俺が巨額借金しそうでヤバイ
俺はレオから降りる事を決意する。
名案を思い付いたのだ。
「アップゥ俺に妖精の隠れんぼを使ってくれ。トイレに行きたいんだ」
「了解だよ~まかせて~」
アップゥが俺の周りをクルクル回りだす。
おぉ・・・俺の体が透明になっていく。すごいなこれは。
ばれないように助手席側のドアを開けてこっそり外に出る。
トイレに行くだけなのにハードミッションだ。
取り囲む兵士達にぶつからない様に慎重に歩く。
誰かに触られると妖精の隠れんぼの効果がきれてしまうからだ。
やっと人気の無いところへ来たのでズボンのチャックをおろす。
ふぅ・・・小でよかったぜ。こんな森の中で大きいほうは・・・みんなどうしてるんだ?
「ねぇねぇヤマト~タイプの人がこっちきたよ~」
アップゥが俺をつつきながら言う。
おい馬鹿やめろ!
つつくんじゃ・・・
振り向くとそこには赤面する女騎士がいた。
「あの・・・すみません・・・」
恥ずかしそうにそう言うと女騎士は後ろを向くと俺が終わるのを待ってくれている。耳まで真っ赤だ。
「すまなかった。それじゃ」
何事も無かったかのようにレオに戻ろうとする。
「待ってください!話を聞いてください」
女騎士が俺の手を握って引き留める。
あの・・・まだ手を洗ってませんよ。
「一緒にヴァチまで来ていただけませんか?お願いです」
初めて現れた時のあの高飛車な態度はどこへいったのか。
まっすぐ見つめて来る青く透き通った瞳に吸い込まれそうになる。
だが・・・
「断る。俺は異国から来たばかりなんだ。面倒ごとに巻き込まないで欲しい」
これはなんだかんだ言いくるめられて一緒に旅に出る事になり、色んな女の子が仲間になって魔王とか倒す一番めんどくさいパターンの展開だろう。
そういうのは御免だ。
しばらくの沈黙の後、女騎士は諦めたように言った。
「わかりました。では金貨1万枚で許しましょう」
突然の金貨請求に驚く。
「は?なんで俺が払う側なんだ。どちらかと言えばお礼を貰う側だろう!」
「アレイオン」
女騎士が白馬の方を指さしながら言った。
ん?あの白馬がどうしたんだ?壊したのは黒い奴だろう。
「壊しましたね?兵士達が見ていましたよ」
「アレを壊したのは黒い奴だろう。お前は気絶して見ていなかったかもしれんが」
「そうではありません。お腹のとこ・・・壊しましたね?」
なんて事だ。
あの兵士達・・・女騎士の恥ずかしい姿を一緒に楽しんだ仲なのに裏切ったのか!
「確かにディオニュソスに吹っ飛ばされて少しドアがへッコミましたね。でも最終的に魔道晶石をアレイオンから取り出して破壊したのは貴方ですよ!ヤマト様!!」
殺人犯を追い詰める探偵の様に俺に指さしする女騎士。
「でも」
「でも!ではありません。アレイオンの開発に金貨100万枚以上かかってるんですよ。それを金貨1万枚で良いと言っているのです」
「それは俺はお前を助ける為に・・・・」
「魔道晶石を引き千切って外にだす必要はないでしょう!技術者じゃないと治せないじゃないですか!」
「あの光ってる石の中にいるのかと・・・ほら・・・開ける時に火傷しながら・・・笑えばいいと思うよって・・・言うやつかなって・・・」
「何をブツブツ言っているのですか!男ならちゃんと責任取りなさい!!」
女騎士に言われてハッとなる。
元彼女の言葉をそのまま言われたからだ。
「男ならちゃんと責任取りなさい!」
思い出したくないことが頭によぎる。後悔で頭がいっぱいになる。
・・・・
「わかった。ただし金は無い。一緒に行くという事でいいか?」
俺が思ったより暗い顔で答えたので、女騎士は気づかない間に地雷を踏んだ事を悟った様だ。
「いいでしょう。ただし魔道晶石もヴァチまで運んで下さい。アレはあそこに置きっぱなしに出来ないので」
「わかった。佐川大和だ。よろしく頼む」
「こちらこそ助けて頂いたのに無理を言ってしまった様ですみません。私はヴァチ国特務獣機部隊隊長のセ・・・」
ガウッ!
突如として野生の狼が女騎士を襲う。
「ちょ!なんでいつもこのタイミングで!」
ギリギリのタイミングで狼を回転しつつ回避しながら狼の首を刎ねた。
ガルルルルルル
続々と集まって来る狼達、いったい兵士は何をしているんだ危ないじゃないか!
主に俺が。
武器を持ってない俺に女騎士が鞘付きの片手剣を投げて渡す。
「ヤマト様!貴方の腕前見せていただきますよ」
はいはい。今お前が投げた片手剣が脇腹に当たってうずくまっているのが俺の実力ですよ。
ガルルルルルッ
「ヤマト様危ない!」
女騎士が俺に飛びかかって来た狼を両断する。
ピンピロリン。音はしないが俺の女騎士に対する好感度が1上がった気がする。
俺はなんとか立ち上がり鞘から剣を抜いて構えた。
「狼め。俺の剣を受けろ!」
・・・・・
狼の群れはすでに女騎士が切り伏せた後であった。
「流石です。危なかったですね。ヤマト様」
女騎士が周りを見渡し咳払いをひとつ。
「コホン、私はヴァチ国特務獣機部隊隊長セ・・・」
女騎士が再度周りを見渡す。
「セリスです。よろしくお願いします」
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