ファイル5 『付喪神』の怪 【⑥】
久しぶりの投稿になりました。
今回はなかなかショッキングな内容となっておりますのでご注意ください。
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「俺がおかしい!? 俺は被害者だぞッ! いきなり叩くなんて、あんたの頭もおかしいんじゃないのか!」
桜香に叩かれ、黒峰は一瞬唖然とした。しかしすぐに眉を吊り上げ、彼は桜香の胸ぐらを掴みにいく。
襟もとへ伸びてくる黒峰の手。桜香はそれを左手で弾くと同時に手首を取り、身体を半回転させながら彼の懐に潜り込む。そして、前のめりになった黒峰の腕を引きながら、わきの下を通した右腕で彼の腕を抱え込んだ。
足が浮きそうな黒峰の体。桜香が腰を跳ね上げると足は地面から離れ、彼は円を描くような軌道で背中を地面に叩きつけられた。
「がはッ!」
その重い衝撃――咲絵に斬られた背中の傷への追い討ちに、黒峰の顔が激しく歪む。
「ほぅ。見事な一本背負いだ」
後方でそれを見ていた岩多は感嘆の声を出すと、くわえていたタバコに火をつけた。
「いや、左手の引きが甘い。まだまだですな……」
その隣にはタマモが難しい顔で仁王立ちしている。腕を組む彼女の頭にはハチマキが巻かれており、それには〝師匠〟の文字が書かれていた。
「いつのまに……そのハチマキはなんだ?」
岩多がタマモを見下ろしながらタバコを吸う。
「ピリピリムードが和むかと思いまして」
「和むわけねえだろ」
冗談のようなタマモの答えに、岩多は呆れた表情で煙を吐いた。
場の雰囲気にそぐわないふたりの会話に黒峰が苛立つ。
「なにをのんきな……。たすけてくださいよ、岩多さん!」
痛みで動けない黒峰は岩多へ救いを求めた。
岩多は目を細め、黒峰を睨みながら舌を打つ。
「携帯電話の電源を切って勝手な行動をしたことについては、あとできっちりと説明してもらう。今は、波原咲絵に殺されていないことに感謝してろ――」
ズボンのポケットから取り出した携帯灰皿にタバコを押し込むと、
「まあ、あの兄さんが負けちまったら……。俺たちも生きては帰れないんだろうがな」
岩多は二本目のタバコに火をつけた。
暗い公園内ではジンと咲絵の――いや、ジンと妖刀の戦いが始まっている。
「大丈夫。ジンは負けたりしないよ。ただ――」
岩多を見上げるタマモも、公園での戦いに目を向ける。
「あの波原咲絵って人は、死んじゃうんだろうな~……」
カン高い金属音が鳴り響くなか、タマモは重い息を吐いた。
◇
咲絵が妖刀を振り下ろす。それは正面と左右、三つの軌跡を描いてジンへと迫った。
同時に打ち込まれたようにしか見えない斬撃だが、ジンはスーツを破り刀身となった右腕でその全てを払い除ける。
<ケケケ。どんな妖怪かは知らんが、なかなかやるじゃねえか>
妖刀が不気味な声でジンをからかう。
「そっちもな。人間を使っているにしては見事な打ち込みだ」
ジンは姿勢を低くして一歩踏み込み、右腕の刃を振り上げた。しかし、それは妖刀に受けられてしまう。
<おいおい、あぶねえな。この女の腕を切り落とすつもりか?>
「お前に操られているのだから当然だろう? 人間の身体から離れてしまえば、お前は自力で動くことも出来ない低俗な妖怪だ」
