俺も姫様を護衛する事になってヤバイ
大陸の中でも北に位置し竜王を崇拝するモリオア国。豊かな自然に囲まれ林檎の産地としても有名である。アップゥがワラサ街で買っていた林檎もモリオア産だ。ヴァチ国とは非常に仲がよく交流も盛んであった。しかしある日の事、突然竜王の寝床でもあるギリコノ山の山頂を、ギバライ国の謎の兵器で破壊された事がきっかけでギバライ国と戦争になった。
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「モリオア国のお姫様にゃ」
運ぶ荷物が姫と聞いて気絶しているはずのセリスがピクピクッと反応した。
「ギバライ国と戦争になったせいでモリオア国に帰れなくなったのにゃ」
「姫様ならお供位いるだろう」
それに人間を運ぶのはトラックじゃなくてバスかタクシーだろう。
「それがこにゃ間のフレイムサラマンダーが襲撃してきた時に姫様をかばって怪我したようでにゃ。なんでも瓦礫に潰されたとか言ってたにゃ。フレイムサラマンダーも赤いカメレオンも瓦礫なんて飛ばさないはずなのにおかしいにゃぁ?」
ギクッ・・・
「何でも瓦礫から救い出したのは白い獅子の獣機にゃんだとか・・・偶然かにゃぁ?たまたまいたのかにゃにゃあ?」
ジト目で見つめて来るネール。
獣機研究所を任されているだけはあるな。交渉上手だ。
「わかった。運べばいいんだろ」
「ちゃんとセリスも連れていくにゃ」
「何でだ。セリスにも仕事があるだろう」
「そうにゃ。仕事にゃ。特務獣機隊は解散したから次の任務は姫の護衛にゃ」
気絶しているセリスがガッツポーズをしてニヤけていた。
こいつ絶対起きてるだろう。
いつまでも気絶した振りを指せる訳もいかないので手を引っ張ってセリスを起こす。
えへへと頭をポリポリしながら赤面するセリスは笑顔だった。
「出発は三日後にゃ。それとヤマト殿・・・セリスに手をだすにゃよ」
「なんで俺が・・・」
言いかけた途端セリスの恥ずかしブリッコパンチが脇腹を襲って気絶してしまった。
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結局俺が目を覚ましたのは次の日の朝だった。疲れと睡眠不足がたまっていたのかぐっすりと寝てしまったようだ。
あたりを見渡すとここは研究所の休憩室のベットのようだ。
ワラサの街以来だろうか、柔らかいベットで寝たのは。
俺が起きた事に気づいたセリスとアップゥが、水とおにぎりを持ってきてくれた。
「おはようございます。ヤマト様。すいません。つい力が入ってしまって」
「セリスとつくったんだよ~たべな~」
遠慮なく頂く。うまい!!普通のおにぎりも作れるんだな。
殴られた脇腹をさする。特に痛くはない。
よかった肋骨が折れたかとおもったよ。
「セリスがね~なでなで~ってして治したんだよ~」
「ヒールです!!他意はありません!」
赤面カウント職人がいたら迷わずカウントするだろう1赤面。
「ヤマト様、ネールがレオヴァイザーを見せてほしいって言ってました」
「んーあんまり見せたくないな。戦争に使ったりするんじゃないか?」
「ネールはそういう人物ではありません。ギバライ国が獣機を独占開発して侵略しようとしていたのが許せなくて亡命して来たくらいなんです」
「そうか。片方の国だけ最新兵器を持っていたら戦争にもならないな。攻撃して壊滅して掃除して終わりだ」
実際ヤマトの言う様に10万のヴァチ国軍は100機の獣機によって壊滅していたのだった。
「それにネールの獣機開発はほとんど趣味ですから、我慢できないのでしょう」
「しょうがない。ちょっとだけ見せてやるか」
お腹も満腹になったので休憩室から出る。
「ん~スッキリした~」
眠気も無くなりスッキリしたのでつい口に出てしまった。
「よかったですね」
セリスもニコニコ笑顔だ。
その会話を聞いた研究所の兵士達がコソコソと話をしていた。
「おい見たか?お二人が休憩室から出てこられたぞ」
「スッキリしたのか・・・」
「昨日の昼からこもりっぱなしだったらしい。間違って休憩室に入った兵士が見たときには男の下腹部をなでなでしていたらしいぞ・・・」
「あのセリス様もついに大人になられた様ですな」
「あのね~二人は仲良しなんだよ~」
なぜかアップゥは兵士達に耳打ちしていた。
どうやら赤面カウント職人の出番の様だ。
研究所の前に停めたレオトラックには人だかりが出来ていた。
こら勝手に見るんじゃない。
「ヤマト殿。セリス。待っていたにゃ」
ネールは白衣を腕捲りして待っていた。楽しみなのか尻尾がふにゃふにゃ揺れている。
「見せてもいいけどちょっとだけな」
「それでいいにゃ。こんなオーバーテクニャロジー真似できないにゃ」
すでに許可する前からレオの周りには職員がメモしながらウロウロしている。
ペタペタとレオに触り、ハンマーで軽くコンコン叩いたりしている。
「何を見せたらいいんだ?」
「人型での戦闘が見たいにゃ」
ネールは羊の獣機を指差して言った。
「セリス。あの最新型のガルシープに乗りレオヴァイザーと練習試合をするにゃ」
ガルシープの大きさは獅子型のレオヴァイザーよりちょっと小さい。
モコモコしているが金属なので硬そうだ。
羊の顔は可愛い。ネールの趣味なのかな?
