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俺も一緒に怒られてヤバイ

 ヴァチ国獣機研究所。獣機についての軍事研究所である。

獣機についての研究はギバライからの亡命者によって革新的に進んでいた。

セリスは特務獣機隊(ガルビースト)隊長であるが、研究内容についてはほとんど知らない。

新型だと預けられたアレイオンだが人型にもなれず、武装すらついていなかった。

セリスには知られせていないがヴァチ国にも人型に変形する獣機が存在する。

もちろんそれは亡命者が研究に携わったからだ。


 亡命者の名前はネール。猫の獣人であり、ギズモの幼馴染だ。

ギズモによってギバライの侵略計画を知り、止める為に亡命した。

恋人関係という訳ではなく、所謂(いわゆる)腐れ縁と言った方がいい。

ギズモ、バラライ、ネールの三人はギバライ国の獣機研究の要だった。

それも今やギズモは死に、ネールはは亡命し、残ったのはバラライだけになったが。


 レオヴァイザーで街の瓦礫をどかし、怪我人がいれば救護所へ運ぶ。

総石造りの住宅が多いヴァチではそれほど火事の影響が少ない様だ。


 消火が終わり、救護も終わった頃には朝になっていた。

完全に寝不足だ。昨日からほとんど寝ていない。

女神のギフトの状態異常無効化には車酔いとか眠気とかには効果がないらしい。

多分だが睡眠魔法みたいなのは防いでくれると思う。

普通に生活している上での眠気は異常ではないって事だろう。


気づくとレオの周りに人々が集まっていた。

お礼や歓声があがっていた。

白獅子さま~白獅子さま~と言っている様だ。


「ヤマト様。こういった場合は人々の前に出るべきでしょう」

「・・・・」

救助の為とはいっても、これだけ大勢の前にレオを見せてしまったのは失敗だった。

こういう事には慣れていない。

慣れている奴に任せるしかない。

セリス様!オナシャス!


「セリス。レオの手の上に立ってくれるか?」

「え、え?」

「傷ついた人々の前に女神の様に綺麗なセリスが現れたら皆安心する」

「え、綺麗?・・女神?そそそんな」

頬に手を当て赤面するセリス。


正直に言おうチョロイ。


「透き通る様な()()()()()()で人々に伝えてくれ。トカゲのボスは倒したと。心配はもうないと」


ボッと爆発する様な音がした気がする。


「や、やってみます」


チョロイ。


セリスがレオの右手の平の上に乗って人々の前へ現れる。

俺はよく見えるように正面へ動かす。


「ヴァチの皆様。ご安心下さい。私はヴァチ国特務獣機部隊(ガルビースト)の・・・」

セリスが自己紹介を始めた。こいつは想定外のまずい展開だな。

「やまと~何してるの~」

突然アップゥが目の前に飛んできてビックリした。

ビックリしてレオの手が揺れてしまう。

セリスは悲鳴を上げながら手の平の上で四つん這いになっていた。

「あ~セリスが手の上に~いいな~いいな~」

アップゥが俺の手にまとわりつく。

思わずセリスを乗せた手がグラグラグラグラ動いてしまう。


「ウッ隊長セ・・・オエエエエエエエエエエエエ」


キラキラキラキラキラキラ・・・・・

ああ・・・セリス・・・朝日にきらめく川がとても綺麗だよ。


 集まっていた人々が蜘蛛の子を散らすかのように逃げる。

いや、中にはご褒美だと無言で受ける猛者もいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はい。すいまえんでした」

