5話
「もうすぐユーキって言う子がここに来るから、来ちゃうから!!」
「わかったから落ち着いて・・・」
ここは勇者達が仕事を求めに集う場所、ギルドハウス。
そこで受付嬢をしている私、ミリア・エストールは身を乗り出しながらユーキと言う少年について話すリズを必死に静止させていた。
話を聞けば、どうやらユーキはものすごい人らしいけど・・・
「ホントに旅行者なの? ちゃんと確認とった?」
「うん!! 服も変だったし、髪も黒いし、性格は冷たいし」
「いや、性格は関係ないでしょ・・・」
首が折れるんじゃないのかと思うほどの速さで頷くリズはさっきからテンションがおかしかった。
それもそのはず、彼女のレベルはすでにここらの魔物を殲滅できるほどまでに達しているのだ。普通ならこんな小さな町を離れ旅に出てもおかしくないはずだが彼女には・・・
「わかったから、パーティーを組む当てが見つかって嬉しいのはわかったから、だから落ち着いて!!」
そのことを言うと、リズは明後日の方向を向き、
「えー、べっ別にそんなの関係ないし~私は全然気にしてないしー」
この娘は昔から嘘をつくのが絶望的に下手くそだった。
前も告白してきた男の子をこっぴどく振ったばかりだ。リズは告白されたことにも気づかないで、
『君誰?』
一蹴だった。その子は心を痛め勇者稼業をやめ実家に帰ったらしい。可哀想に・・・。
それにこの子は無駄に正義感が強いし・・・絡まれてた女の子を助けるのはいいけど・・・いくらなんでもあんな風になるまで・・・。それを語るのはあえて割愛させていただく。・・・考えただけでも恐ろしい。
まあ、それが原因で男連中はリズを恐れ、他の町に行ったのがほとんど。パーティーを組む人が見つからずソロなんかやってるんだけど・・・
「で、その子はどうしたの?」
さっきから肝心のユーキ君の姿が見えない。人が全くいないから受付カウンターからでも全体が見渡せる。・・・それもリズのせいなんだけど・・・
「え? さっき別れたよ」
「どうして?」
「だって・・・お風呂入りたかったし・・・それに限界だったし・・・」
ダンジョンには風呂もないし、それにトイレも大変らしいのは知ってるけど流石に置いてくのは・・・
「いつ?」
「えっと・・・門の辺りかな? 大丈夫だよ、ここの名前も伝えたし」
リズはそう断言しているがその自信はどこから来るのだろう?
ユーキ君はこの世界に来て右も左もわからないのに・・・
「早く来ないかな~」
と、鼻歌を歌いながらウキウキとしているリズに答えるかのように立て付けの悪いドアがガラララと開き始めた。
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「・・・やっと、着いた・・・・・・・・・・」
リズと別れて数十分後。
門番のおじさんともめるにもめ、道行くおばさまがたに話しかけられること数回。子供に石を投げつけられること2回。やっとの思いでたどり着いたギルドハウスは・・・
「ボロッボロじゃねえか」
閑古鳥がけたたましく鳴くレベルだ・・・真夏のセミレベル。
ここまで来られたのはみんなのお陰だ。というか、おばちゃんのお陰だ。親切に地図まで作ってくれちゃって・・・だが、俺には熟女趣味はないので悪しからず。・・・なんだ、寒気が。
ただしクソガキ、テメーはダメだ。直撃した右腕が疼くぜ・・・
ここでリズが待ってるんだよな。なんで先に帰ったのかはあえて聞かないでおこうと固く決意するけど、とりあえず中入るか・・・
痛む右腕にむち打ち、ドアに手を掛けると、
「待ってたよおおおおおお!!」
「ぶっ!?」
中からリズが飛び付いてきた!? それも鳩尾に全力でぶつかって・・・
女の子の臭いを楽しむ暇もなく、俺の意識はそこで途絶えた。
ブックマークありです!! これからは一日一話のペースでいきたいです