下から突き上げるように刃を押すジン。だが、妖刀も負けじと咲絵の体を使って押し返してきた。
<ほう。まるで俺のことを知っているかのような口ぶりだな>
「いま思い出したんだ。その昔、月丘の一族は禁術を用いて『邪血刀』という一振りの刀を生み出したことをな。ま、俺は噂でしか知らないが」
鍔迫り合いをする両者は一歩も引かない。
<噂で知っている? ケケ。さてはお前、まだなりたての妖怪だな。それじゃ、まずはご挨拶だ――>
赤黒く発光した邪血刀の妖気が湯気のように揺らぐと、それはいくつもの刃と化して放たれた。
眼前で放たれたのだが、ジンはバックステップしながら身体を左右に振ってそれを全て躱す。
<よく避けたな。まともに当たっていれば、お前の顔はなくなっていたのによ>
「そいつは危ない、せっかくの男前が台無しになるところだった。ま、不意を衝いた攻撃がこの程度じゃ、噂ほどではなかったようだな」
微笑をうかべるジンの返答に、邪血刀の赤黒い妖気がうねりを上げる。
<ほざくな若造ッ! 700年前に生まれたこの『鐔鬼』。人間はおろか、妖怪からも恐れられた力を見せてくれるッ!>
茶化したつもりが逆に茶化され、邪血刀に憑いている妖怪『鐔鬼』が怒号を上げた。
鐔鬼が妖力を高めると、邪血刀の刀身が赤黒い妖気に覆われていく。
「鐔鬼。その名の通り、刀の鐔に憑りついている妖怪か。……もうしばらくもってくれよ――」
ジンが右腕の刃を構えた。しかし、その視線は鐔鬼ではなく、禍々しい妖気を受けて苦しむ咲絵に向けられていた――。
◇
岩多に支えられてなんとか立っている黒峰。妖怪同士の、現実離れした戦いに息を飲む。
「岩多さん、今のうちです! はやくここから逃げましょう!」
痛みのせいで満足に動けない彼は岩多の腕を引くが、
「ふざけるな。お前にはあの戦いを見届ける義務がある」
そう言われて力任せに引き戻された。
「なんで俺が!? 咲絵はバケモノになったんですよ!? バケモノの始末はバケモノにやらせておけばいいんですよ!」
ジンや咲絵を指差す黒峰。岩多がその胸ぐらを締め上げる。
「お前ってヤツはッ! 波原咲絵さんがああなったのはお前のせいだろうがッ!」
どんな凶悪犯にも見せたことのない怒りの表情に、
「お、お、俺は何もしてないですよ!」
黒峰は悲鳴に似た声を上げた。
桜香が黒峰に詰め寄る。
「あなたが何もしないから、波原咲絵さんは追い込まれてしまったんでしょ!」
桜香の目は怒りや悲しみが複雑に混ざっており、泣き出してしまうのではないかというほどに充血していた。
はじめて会った時、黒峰に好印象を持ってしまったことが悔しい。なによりも、咲絵の身に起きた悲劇を知ってしまった今、女性として彼の身勝手さが許せない。
「黒峰さん。咲絵さんはね……あなたとの子を身籠っていたんですよ――」
震える桜香の声。
呆然とする黒峰に、桜香はこの数時間で調べてきたことを話し始めた――。
◇
鐔鬼に精神を吸い上げられている咲絵は苦しんでいた。
邪血刀を通じて身体の自由はほとんど奪われている。彼女に残されているのは、僅かに残る自我だけであった。
“……あなたとの子を身籠っていたんですよ――”
桜香のその言葉は咲絵の耳にも届いていた。
そう、あの男が……私の赤ちゃんを殺したんだッ!