「ごめんなさい~」


ディメンションルームのセリスの前で正座する俺とアップゥ。

セリスは横を向いてプイッとしている。

アップゥの作ったシュークリームサッと差し出さなければ即死だった。


セリスはシュークリームをハムハムした事で機嫌を取り戻した。

トロッとしたメシ顔は人に見せられない。


「もう!今度やったら許しませんからね」

「許された!」

「許された~!」


 許されたので俺達は運転席に戻る。

ヴァチ国獣機研究所は近い。

「では、配達に向かうぞ」


「・・・はい」

少しうつむき加減のセリスはもしかしたら気づいているのかもしれないな。


コアを届けたらお別れって事に。


すこし寂しいがしょうがない。

たった一週間位の間だったが色々あったし。

なんて考えていたら無言になっていて、なんだか暗い車内になってしまった。

セリスは窓を見上げてため息なんてついちゃってるし。

こういう時に出てこないアップゥは空気が読めるのか読めないのか・・・


「あ、あそこです。ヴァチ国獣機研究所です。ってええええええええええええええええええええ」

セリスが驚きの声をあげた。

「なんだ?どうしたんだ?」

見ると獣機研究所と思われる建物の前に獣機が一列に整列していた。

数は200以上。そしてすべてが人型だった。

「ヴァチにも人型が・・・」

なんとなく羊から変形とか豚から変形とかがわかる。

でもあれだな。羊型や豚型に変形する意味なくない?

浪漫ってやつなのかな?


研究所の正面に猫耳のおばさんが立っていた。

猫耳というか猫の獣人だな。

顔は人間だが猫耳としっぽが生えている。

レオトラックに向かって手を振っている。


「こんにちは!配達に来ました!」

久しぶりに言ったなこの台詞。

いや、そうでもないか。

まだ異世界に来て7日か8日かのはずだ。

よくわからなくなってきたが。

何しろ徹夜だったり夜中まで戦っていたりと時間の感覚がおかしい。

今も正直猛烈に眠い。


「ネールさ~ん」

セリスが猫獣人に駆け寄る。猫のおばさんはネールというらしい。

セリスよりちょっと背が高いネールがセリスと話しをしている。

若い時はきっと可愛い猫耳娘だったのだろう。

アップゥがネールの猫耳を触りながらおんなじだね~と喜んでいる。

「ヤマト様コアを見せてあげてください」

「ああ。こっちだ」


 あえて自己紹介はしない。俺はあくまで配達員に徹するのだ。

ネールは俺の事をジロジロ見ながら言った。

「ほう。エルフかにゃ。めずらしいにゃ」

おお、流石猫の獣人。語尾がにゃになってる。

「ええ、エルフらしいです。入って下さい」

トラックの貨物ドアを開けディメンションルームへ案内する。


「これは!」

ネールはものすごい速さで部屋にはいると物色しはじめる。

「これはなんにゃ?これはなんにゃ?」と騒がしい。

やがてお目当てのコアにたどり着くと目を白黒させながら言った。

「これは・・・・アレイオンのコアじゃないにゃ」

「え?そんな馬鹿な。私はちゃんとアレイオンから運んだのを見ましたよ」

「アレイオンのコアはこんな完全な状態じゃなかったにゃ」

「ネール。どういうことなの?」

「古代遺跡から発掘したコアは時間の経過によって劣化するにゃ。このコアは完全に新品にゃ」


 どうやら俺の配達した荷物にクレームがついている様だ。

コアは古代遺跡から発掘してくるらしい。

その中でも状態の良い物をエースの獣機に、量産型の獣機にはコアのクローンを使う。

そして俺の運んできたコアは完全な状態。所謂(いわゆる)古代の時代のコアそのものだそうだ。

ウルフィのコア2個も強化されているが、クローンのコアだったのでそれ程でもないらしい。

「にゃにゃにゃ・・・これ程のコアがあれば例のあれも・・・・」

ネールがブツブツ言い始めた。


研究所の職員達総出でコアを運ぶ。

転がさない様に慎重に・・・

そういえば爆発するかもしれないんだったな。


すまない。

森でゴロゴロ転がしたりサッカー使用としたりして。


運ぶ様子を見ながらなんとなくセリスと顔を合わせる。


・・・・・・・


えっと。


とりあえず配達(しごと)は終わったので帰るか。



帰る先はないが・・・


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