薙ぎ払ったのだ。
赤い馬が倒れると、蛇の獣機は馬の体を引き寄せ絡みつき締め上げていく。
ガキガキグキ。
遅れてきた狼の獣機4機と羊の獣機4機は、馬を人質に取られた事で手も足も出せずにいた。
蛇の獣機の口が開いて喋り出す。
「モリオアの姫はどこに行った?今すぐ連れてこい」
語尾を強め長い舌で威嚇する縞々の蛇の獣機。
馬の獣機は完全に締め付けられ動けないでいる。
あれに乗ってるのが女騎士だったら、中では「クッ!殺せ!」だろう。
急いでレオに乗り込む。人型へ変形する。
ガチョンガチョンガチョンプッピッガン
何何すごい!これ何?この棒は?このボタンは?とポポルが騒ぐ。
うるさい黙れ。一瞬の油断が命とりだ。
「セリス!ポポル姫さんを抱っこしておいてくれ!」
「はい!ヤマト様!」
ポポルは外の様子が見たい様で、すごいすごいと言いながら騒いでいる。
アップゥはポポルの周りを回りながら、すごいでしょ〜すごいでしょ〜と騒がしい。
あーもうイキナリ子供が二人も出来た気分だ!
「や、ヤマト様。こ、子供・・・二人くらいがいいですね」
セリスもなんかブツブツ言ってるし。
勢いでレオで応戦するとか言っちゃったけど、ポポルはレオに乗ってるし逃げてもいいよな。
あんなめんどくさそうな蛇は軍にでも任せといたらいいだろう。
ポポルの方を見るとすでにアップゥと仲良しになったらしく、幼稚園で歌いそうな歌を大声で唄い始めた。ここは幼稚園バスか。セリスは自分の世界に入ってしまった様で、真っ赤になり頭から湯気が出ていた。
「ヤマト様聞こえますか?こちら特務獣人機部隊」
通信が入る。どうやら狼の獣機の奴かららしい。
「聞こえるぞ。ポポル姫さんは救助した。後は頼む」
「お、お待ち下さい。あの捕まっているブケパロスには隊長が、ライリー隊長が乗っているのです」
「ら、ライリーが!」
セリスが驚きの声を上げる。
「セリス。ライリーを知っているのか?」
「はい。ヤマト様お願いです。ライリーを助けていただけませんでしょうか」
隊長だろうが何だろうが俺には関係ないところだが・・・仕方ない。
「こちらヤマトだ。レオヴァイザー。蛇退治に協力する」
「ヤマト様!」
ティロティロリン。
見えないし聞こえないけどセリスの好感度ポイントが上がった気がする。
「ご協力感謝する。では我らは左右から脇を狙います」
通信が終わると同時に狼獣機4機が左右に分かれ突進する。
「ちょっ!考えも無しに突っ込むなお前ら!」
ズザッババババ!ドカカッ!
止める間も無く尻尾でなぎはらわれる狼達。
「すみません。後は頼みます」
血だらけの兵士から通信が入る。気絶した様だ。
チッ! 残りは羊4機と俺だけか。
あの狼達人型に変形出来たんじゃないのかよ。
「羊達は変形出来ないのか?」
羊の一機と通信する。
「変形出来るのですが。歩いた事もないのです」
中には若い少年が乗っていた。
初めてか。そりゃ出来たばかりらしいからな。
「立ってるだけでいい。武器を構えて威嚇してくれ」
「はい、わかりました!」
とは、言ったものの赤い馬を盾にしている蛇をどうしたもんだか。
「セリス。白馬の操縦席は頭だったよな」
「はい。頭ですってまさか」
「その、まさか・・・だッ」
レオの深緑の瞳が光る!
魔力を込めて剣をサイドスローで投げる!
剣が風斬り音を立て、横に回転しながら飛んで行く。
突然剣を投げられ避ける暇もなかった蛇を、金属が削れる轟音を鳴らしながら切り裂いて行く。
もちろん赤い馬の獣機の体ごとだ。
回転したまま突き抜け飛んで行く剣。
蛇が大きな口を開く。
「馬鹿な!仲間ごと切り裂くだと!信じられ・・・グハッ!」
ブーメランの様に戻って来た剣が大口を開けた蛇の頭に突き刺さる。
「ヴァイザーブーメラン・・・だ」
少し照れながら言う。
ポポルとアップゥとセリスが俺に憧れの熱い視線を浴びせる。
剣が戻って来るかは賭けだったが、研究所でミスリルを落とした時になぜか戻って来た事を思い出し、試して見た。
練習したら剣をサイコキネシみたいに動かせるかもしれないな。
自由に動かすというよりも、あらかじめ命令する感じだが。
「おっといかんいかん」
俺はレオで短距離高速移動すると爆破する寸前の蛇から、赤い馬の頭だけぶんどり救い出す。
背後で大爆発する蛇の獣機。と馬の体。
あ、ここ学校だった。大丈夫かな?
ああ、大丈夫だった。
学校長がなんかバリアみたいな魔法で爆発を封じ込めてる。
流石ネタバレ禁止爺さん。
安全な所で馬の頭を降ろす。
操縦席の扉を開けると、見覚えのある光景が目に入る。
赤いチェストアーマの女騎士が気絶しており、その姿は逆さまにM字開脚でパンツ丸出しだった。
「クッ・・・殺せ!」