表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

とあるJCの体験入学(オープンキャンパス)

 この時期の教室は、湿気がこもって厭な感じがする。古い校舎だから、エアコンなんてないし、扇風機はあるけど、湿気と熱気をたらい回しにしてるだけ。

 そんなことを考えながら、私は、市立檜扇中学校3年2組の教室で、ある紙切れが配られるのを待っていた。

「ねぇ、桜はどこのオープンスクール行くか、もう決まってるの?」

 クラスメイトの雛子が、左隣の席から訊いてくる。私は、右手でシャープペンシルをくるくると弄びながら、「まだ。今から考える」と答えた。

 行きたい高校なんて、特にない。どこに行っても一緒じゃないの? って思う。いい大学に行きたいとか思ってる子は、俗にいう進学校に進むんだろうけど、そんな先まで考えられる十五歳の人間が、この世界にどれだけいるんだろう。

 今、私の目の前には、オープンスクールの希望先を書くための紙がある。第一希望から第三希望までの表。

 そしてもう一枚、オープンスクールに行けるところがリストアップされた紙がある。

 私は、高校の名前がずらっと並んだリストを眺めた。


 県立A高等学校

 県立B高等学校

 県立C高等学校

 ……


 私の住んでいるところは都会じゃないから、ほとんどが県立高校で埋め尽くされている。公立の高校が第一志望で、私立は滑り止め、っていうのが通例みたい。

 そして、リストのなかには、ひときわ目立つ名前の学校があった。

 独立行政法人国立高等専門学校機構立花工業高等専門学校。

 なにこれ? 長すぎるし、どっかで区切られるんだろうけど、一体どこで区切れっていうの。ていうか、正式名称これなの? キモすぎる。

 でもなんか、立花っていう名前が見えるから、たぶん、立花高専だ。そうすると……


 独立行政法人 国立高等専門学校機構 立花工業高等専門学校


 こう、区切るのかな。合ってるかな。

 そういえば立花高専って、兄貴が通っているところだ。(兄の存在をたった今思い出した。)

 兄貴はその高専の、寮に入っていて、年に数回くらいしか帰ってこない。(むしろ、帰ってきてほしくない。絶対に。死ね。)

 私に今ある知識の解像度では、高専っていうのは理系の学校、っていうくらいの認識。それと、クソ兄貴が通ってるヘンテコなところ。どんなところなのか、皆目見当もつかない。

 ていうか、そんなこと、どうでもいい。

 

 とりあえず、普通科なんてどこも同じでしょ。だったら、友達と一緒に行ったほうが絶対にいい。そう思った私は、雛子に訊いてみる。

「どの高校に行ってみるの?」

「わたしは、C高校かな。ここから近いし、それに、バスケが強いから」

 なるほど。部活から考えるのね。わたしはバドミントン部だけど、そんな強豪校は近くにないし、そもそも強くなりたいってわけじゃない。まぁ、近いってのは魅力かも。わざわざ満員の車内に揺られて遠くの学校まで通うのも面倒くさい。今の自転車通学だって、面倒くさいのに。

 雛子が行くって行ってるから、第一希望はC高校にしよう。

 第二希望は……。まぁ、進学校も見てみるか。なんだかんだ、いい高校を出ていれば、なんとなくだけど、人生はいい感じになる気がする。私の今の成績なら、A高校くらいでも合格圏内な気がする。


 先生いわく、希望表は明後日に回収するらしい。でも、いろいろと吟味して選ぶのは面倒くさい。さっさと終えるべきことは終わらせてしまいたい。

 そして、第三希望までは埋めなきゃいけないらしい。そんな命令に従いたくはないけど、後で面倒になっても、それは厭。


 第三希望を書こうとしたところで、私の右手が止まる。

 今のところ、普通科しか希望してない。でも、国際系とか、商業系とか、看護系とか、農業系とか、芸術系とか、理数系とか、工業系とか、いろいろあるんだ。ちょっと専門的なところって、将来自分がどうなりたいかっていう姿が明確じゃないと、入ってから後悔しそうだよね。

 うーん、と私はうなった。

 なんか、何も考えがまとまらない。

 でもなんか、引っ掛かる気がする――立花高専というやつに。

 ここだけ国立なんだよね。なんか、他とは違う雰囲気がする。


 どうしようかと思ったけど、書いたところで希望者が殺到すれば行けなくなるだけだし。立花高専は、なんか新しい学科? ができるらしくて、割と人気が出てるという噂も聞くし、私が第三希望にしたところで、そんなに影響ないかな。行けても行けなくてもどっちでもいい。

 私は、第三希望に「立花高専」と書いた。

 じゃ、これで。


      ***


 後日。

 オープンスクールの行き先が決まったことを担任から告げられる。

 第一から第三希望まで、全部行けることになった。

 まじか。第一と第二はいいとして、高専も行くのか。

 希望表を書いたときは、何も思わなかったけど、いざ行くとなると、一緒に行ける友達とかいるのかな、とか、遠いから早起きして行かなきゃ、とか、いろいろ思うことがある。何で気づかなかったんだろうと、ちょっと後悔。

