一章閑話 冒険者ギルドの受付嬢
城郭に守られた街ワラサ。その厚い城郭は120年前に起きたヴァチ国からの侵略時に作られたという。
城郭に守られている上に近くに大きなダンジョンもない為、冒険者ギルドは閑古鳥が鳴いていた。
そもそも冒険者ギルド自体が、50年前の第一次冒険ブームも終わった事で新規冒険者もほとんどいない為、閉鎖の噂も出ていた。
外の看板には新規冒険者来たれ!と叶わぬ願いが書いてあった。
ここワラサ街冒険者ギルドに残っているのは本業以外に趣味で冒険業を行っている人達ばかりだった。
今日も4人の熟練冒険者が冒険にも出ないで談笑していた。
壁の依頼書ボードは依頼で溢れていた。
モンスター討伐などのちゃんとした依頼もあるが猫を探してとか庭の草刈りなどFランクが大多数だ。
モンスター討伐も人を襲うからといった理由の物はなく、全て素材目当てだ。
報酬が安い為無視されていた。
ふぁ~あ。リンダは談笑している冒険者達に見えない様に欠伸をする。
立ってるだけでお金が稼げるいい仕事ね。暇だけど。
本部からギバライ国から侵略の兆候が見られると報告が入っていたが気にしない。
戦争になったら辞めて田舎に帰る事も決めていたし。
どうせ今日も一日暇だろうな。あいつら帰んないかなぁ。帰んないだろうなぁ。
毎日昔話をしに来ている4人組。確かにCランクなので腕は確か・・・かも?
「その時ドラゴンがよぉ・・・」「クラーケンもやばかったなぁ」などと話しているが絶対嘘だと思う。
それにその話何回目なの?耳栓が欲しいくらいよ。
そんな時珍しくギルドの扉が開いた。
中に入って来たのは銀髪で長身の男。普段着でギルドに来たって事はお客様かな?
あ、可愛い!頭のあたりをぴょるぴょる変なのが飛んでる!
あれはスマホ族ね。妖精みたいで可愛い!
同族との距離がどんなに遠くても念話が出来る能力から、どこの国の幹部でも欲しがっているらしいわ。
嫌いな相手からはすぐに逃げてしまうし、檻にいれると機嫌を悪くして念話出来ないから大切に扱われているみたい。たしか金貨1000枚でも買えなかった様なきがする。
もしかしたら大金持ちなのかしら?
「j@おぇんうおcmw@klcsdfんmぴあf@か@pkcっせおあ」
「こんにちわ~ 異国から来る途中で魔王とたたかったら怪我したヤマトです~ ギルド登録して~」
男が聞いた事のない言葉で喋った後、続けてスマホ族がしゃべる。
ヴァチ国語を話せない長身の男の通訳をスマホ族がするってことみたいね。
ちょっと待って・・・魔王?今魔王と戦ったって言った?
確かにギルド本部からの通達文書には魔王復活兆しありって書いてあったけど。
アレって毎年送られてくるのよね・・・うーんワラサ付近で魔王とか辞めてほしいなぁ
仕事が忙しくなっちゃう。前の冒険者ブームも魔王が出たって噂からだったのよね。
次の仕事探さないと・・・
今後の事を考え思わず冷や汗が流れる。
「はじめましてヤマトさん。魔王と戦ったのは本当ですか?やはり復活していたのですね。」
「魔王はつよかったよ~」
ヤマトさんを見てみるが強い魔王と戦って生き残れる様にはとても見えない。
防具も何もつけていないし、何より武器すら持ってないじゃない。
疑いの眼差しでヤマトさんの顔をよく見てみると耳がとても長かった。
聞いた事がある。遥か南の森に住む長身で長い耳のエルフという種族の噂。
魔力が強く。すんごい魔法を使うとか。
あ、でもその森は今、死の森って言われてたはず。エルフも全滅したって。
「わかりました。魔王の事は本部へ報告しておきます。まずは怪我を治しますね。ギリアムさーん」
「ぎりあむ~ こっちこっち~」
簡単なヒール位私でも出来ますけどあんまり関わりたくないので、興味ありそうにこっちを見ている暇そうな冒険者に擦り付ける。
「swrvdcんsん;th;;dっかかsぽjhllhddhdthjdjjjjd」lv、;h」
「ヤマトです~怪我治して~」
