俺も燃え盛るヴァチに飛び込んでヤバイ
ヴァチ国首都ヴァチ。
ジパンゲア大陸一の領土を誇り、大陸のほぼ中央に位置している。
東には海。西には世界樹の森。
北のギバライ国と南のサカオオ国に宣戦布告されていた。
一度世界を統一した事もあり、多くの国でヴァチ国語が使われていた。
ヴァチ国の建国者は魔王である。魔王は世界を征服し、勇者に敗れたのだ。
200年前に異世界の地球の日本から召喚された若者が魔王になり、100年前に召喚された日本人が勇者になった。
これはヴァチ国民なら誰でも知っている事。
絵本にもなっているので子供でも知っている。
ヴァチは燃えていた。
街の至る所で火が燃え広がり、悲鳴が命の焼失を意味していた。
今まさに200年の歴史がある国が滅びようとしていたのだ。
「な、なんだ?何が起きてるんだ?」
ヤマトは驚愕していた。配達先が燃えていたのだ。
「ヤマト〜トカゲさんが火を吐いてるよ〜」
確かに街を見ると、無数の赤くて大きいトカゲが火を吐きながら歩き回っている。
長さは4mはあるんじゃないか?
「あ、あれはフレイムサラマンダー!」
「知っているのか?あれは獣機じゃないよな?」
「あれは南のサカオオ国にしかいないはずです。それがなぜ!?」
「迷ってる時間は無い!行くぞ!」
俺はレオヴァイザーを騎士に変形させると燃え盛る街へと飛び込む。
レオヴァイザーから見れば子犬位の大きさのフレイムサラマンダー。
以外に動きが早い。
ホバーで加速して斬りかかるが、壁に張り付いて逃げてしまう。
「トカゲと言うよりヤモリだな」
「ヤマト〜上から来るよ〜」
アップゥに言われてフレイムサラマンダーの吐いた火の玉を回避する。
「火の玉なんて本当にあるんだな!」
避けた先の別のフレイムサラマンダーに斬りかかる。
ピョン!
フレイムサラマンダーは壁に飛びつくとスルスル上がってしまう。
クッソ!どうすれば?
そうだ!
「セリス!高く跳ねて攻撃するスキルはあるか?」
「跳ねて攻撃ですか?確かモリオア国の竜騎士が高度跳躍というスキルでジャンプしていたはずです」
「高度跳躍だな!メニュー!」
俺はメニューの中から高度跳躍を探す。
あった。スキルポイントは120。現在のスキルポイントは125!
ギリギリだが足りた。
「行くぞ!目をつぶってろよ!」
「え、え、何ですか?え、きゃあああああああ」
セリスが泣き叫んでいる。だから目を閉じろと。
高度跳躍を使い剣を突き出しながらジャンプする。
壁に張り付くヤモリ野郎を切り裂く!
ズバシュ!
フレイムサラマンダーはまっぷたつに斬り裂かれる。
ホバーで落下位置を調整し、通路を歩くフレイムサラマンダーの真上から突き刺し息の音を止める。
ズガアアアン!!
「ヤマト様! い、今のは何ですか?高度跳躍をレオヴァイザーで使用したのですか?」
「ああ、セリスは獣機でスキルが使えないのか?」
「いえ、考えたこともありませんでした」
高度跳躍を再度使おうとすると、リキャストタイムが00:00:42と出た。
1分毎にしか使えない様だ。
フレイムサラマンダーを壁までホバーで追い詰め、わざと壁に飛びつかせてから高度跳躍で斬る。落下の勢いでもう一匹仕留める。
が、至る所にフレイムサラマンダーがはいずり回っている。
「や、ヤマト様!オエッ、か、数が多すぎますオエ」
ヤバイ! セリスのいつものが!
確かに数が多すぎる。これじゃ時間がかかりすぎる。
「何か弱点はないのか?」
「ウッ。フレイムサラマンダーは水か氷に弱いですオエ」
よしセリスよく頑張った寝ていいぞ。
ここはアイツに頼むしかない。
「アップゥ。冷たいのかお水を頼む!」
・・・
「アップウゥ?」
さっきまでそこにいたはずのアップゥが消えた?
「おい!アップゥ!隠れている場合じゃないぞ!」
「ヤマト様アップゥちゃんならリンゴを取りにキャアアアアア」
ズガガガガガン
何かがレオヴァイザーの死角から脇腹を攻撃してくる。
脇腹への攻撃! 新手の獣機か!
ザザザザッ!突如ナビ水晶が喋り始める。
通信の様だ。
「お前が白獅子か!オイラはデルカだ。ククク。」
ナビ水晶には赤いトカゲの獣人が映っていた。
「お前がフレイムサラマンダーを連れてきたのか?今すぐ帰れ!」
「俺を見つけることが出来たらな。その前に死ぬかぁ?。ククク」
通信が切れた。
ズガガガガガ
死角からレオヴァイザーの脇腹にってしつこい。
見えないところからの攻撃は、レオヴァイザーの聖障壁を突き破れない様だ。
ズガガガガガ! ズガガガガガ!
歩く度に攻撃される。
レオがやられる事はないが、早く倒さないとフレイムサラマンダー達が街を焼き尽くしてしまう。
長い何かが角を曲がって攻撃してくる。
レオに当たると同じ角を曲がって帰って行く。
「ヤマト様!」
「ああ、わかってる」
そうこれは舌だ。
姿を隠し、舌で攻撃と言えば。
カメレオンだ!
そうとわかれば簡単だ。
次の攻撃を待つ。
わざと脇腹を開け攻撃してくる向きを集中して探す。
ズガガガガガ!
「いまだ!!」
舌が帰る方向へ剣を投げつける。
ズバッシューン!!!
剣は舌を貫き壁に突き刺さる!
レオヴァイザーが高度跳躍する!空中で不意打ちを使う。
「ヤマト様あそこです!」
ホバーで位置を調整して落下しながら盾を正面に構える。
落下の加速に短距離高速移動をプラスする!
高速の白い塊が何も無い空間へ向けて突進する!
「ウォォォォ!シールドォ!スタンプ!!」
ズガガガガガグチャ!
血を流した赤いトカゲの獣人から通信が入る。
「ば、馬鹿な!何故居場所が・・・」
レオの足元にぶっ潰れた赤いカメレオンの獣機が現れた。
どうやら迷彩の効果がきれた様だ。
破壊された脇腹にはレオヴァイザーの顔がスタンプされていた。
「ん。そりゃナビ水晶のMAPに赤い点が出てるからな」
ズガアアアアアアアアン
カメレオンの獣機は爆破四散した。
マスターが死んだ事を感じとったのか、フレイムサラマンダーは街から消えていった。
フレイムサラマンダーが去った事で街の人々が消化を始め、黒魔法使い達の水魔法で瞬く間に鎮火した。
「きょ、今日は吐きませんでした」
「そうだな。よく頑張った」
ものすごく撫でやすい位置にセリスの頭があったので、つい撫でてしまった。
「・・・ヤマト様」
セリスはこちらを向いて笑顔を見せた。嬉しかったらしい。
その様子を運転席のダッシュボードの上で、胡坐をかいたアップゥがリンゴを齧りながらフムフム見ていた。