私とご主人様との一生
ご主人様は、素晴らしい方だ。
こんな私にもたくさんの愛情を与えてくれた。
私は幼い頃に捨てられた。育てるのが面倒だったのだろうか、お金がなかったのかもしれない。その理由をいくら想像しても推測の域を出ない。とにかくご主人に助けられて今ここにいる。
この御恩に報いるためにしっかりと成長して、お役に立てるように努力する所存だ。
私のためだけに、ご主人様はポンと大きなお家を購入してくれた。多くのお金がかかっただろうがそんなそぶりは一切見せずに私をかわいがってくださった。
ご主人様に家族はいない、私を引き取ってくださったのはその理由からだろう。
たくさんの時間を一緒に過ごした。
いろいろな場所に一緒に出掛けた。過ごした時間が距離を近くして、ふざけあったり笑いあったり、心を通わせるようになるのに時間はかからなかった。
私はご主人様の大きな手で、頭を撫でられるのが大好きだ。そのとき顔を近づけてニッコリ笑うその表情がもっと大好きだ。
死がふたりを分かつまで、あっという間だった。
楽しすぎてうれしすぎて幸せすぎて、夢のようなときだった。
神様、ありがとうございます。私を彼に会わせてくれて
この思い出があれば、もう何も怖くありません。
after story...
私はたった一人の家族を亡くした。
今日でちょうど一周忌になる。彼女と駆け抜けるように過ごした時間はまるで昨日のことのように思い出せる。
一緒に居た時間はたった十年、しかしきっと私はこの十年を生涯忘れることはないだろう。