スマホ族に話しかけらたハゲのギリアムさん。
巨大なハンマーを装備しているが、白魔法使い。
見た目はハゲのおじさんだが・・・・白魔法使い。
ギリアムはヤマトさんをじっくり観察して口を開いた。
「このひょろ長い兄ちゃんが魔王と戦ったって言ったのか?俺は信じられないな。」
「あらギリアムさん。この方の見た目はどうみても絶滅した伝説のエルフ。軽装から言っても魔導士なのかもしれませんよ」
「伝説のエルフだと!」
「ヤマトはエルフだよ~」
本当にエルフだったんだ・・・ん~確かに顔は強そう?凛々しいかな。
私に占いの才能はないけど災いに巻き込まれそうな人相だと感じた。
スマホ族が付いてるって事は悪い人ではないはず。多分・・・・
「それにヤマトさんはスマホ族を従えています。この国の言葉はしゃべれない様ですが何か事情があるのでしょう。」
「あ~俺もスマホ族は久しぶりにみたぞ。離れた同族との念話が得意なんだよな。お国のお偉いさん方が大切にしているらしい」
「アップゥはスマホだよ~」
ギリアムが治療を開始したのでギルド水晶からヴァチ国のギルド本部へ魔王が復活したと報告する。
横目で唾の付いた手で叩かれるヤマトさんを見てドン引きした。
不機嫌そうな顔でスマホ族に話しかける。
「ヤマトが冒険者ギルドに入るのやめるって~」
あ、冒険者ギルドに入りたいとも言っていたんだっけ。魔王の事で頭がいっぱいで忘れてた。
ここは一応営業しておかないとね。
「えっ!どうしてですか?魔王と戦って生き残れる様な人は勇者以外いません。お願いですから冒険者ギルドに入ってください。隣国のギバライ王国から侵略されるとの噂もあるんです。」
ヤマトさんがなんとなくいやらしい目つきで私を見ている気がする。
こういう職業してるとよくあるのよね。
スマホ族がヤマトさんの耳元で何か伝えると、今度は完全にいやらしい目で見てきた。
男の人にはわからないかもしれないけど、女にはわかるんですからねそういうの。
「あsfhjぴおjjmぴお2jfぽしゅふじこsこじゃsjp」
「なんでもするから俺をギルドに入れてくれって~」
ヤマトさん絶対不謹慎な理由で入りたがってるよね。
強そうだし、新規を一人獲得するとお給料にマージンが追加されるからまいっか。
「ヤマトさん本当ですか?私はギルドの受付嬢リンダといいます。これからよろしくお願いします。」
自己紹介をしただけで鼻息を荒くするヤマトさん。
正直早く仕事終わらせたいです。
「では、このギルド水晶に手を当てて下さい。登録とステータスを確認いたします。ステータスによっては即Sランクですよ!頑張ってください。」
スマホ族が通訳しヤマトさんが手を近づける。いつの間にか冒険者達が集まって来た。
すんごく臭いからやめて欲しい。
表示されたステータスを見て愕然とする。
弱い。
スキルも魔法もないしJOBも聞いた事ない。
エルフだから魔法に強いと思っていたらINT3て・・・
お子様だって10位ありますよ。
これはもうGランクね。
GIRIGIRI冒険者のG
Fには遠く及ばない本当は失格だけどサービスってレベル。
当然カードは用意してないのでその辺にあった雑貨屋のチラシの裏で用意する。
冒険者ギルドカードはランクによって素材が変わる。
Aランクは金、Bランクは銀、Cランクは銅、Dランクは鉄、EとFは紙。
Sランクともなれば白金で出来ている。
それぞれ素材は違うが魔力が込められているので身分証などとしても使われる。
ヤマトさんのGランクはチラシの裏で適当に作った。
一応魔力は込めたけど成功してるかは知らないし苦情は受けないつもり。
カードを渡して帰ってもらう。塩でも撒こうかしら。
3時間後、気分が落ち着いた頃にヤマトの冒険者ギルド登録を本部へ報告した。
報告した10分後位に本部から連絡があった。
きついお説教の後、JOB聖操者についてと容姿について詳しく聞かれ、ヤマトを見つけ次第拘束しろと命令された。
私は何も悪くないのに・・・・