「し、試合ですか?」
「大丈夫にゃ。ガルシープも人型になるのにゃ」
「人型なんて操作した事ありませんが・・・」
「練習だから平気にゃ」
「そうですね。私も人型を操作してみたいです。いいですか?」
ふむ。練習は構わんが別に倒してしまっても構わんのだろう。
「練習試合をするのはいいがその格好のまま乗るのか?」
セリスはご自慢の青いチェストアーマーにスカートのいわゆるいつもの格好だ。
だが、浪漫が足りない。
俺は構わない。
男だしいつもの格好で全然かまわない。
だが、セリスは女の子だ。
ピチピチのパイロットスーツに身を包んでロボに乗らないなんて事があっていいのか?
答えは否。
「ヤマト殿が言いたい事はわかるにゃ。用意してあるにゃ」
「流石ネール。浪漫がわかるな」
研究所の職員が鉄で出来たフルプレートアーマーを持ってくる。
全身を包み込むタイプだ。もちろん顔も見えない。
装備しようとするセリスを止める。
違うそうじゃない。全然わかってない。
「ネール。そうじゃない。こんな感じだごにょごにょ」
「それはいい考えにゃ。後でやってみるにゃ」
俺はパイロットスーツを提案した。
素材は針金より細く、糸の様にしたミスリルで編んだボディースーツ。
体のラインが上手くでる様にと注文した。
ミスリルを密着する事で操作性が上がるんじゃないかと誤魔化した。
ちゃんと、ドレスアーマーを意識したデザインにしろと念を押した。
未来的デザインになり過ぎるとせっかくのファンタジーが台無しだからな。
あくまでエロ目的ではないと強く言った。
ネールは頑張ってみるにゃと言っていたが、俺の興奮に少し引いていた。
だが、俺は見逃さなかった。
研究所の職員が皆小さなガッツポーズをしていた事を
俺の楽しみがひとつ出来た。
「とりあえず今日はこのままの格好にゃ」
「わかった。そこの広場でいいな」
研究所のグラウンドみたいな場所で練習する事にした。
「セリス。レオヴァイザーは硬いからどんどん動いていいぞ」
「はい。私も初めてなんで優しくして下さい」
ん。なんか変な会話だった気もするが気にせず二人は乗り込む。
アップウはセリスのガルシープへ乗り込んだ。
レオヴァイザーを人型に変形する。
動くたびに上がる歓声。驚きの声。
ガチャンガチャンプッピッガン!
赤いマントをなびかせてカッコいいポーズをする。
始めて見るレオヴァイザーにヴァチ国獣機研究所の職員は沸き立つ。
続けてガルシープが人型へ変形する。
ガチャンガチャンプッピッガン!
四つ足から起き上り羊の顔は胸に、中から人型の顔が出てくる。
髪型はアフロだ。
体も羊のモコモコのせいでアメフト選手みたいな感じになっている。
そして尻尾が片手剣になった。
ガルシープが片手剣を握りブンブンと振る。
感触を確かめている様だ。
ヴァチ国獣機研究所の職員は今や大はしゃぎだ。
賭けをしている奴もいる。酒やつまみまで持ち込んでいた。
広場でレオヴァイザーとガルシープが睨み合う。
ガルシープはホバーで動けない様でゆっくり歩く。
練習している様だ。
二台の通信を繋ぐ。
「セリスいつでもいいぞ」
「はい!では参ります!」