6話
「あっ、やっと起きたんだね」
目を開けるとそこに美女がいた。
髪型は少し緑がかった青色のショートカット。肩に届くか届かないかの瀬戸際ぐらいまで伸ばされている。可愛いっていうより綺麗っていう言葉がよく似合う人だった。それに大人の女って感じだ・・・でかい。
その人は俺を覗きこむように・・・・?
覗く? あれ? 俺さっき気絶して・・・・あれはホントに死を覚悟したけど。ここは・・・・ベッド? 病院かどこかかな? それになんか後頭部にフカフカとした感触っていうか温もりが・・・・
「リズはポーションを取りに行ってるけどすぐに戻ってくると思うよ。大丈夫って言ったんだけど・・・心配性だからね。あの子は・・・」
それにしてもフカフカだなこの枕・・・トゥリュー○リーパーより格段上だ・・・人をダメ人間にするクッションといい勝負じゃないだろうか。
「えっと、あなたは・・・」
「私はミリア・エストール。ギルドハウスの職員なんだ。ミリアでいいよ」
「じゃあ、ミリアさんで」
ミリアさんは俺が名前を呼ぶと、嬉しそうに微笑んでくれた。・・・ここの女性陣はみんな優しいね・・・俺たちの知ってる女どもとは違ってね。
なんだろう。寝起きのせいだろうか。涙が・・・ヤバいヤバい。急いでぬぐわなきゃ。
俺が手を動かそうとすると、
「んっ!? あんまり動かないで・・・」
「んなっ!?」
ミリアさんが喘ぐような声を・・・え!?
なんで!?
見ればミリアさんの膝が俺の後頭部に・・・
「えっ!? ふぇyてえりゅうぉぉこおうっじいhhjmこ!??!?」
膝枕!?
思わず言語回路が一方通行になってしまうほど衝撃が走った。
膝枕。男なら誰もが憧れる夢シチュエーションにしてこれを嫌う人間なんていないと言うほどである。それは母性愛の象徴であり男は母親に似ている人を好むという俗説からもこれがどれだけ愛されているかがわかる。これに耳掃除なんて来たら俺はもう・・・ってそうじゃないだろ!?
俺は光の速さで天国を涙ながらに離脱し、両手と頭を地面に!! そうそれは・・・
「すっ、すいませんでしたあああああ!!」
日本男児の伝家の宝刀。DOGEZAである。社畜パパンが言っていた。
『これさえ出来れば人生はなんとかなる!! 大事なのは心だ。ジャンプしかりいつだってハートの強い人間が勝つんだ!! 俺だって、母さんをゲットしたのも折れない鉄のハートが・・・』
その後、母さんにドロップキック喰らってたっけ・・・いや、あれは照れ隠しみたいなもんだなそうに違いない。そうなんだよ。
それにこうも言ったっけ。
『これでダメならトークだ。言葉のマジックを使え。ナンパもこれが肝心だ。 ん? なんだその目は? 父さん、昔はモテたんだぞ・・・・今では母さん一筋だけっ、グボワッ!!』
例によって、
例のごとく。
「えっと・・・・何が?」
顔を上げていないのでよくわからないが、どうやらミリアさんは困惑しているようだ。まあ、土下座なんて始めてみるだろうし、・・・・使えねえわ父さんの教え。親なら異世界で美女に膝枕された時の対処法ぐらい・・・・って、どんな教育だよ。ピンポイント過ぎるわ。 でも、うちの親ならあり得そうで怖いわー。
「えっと・・・その・・・膝枕・・・」
「え?・・・嫌だった?」
くっ。今こそ言葉のマジックを・・・
「いえ。全然嫌じゃないです!! むしろ、大好きすぎて名残惜しいレベルです!! すごいフカフカでまるで羽毛布団に包まれているかのような感触が・・・」
って、俺は何を言ってんだよ!!!
ミリアさん困ってんじゃねえか!! キョトンとしてるよ。キョトンと・・・って可愛さといつもの感じのギャップが凄いんだけど!?
「えっと・・・なんか大丈夫みたいだね・・・」
だが、流石と言うべきかそこは大人の女性。苦笑いだが、笑みを崩さない・・・・終わった。フラグが・・・・ルート入る前に木っ端微塵に・・・・
俺が絶望にうちひしがれていると、
「・・・・・・・・・二人とも・・・何してんの?」
「!?」
不意にリズの声が聞こえ・・・ってご本人!?
俺も大概だが、ミリアさんはいつになく慌てていた。
「えっ!? リズ!? いつから居たの!?」
そう聞くとリズは申し訳なさそうに、
「その・・・・ユーキが土下座したぐらい・・・・」
「よりによって!! 一番ヤバいとこじゃねええかあああああ!!」
「その・・・ユーキって・・・なんか・・・」
「・・・・変わってるね」
「NOぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
俺の悲痛な叫びが響き渡る。
結論。どうやら俺は、ラブコメの主人公に向いていないようだ。