薄れかけた意識が、怒りによって戻ってくる。
不思議なことに、怒れば怒るほど身体が楽になった。鐔鬼によって無理やり吸われているエネルギーを、こちらから供給することで安定したかのようだ。
――黒峰への復讐を果たすまでは自我を奪わない。
鐔鬼はそう言っていたが、そんな口約束を守るつもりはないのかもしれない。
身体の自由がない咲絵は意識でお腹に手をあてる。そして、絶望に満ちた日々を思い返した――。
◇
咲絵と黒峰は将来を誓い合った恋人同士だった――しかしある日突然、咲絵は一方的に黒峰から別れを告げられてしまう。
電話をかけても出てくれず、メールを送っても返信はない。自分のなにがいけなかったのかと、咲絵は思い悩んだ。抑えきれない吐き気、ストレスからきているのであろう腹痛は痛みを増す。そして、黒峰との幸せだった頃を思い出しては涙を流す……そんな日々を送っていた。
苦しみと悲しみ、なによりも“なぜ?”という思いを問いただしたい。だが、咲絵は黒峰の自宅や職場へ行くことはできなかった。それは――黒峰が警察官だったから……。
黒峰と会って話をすれば、間違いなく感極まってしまう。ご近所や同僚たちの目も気にせず、大声で罵りながら泣き叫んでしまうかもしれない。そんなことになれば、警察官としての黒峰の評判は地に落ちてしまう。それは咲絵の望むことではなかったし、それを考えてしまうと会いに行く足が止まってしまってしまっていた。
関係のない人たちには愚か者に見えるのかもしれない。けれども、どんなに冷たく無視されていようが、咲絵は黒峰を心から愛していた。
そんな咲絵の体調が急変する。腹痛で調子が悪かったのだが、それが息をするのも苦しいほどの激痛になった。救急搬送された彼女は、医者からとんでもないことを告げられてしまう。
「残念ですが……流産です」
咲絵の頭は真っ白になった。この身には黒峰との愛の形があり、ゆっくりと育っていたのだという。
ストレスからくる腹痛には違いない。しかしそれは咲絵の痛みではなく、宿っていた我が子が苦しんでいる叫び声だったのだ。
赤ちゃんが……いたの?
咲絵はそっとおなかに触れる。
痛みはなくずいぶんと楽になった。しかし、少し軽くなったおなかの喪失感が彼女を錯乱させた。
うそよ。だって……そんな……イヤ、イヤ……
「いやあああああああああッ!」
狂ったように泣き叫ぶ咲絵に、誰もかける言葉がみつからない。
ただひとり。同席していた母だけが、咲絵を包むように抱きしめていた――。
・
しばらく寝込んでいた咲絵だったが、体力が戻ってくると再び働き始めた。
身体は動いても心は空っぽ。愛する者たちを失った咲絵に生きる気力はない。それでもなんとか日常生活を送っているのは、自分を支えてくれる母のためだった。
母ひとり子ひとり。ボロアパートの安い家賃だが金銭の余裕はなく、女ふたりで生きていくには働かなければならない。
それは運転免許の更新に行った時だった。
咲絵はある警察官に呼び止められた。名前は覚えていないが、黒峰から自分の同期なのだと紹介されたことのある男性だった。
黒峰とうまくいかなくて残念だ――という言葉を愛想笑いで聞き流す咲絵。すぐに終わらせる何気ない立ち話のつもりだったのだが、そこで黒峰が結婚するのだと聞かされた。相手の女性は、隣県の県警本部長の娘。ノンキャリアの黒峰だが、それを機にある程度の出世コースに乗れるだろうと、その男性は冗談で笑っていた。
しかし咲絵は笑えない。相手女性を紹介された時期と、自分が黒峰に別れを告げられた時期が同じだったのだ。
この時、空っぽだった咲絵の心に小さな鬼が宿った。
その女のせいで、私がフラれた――
咲絵の怒りは相手女性へと向けられる。自分を苦しめ、子供まで奪われた。それらはすべて、その女が黒峰をたぶらかしたせいだと思い込んだ。
それは、まだどこかに黒峰を慕う気持ちが残っている咲絵の〝愛する人に矛先は向けられない〟という女心だったのかもしれない――。
どこかおかしくなっている咲絵は、相手女性を徹底的に調べた。ストーカーまがいの行為で行動をチェックした。欠点を見つけて黒峰を取り戻すつもり――だったのだが、その女性はすばらしい女性だった。
品が良くて育ちも良い。引っ込み思案な自分とは違って愛嬌がある。休日にはボランティアに精を出し、バスや電車では自分から声をかけてお年寄りや子供に席を譲る優しさ。多くの友人たちに愛されている彼女を目の当たりにし、咲絵は敗北感を味わうことになった。
この女性と一緒になるのなら、きっと黒峰も幸せになれるにちがいない。
そう思った咲絵は自分の気持ちに決着をつけるため、ひとこと黒峰に「結婚おめでとう」と言いに警察署へ向かった。
物陰に隠れるようにして待っていた咲絵。同僚と出てきた黒峰に声をかけようとしたのだが、その会話が耳に入ってしまう。
彼らは黒峰の結婚について話をしているのだろう。そこに自分の名前も出てきたのだ。
「――咲絵とはきれいさっぱり別れたよ。あのまま付き合ってても、なんの得もないからな……」
なにを……言っているの?
