表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場の恋  作者: 冬西南木
1/3

1. 日常の終わり

桜が散り始める季節。酒井潤平は、放課後の教室で話していた。部活には入っていないクラスメートとだ。

「そういえば。今朝ニュースを見たときに、北朝鮮と韓国の戦争が再開するかもって言ってたけど、本当だと思う?」

皆--と言っても四人だが--に質問したのは、自他認める軍事オタクの早川秋人だ。

潤平もそのニュースは見たが、こんな田舎には関係ないなと忘れていた。東京にミサイルが落とされたとしても、ここに住んでいる人はかわいそうと思って、復興に協力するくらいだろう。

「どっちでもいいわ。例え本当でも、子供のあたしたちは逃げるだけでしょ?」

学校どころか町中探してもいないであろう美しい少女の、川崎藤香が言ったことに、潤平も賛成だった。

「うん。わたしもそう思うよー」

「高山さんも? 俺も川崎さんと同じような感じだ」

秋人は不満げな顔になったが、その時先生が通りかかり早く帰れと言われ、適当に返事をして、潤平達は帰ることにした。

他愛もない話をしながら家に着くと、姉が迎えてくれた。

「お帰りー。もう、もっと早く帰ってきてよー。お姉ちゃんさびしい」

「姉さん今風邪なんだから寝てろって。……母さんと父さんは?」

姉は、少し思い出す素振りをしてから言った。

「二人とも突然仕事が入って、たしか東京……だったかな」

「じゃあ、晩ご飯を買って来ないといけないな……。何がいい?」

言いながら立ち上がって、財布を入れたバッグを持った。

「魚以外ならいいよー」

姉の返答を聞き、潤平は近くのスーパーに行った。


呆然とした。

突然避難警報が鳴り響き、頑丈な体育館に行ったと思えば、光に包まれた。

目が元に戻った頃には、校舎は崩れ、町が燃えていた。

体育館の中も酷い有り様だった。

「お、おい! 高山さん!?」

「うそ。佳乃……? へ、返事をしてよ!」

潤平達と仲が良かった高山佳乃の体が、上から降ってきた天井の一部に踏み潰されていた。

血が、床に広がっていく。いや、血だけでは無かった。

誰のかも分からない足。肉片。内臓らしきもの。

潤平と秋人、川崎が無事だったのは奇跡に近かった。

聞こえるのは悲鳴。それ以外は耳に残らなかった。

とにかく家に戻ろう。姉さんが心配だ。

潤平は走った。走らなければ、吐き出してしまいそうだったから。

焼け爛れたスーパーの店員。血だらけになった商品。上半身だけの人。木が体に刺さっている人。燃えている犬。泣き叫ぶ声。

「--ッ!」

何かに躓いた。

転けはしなかったが、自分が何に躓いたのか見てしまった。

それは近所に住む、よく遊んでくれた叔父さんだった。

「あぁ……。何で……! 何でこんな事になるんだよ!? 俺達が、叔父さん達が、何をしたって言うんだよーー!」

その声を聞き付けたのか、姉が近づいて来た。

「潤平!? 無事なの!?」

「姉さ--」

無かった。姉の右腕が無かったのだ。

「よか、った。潤平が無事で……」

潤平に向かって、姉は倒れた。

すぐ受け止めるが姉の顔に生気はなく、ただ、血が流れるだけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