2.大人達
「本気ですか!? あの変な科学者の戯れ言を信じて、思春期の少年少女達を戦場に向かわせると!?」
上司である岩本作蔵の机を叩いて言うほど、菅原歩を激怒していた。
作蔵は背を向けていて、歩を見ていない。だが、歩には分かっていた。作蔵も、好きで子供達を戦場に向かわしたいのではないと。
それでも、言わずにはいられなかった。
チルドレンディスポーサブル。
略してCRDLと呼ばれるそれは、開発者のクリフトン・エイドリアンによると、思春期の子供が乗ることによって本来の性能が発揮されるらしい。
もちろん、最初は軍人に乗ってもらった。だが。
「……大人ではあれを動かせん! だが、この国が生き残るためには子供達を犠牲にするしかない! これは日本の未来のためなんだ!」
歩行にすら手間取った。一歩歩くのに、一分もかかってしまったのだ。
その後、歩の子供を連れてきて、試しに乗せてみた。
エイドリアンの言う通りだった。
歩くどころか、直ぐに走り出したのだ。それも速く、見た目の重量を感じさせない様に。
装甲こそ着けてはいなかったが、戦車よりも圧倒的に速く、軽やかだった。跳躍までした。
それでも、歩は嫌だった。
息子がこう言ったのだ。まるで、僕の手足だった。いや、それ以上だったよ。あれに乗れるなら、戦場に行ってもいい。と。
「あなた達は! 日本の未来のために、日本の未来を潰すつもりですか! 彼ら若い世代を失っていいはずがない!」
「もう遅い……」
突然、作蔵が苦しそうな表情をした。
「既に始まっているのだよ。第三次世界大戦は! だから我々は、日本のあちこちにミサイルを放った! 北朝鮮が撃ったように見せかけてな! これで生き残った子供は、こちらが戦う力を提供すれば、復讐するためにCRDLに乗るさ!」
最後の方は、叫びだった。