笑いながら話す黒峰の言葉に、咲絵は耳を疑った。
――得。
自分の利益のためだけに私は捨てられたのだと、咲絵は確信した。そんなモノのために私は傷つき、悲しみ、苦しみ、そして宿っていた命まで失ったのだと――。
自宅に戻った咲絵は包丁を手にする。女性を道具としか見ていない黒峰遊太を傷つけ、〝痛み〟とはどのようなものなのかを教えてやろうと思った。
しかしそれを止めようとした母と組み合いになり、勢いあまって母を刺してしまう。苦痛に顔を歪ませた母を振り切って、咲絵は自宅を飛び出した。
包丁を置いてきてしまった咲絵が向かったのは、しばらく会っていない父、月丘光影の工房。刀匠を生業としているだけあって、そこには多くの刃物があった。
咲絵が手にしたのは一振りの古い刀。月丘の一族が生みだした最高傑作と伝えられている邪血刀だった。
なぜそれを選んだのかはわからない。何かに導かれるように、咲絵は邪血刀を手に取っていたのだ。
鞘から抜くと、その美しさに目を奪われる。と同時に、持ち手にあたる〝柄〟の方から手に吸いついてくるような――そんな握りやすさを感じる。
「誰だ! そこでなにをしている!」
突然の声に、咲絵は手を離してしまう。
しかし、床に落ちたのは鞘だけ。刀の方はしっかりと握られていた。まるで、右手だけが自分の意思に反しているような……。
「咲絵か? こんなところで何を……。それよりも、その刀を放しなさい。
それは呪われた妖刀で、抜いて手にした者は――」
現れたのは父。その光影が何かを言っているが、咲絵の頭には別の声が聞こえている。
<こんなに深くて濃い憎しみを喰ったのは久しぶりだなぁ~。
いいだろう。お前の復讐、俺が果たさせてやるぜ。ケケケ……>
声が不気味に笑うと、突如咲絵の体が硬直した。右手を伝って、体の中に何かが入ってくる――そんな感覚に悪寒が走る。
「咲絵っ! 今すぐ刀を放すんだッ!」
近場にあった刀を手に取り、光影は邪血刀を叩き落しにいくがあっさりと弾かれてしまう。
光影は剣道の有段者である。刀を扱っていることもあり、その太刀筋は達人の域に達している。にもかかわらず、咲絵は難なくそれをさばいた。
「すでに憑りつかれたか! 咲絵、痛い思いをさせてしまうが、
これもお前を救うためだッ!」
光影が咲絵の手首を狙って刀を振る。しかし、咲絵の動きの方が速かった。
斜めに邪血刀を振り下ろすと、その刃は光影が振る刀とその体を切り裂いた。
<ケケケ。遅い、動きが遅すぎるぜ――>
邪血刀が笑う。どこでしゃべっているのかは不明だが、今度は耳にその不気味な声が聞こえる。
<女ぁ~。お前の望み通り、黒峰って男はお前に殺させてやる。俺の名は『鐔鬼』だ。元は刀の鐔に封じられた名もなき妖怪よ。これからしばらくは一緒に行動してもらうぜ。よろしくなぁ~>
妖怪は黒峰を知っていた。咲絵の身体にも憑りついた時、その記憶を読んだのかもしれない。しかし、それは咲絵にとってはどうでもよかった。
黒峰遊太という不届き者を確実に成敗できるなら、自分はどうなってもよい。
咲絵は光影を一瞥する。
まるで紙を切ったかのような手応えのなさ。だから、体が分断された父の姿を見ても人形のようにしか感じない。
この男は家庭を守れなかった。そのせいで母や私がどんなに苦労したか……。
当然の報いね――。
落とした鞘を拾い、咲絵は工房を出て行く。
右手は邪血刀――鐔鬼を握ったまま離れない。今歩いているのが自分の意思なのか、それとも鐔鬼の意思なのか……咲絵にもわからなかった――。
その後、鐔鬼は路上で人を襲った。
苛立っていたその男の負気を、直接吸い上げたかったのだという。
そして昨夜、別の男が犠牲になった。
こちらは咲絵も同情はしなかった。泊るところを提供するかわりに、咲絵の身体を要求したのだから。
