3.シエ
旧市街地を駆ける二つの影があった。
その二人は韓国陸軍の軍服で、アサルトライフルを持っていた。
「少尉、間違いありません! あれは、朝鮮と中国が繋がっている証拠です!」
「俺だって分かってるさ! だが! この状況を如何に脱する!? あの四足の火力なら、どこに隠れても一緒さ!」
少尉と呼ばれた男と、その部下らしい男は、同時に物陰に入った。
打ち尽くしていた、アサルトライフルの弾倉を変える。
”あと二つか……。”
少尉は絶望した。中国の新型戦車と戦うには、武器が余りに無かったからだ。
耳を澄ませば、グという音が断続的に響いてくる。
「も、もう耐えられません! 突貫します!」
部下の男が大きめの道路に出て、ライフルを乱射した。
銃撃音は、早くに止んだ。
代わりにグという音が、先程より明確に聞こえた。
「……!」
現れた。建物に沿って。
人の3倍程の大きさの、四足歩行兵器だ。
歩行と言っても、足にはタイヤが付いており、移動方法はそれだ。
二段になっている本体の、上側にある横長のカメラが、少尉を捉えた。
「う、うわあぁあ……!」
少尉の脳は、真っ白になって何も考えられなかった。
機体のハッチが開いた。
パイロットは、やはり中国の軍服を着ている。
右腕をこちらに向け、その手にはハンドガンが握られていた。
出てきたパイロットが、高校生くらいの年齢に見え、さらに困惑した。
引き絞られたトリガーは、銃弾を発射。
少尉の心臓へと、直撃した。