俺もお姫様を配達したくなくてヤバイ
田中 賢治が転生したのは200年前である。
女神の間3に呼び出されJOB聖賢者となった。聖賢者とは黒魔法使いの強化版である。
病死した彼の望みは長く生き、未来を見る事だった。
与えられた女神のギフトは超長寿と神託で、超長寿は名前の通り長生きになるスキルだ。
そして神託は・・・
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「未来予知じゃ!」
「学校長様。誰に向かって話してるんですか?」
「誰でもない。気にするな」
何もない方向に向かって指さししていた様な気もするが・・・
「ワシの女神のギフトは神託じゃ。ワシの寿命がつきるまでの未来を見る事が出来る」
すんごいネタバレの好きな人なんだな学校長。
「じゃが見た内容は人に話せん。残念じゃ。本当に残念じゃ。ワシはなんでも知っておるのにのう」
「学校長様。話すとどうなるのですか?」
「女神が言うにはワシは死ぬ。じゃが実際死ぬかはわからん。話した事はないからのう。これでも結構口は固い方なのじゃ」
すんごい口が軽い人にしかみえないんだが。
「それで・・・なんで俺の為にこの学校を作ったんだ?」
「そうじゃったそうじゃった。ワシの女神のギフトは未来予知だと言ったじゃろ?当然、お主が来るのも知っておった。そしてお主が聖操者である事もな」
「じじ~何でも知ってるんだね~」
アップゥは学校長の長い髭が気に入ったのか引っ張ったり絡まったりして遊んでいる。
「それでじゃな。お主が来るまでに操者達を育てておかなければならんかった。その為の学校で、つまりお主の為じゃ。お主がこれから大変な事をするのに必要なのじゃ。おっととととこれ以上は言えん。未来の事じゃでな」
俺が聖操者だとなんで操者を育てる必要が?重要な部分が抜けているので意味不明なんだが。
「その大変な事をおしえてくれないか?」
「未来の事は話せないのじゃ」
「もしかして俺が操者学校の校長になるのか?」
「未来の事は話せんのじゃ」
「じゃあ俺が生徒を率いて戦争するのか?」
「禁則事項ですのじゃ」
本当にに結構口が固いな。そりゃ自分の命が掛かってるんだから当たり前か。
「この神託は厄介なスキルでのう。何しろワシは、転生すると同時に自分が死ぬ日を知る事になったのじゃからな。いやーあれは悲劇じゃった。今でも死ぬ日までのカウントダウンをして、恐怖の毎日じゃよ。魔王の配下になったのも勇者の手助けをする為じゃったし。この学校を作ったのも・・・察するのじゃ。ワシも悪い方向には進まぬように最大の努力をしているって事じゃ」
「俺は何をしたらいいんだ?」
「お主のやりたいようにすればよい。ワシから何をすればよいなどの助言は出来んのじゃ」
「何もしなくてもいいんだな」
「お主は何もしなくてもよい」
ネタバレ爺からネタバレ禁止爺に変わった学校長。
どうにかして「大変な事」の内容を聞き出せるような質問を考えるが、思い浮かばない。
「ほれ、何もしなくても始まったのじゃ」
「え?」
学校長がそう言うと校舎の方から小さな女の子が走って来る。
「じじいぃぃいいいい!カナタのじじぃいいいいい」
真っ赤な髪の5歳位の女の子が学校長に向かって飛びかかる。
手には紫色のナイフを握りしめて。
学校長はヒラリと回避して言う。
「ポポル。いつも通り元気が良いのう」
「うん!!カナタのじじいも元気だね!」
少女は喋りながら学校長に向かって鋭い突きを何度も行う。その度に短いスカートがひらひら舞う。
学校長も余裕で回避しながらローブがひらひら舞う。それはいらない。
「もーホントじじいに攻撃当たらない。せっかく即死級毒ナイフなのにぃぃぃ」
「フォッフォッフォッ。危ない武器じゃのう。じゃが当たらなければどうとでもないのじゃ。」
「今日は当てるもんね!」
「ポポル。まぁ待つのじゃ。今日はお客さんが来ておる」
学校長の言葉に動きを止めるポポルと言われた女の子。
身長は100cm位で赤いオカッパ頭だ。よく見ると小さい鹿の角っぽいものも見えている。
瞳も燃えるような真っ赤な赤で、目が合うと一瞬恐怖を感じた。
「じじい。こいつら誰?」
キッと俺とセリスを睨むポポル。
「ヤマトとセリスじゃ。ポポルをモリオア国へ連れて行く者達じゃ」
はっ?今なんて?まさかこの子が姫?
「じじい。ポポル一人で帰れる言ったでしょ~」
と、学校長へ向かって笑顔で斬撃を繰り出すポポル。
「そういう訳にもいかんのじゃ。ホレ、ヤマトよ。この子がモリオア国のポポル姫じゃ。よろしく頼むぞ」
その斬撃をヒョイとよけて横から抱き上げこちらにポポルを見せて来る学校長。
「えっと初めまして佐川大和だ。ポポル姫様。」
「ポポル一人で帰るから帰っていい」
確かにあんな綺麗な短剣裁きなら、道中危険はないんじゃないかな?
神託を使ってるであろう学校長は余裕で回避しているが、あんなの普通じゃ避けられないぞ。
「だ、そうだ。明日からの配達は中止だな」
俺の危険予知スキルがビンビンだ。そんなスキル無いが。
確実に面倒な事になるパターンの奴だ。
ヤダ。
無理。
絶対ダメ!
せっかく先方から配達中止のお願いを頂いたのだから、ありがたく中止しよう。
そんな事を思っていると学校長と目が合う。学校長はゆっくり口角を上げニヤリとした。
なんか企んでいるな。
「ほれほれ、まぁそう言わずに。そうじゃセリス自己紹介せい」
「あっはい。大変失礼しました。私は元特務獣機部隊隊長のセ・・」
しまった!!完全にはめられた。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン
学校中響き渡る爆撃音。どうやら獣機の攻撃の様だ。
「ポポル姫をだせ!!ここにいるのはわかっているぞ」
巨大な縞々の蛇の獣機が口を開けると、大きな声が聞こえてくる。スピーカー?そんな機械まであるのか。
ズガンズガンとしっぽを振り回す度に周りの校舎に当たって破壊していく。
「ちっ!しょうがない。レオで応戦するぞ。セリス。あとポポルもこっちへ来い」
学校長は自分で何とかするだろう。何しろ結果が見えてるはずだし。
「はい。ヤマト様」
「レオって何?」
首を傾げるポポルにアップゥが答える。
「おっきな白いライオンさんだよ~」
「あれか!!!ワタシも乗る!!」
俺とセリス達はレオに向かって走り出した。
「ほれ、何もしなくても始まったのじゃ」
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