鐔鬼はへの不満といえば、殺した者の体をさらに刻んで楽しむという悪趣味くらいだろうか――。
◇
鐔鬼はジンの刃と激しくぶつかり、幾度となく斬りあう。
「私には時間がないのッ、自我を失う前に自分の手であの男を……お願いだから邪魔しないで!」
怒号にも似た咲絵の悲痛な声。その身を鐔鬼にゆだね、操り人形となっている彼女が叫ぶたび、鐔鬼の妖力が目に見えて増していく。
<聞いたか? 今の言葉は俺が言わせたんじゃねえぞ。この女はなぁ、自分を捨てた男が憎くて憎くてたまらねえのよ。殺したいほどになッ>
斬りあった時は互角に見えた戦いも、いつの間にかジンが押され始めるという戦いになっていた。
「タマモちゃんっ、川霧さんは負けないんじゃなかったの!?」
桜香はたまらずタマモの肩を揺らす。
「おっかしいな~。こんなはずじゃなかったんだけど――」
タマモは口を尖らせると、
「アイツの力が想像以上だったってトコかな。いままで何人の怨念を摂り込んできたんだか……。それとも……」
そう言って首をすくめながらため息をついた。
鐔鬼がジンの刃を弾き、返す刀で首を払いにいく。
しゃがんでそれをかわしたジンは、前に出ている咲絵の足を狙う。動きを鈍らせようとしたのかもしれないが、今の咲絵の体は鐔鬼によって支配されている。その反応速度は人間レベルではない。
足を上げてかわされただけでなく、そのまま前蹴りされてしまったジンが後に転がった。
<ケケケ。そぉら、これで串刺しだッ>
鐔鬼が突きを放った。その切っ先は、腰を地に付けているジンの胸へと向かっていく。
「くッ」
横に転がってなんとか刃をかわしたジンだが左肩を斬られてしまう。
<減らず口が聞けなくなったな。もう限界か?>
優勢に立つ鐔鬼が、ジンを馬鹿にして笑う。
「あなたに恨みがあるわけじゃないわ。死にたくなければ今すぐ去りなさいッ」
咲絵の怒りと苦しさが混ざった表情。
そんな咲絵を、ジンは鼻で笑った。
「黙ってろ女。誰のせいでこんなことになっていると思ってるんだ? そもそも、男に捨てられるあんたが悪いんじゃないのか? 男を見る目もなけりゃ引き留めておく魅力もない。あげくには腹いせに殺人だぁ? まったく、救いようのないバカ女だな。握っているクソ妖怪と一緒に塵にしてやるぜ」
「なッ!?」
「なっ!?――」
ジンの酷い言葉に、咲絵だけでなく桜香も驚きの声を出した。
「川霧さんッ、なんてこと言うんですかッ!」
桜香の怒声。
「おいおい。火に油を注ぐどころか、味方が敵になっちまうぞ……」
岩多も思わず眉をひそめた。予想外の言葉に、黒峰は呆然としている。
そしてタマモは――
「狙いはわかるんだけどね~。ジン、もう手遅れかもしれないよ……」
ひとり冷静な顔で咲絵の変化を見つめていた。
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読んでくださり、ありがとうございました。
――と。いつもならお礼で終わるのですが、今回は少し、あとがきを書いてみようと思います。
酷い内容に「うわぁ……」となった方もいるかもしれませんね。m(__)m
プロットの段階ではもう少し早い更新ができると思っていたのですが、この⑥は書いている私の気が重くなり、執筆する指がなかなか動いてくれませんでした"(-""-)"
この『付喪神の怪』は、【罪と罰】をテーマに書いております。
あと一話か二話で終わる予定です。その時にまた、ちゃんとしたあとがきを書かせていただきたいと思いますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
前回の更新からだいぶ経ってしまいました。
根気強く待っていてくださった皆様、心から感謝しております(●^o^●)/