 でも、周りの友達の話を聞いてみると、何人かの女子は高専のオープンキャンパスに行くみたい。女子は私一人じゃないってことで、ちょっと安心した。

 

 あと、このことって、クソ兄貴に伝えるべきなんだろうか。

 いやでも、私が来るって知ったら、ずっと付き纏われそうな気がする。

 伝えなくて別にいいや。たぶん会うこともないでしょ。(出会ってしまったら、股間を蹴り上げて逃げればいいし。)

 

 担任から、立花高専のオープンキャンパスで参加したいプログラムの希望表を渡された。

 どうやら、立花高専には、機械、建設、電気、情報、化学の5つの学科があるらしい(化学は来年度から新設されるみたい)。その5学科が、それぞれ、体験プログラムを提供していて、そのうちから、行って体験してみたいプログラムを希望するということだった。

 同時に渡された、プログラム表も書かれた案内資料にも目を通してみる。

 プログラム表には、なんて読むのか分からない単語が羅列されているものや、ドローンとか、ロボットとか、化学実験で光のイリュージョンとか、パスタで橋を作るとか、天体観測とか、なんとなく分かるものもあった。

 ちょっと面白そうではある。普通の高校じゃ、あまりやらない感じだよね(もしかしたら、工業高校は、同じような感じでやってるのかもしれない。でも工業高校って、いかにも男子校って感じがするから憚られる)。

 高専志望の女子から聞いた情報によれば、化学科や情報科は女子人気が高いらしい。まぁ、機械とか建設とか電気とかは、どことなく、危険で、泥臭いイメージがある。男の仕事って感じ。リケジョって言葉は最近聞くけど、リケジョのイメ―ジは、どこまでも化学だったり生物だったりっていうのが強い、気がする。


 そんなわけで。

 私は、化学科と情報科のプログラムをいくつか希望することにした。(希望するプログラムに人が殺到したときは、同じ学科の別プログラムに割り振られるんだって。だから、建設科は希望しなかった。確か、兄貴がその学科だったから。)

 案内資料には、当日のスケジュールが記載されている。寮の見学や、寮食堂での食事なんかも体験できるみたいだった。

 せっかく行くなら楽しまないとなぁ。


       ***


 8月上旬の某日、オープンキャンパス当日。

 自宅の最寄り駅から1時間半くらい乗っていた車両から、駅に降り立った。むわっとした熱気が私の躰を包み込む。冷房の効いた車内との温度差で気分が悪くなってしまいそうだった。

 私はスマホを取り出すと、地図アプリを起動して、目的地までの道のりを確認する。

 げ。ここから徒歩で15分もかかる。ちょっと遠すぎない? 真夏とか真冬とか、苦行じゃない?

 とか何とかを、一緒に歩く友人たちと駄弁りながら、立花高専の校門前まで来た。この時点で汗だく。


 校門前には、「立花高専オープンキャンパス」という看板が掲げられていた。その横で、自動車で来校する人たちを誘導する制服の人たち(たぶん、生徒、いや学生だと思う)がいる。親と一緒にくる中学生もちらほらいるみたいだった。私の場合、親は、数年前に兄貴のオープンキャンパスのときに来ているはずで、今回は来なかった。いや、こんなに遠いんだったら、親に頼んで車で送ってもらってた。でも、こんなに遠い場所まで長時間運転させるのも悪い気がする。


 私たちは、「受付はこちら」と書かれた看板に沿って校内へ進む。受付で、私が受けるプログラムが、午前が化学科のやつで、午後が情報科のやつであることを知った。一緒に来た友人たちも、同じだった(でも、受けるプログラムは違ってるみたい)。

 構内図とかいろいろな書類が入った紙製の手提げ袋を受け取って、私たちは、化学科のある校舎へと進んだ。廊下に立つ制服姿の女子学生に促されて、待機場所の教室に入った。女子の制服は結構可愛いかもしれない。制服で高校を選ぶのもありかな、と私は思う。

 教室に整列して置かれた座席に座っていると、

先生らしき人が入ってきて、これからキャンパスツアーを行います、と言った。

 そのあとは、2列くらいになって、さっきの先生に続いて校内を歩いていく。ここが化学科、ここが建設科、ここが機械科、ここが情報科、ここが電気科の教室で、……という風に、校舎の中を案内される。教室がいくつか並んでいるだけで、この辺は中学校と変わらないな、と思った。(違うのは、各教室にエアコンが設置されているくらいかな。)


 校舎の見学が終わると、次は、いったん外に出て、別棟になっている建物へ向かう。

 コンピュータがいくつも並んでいる別棟。なんか独特の匂いがする電気実験室、実験器具がたくさん並ぶ化学実験室。油くさくて、たくさんの何するのかわかんない機械が並んだ実習工場。

 そして、図書館、体育館、運動場など、30分くらいかけて校内をびゅんびゅん周って、元の教室へ戻ってくる。灼熱の外を歩く時間が多かったので、空調の効いた室内がすごく気持ちよかった。中学校じゃ味わえない感覚。でも、一応、他の高校でも、ちゃんと教室にエアコンがついているのは確認済みだったから、これが高専のアドバンテージにはならない。



 そして、午前の体験プログラムが開始する。

 午前のプログラムは、化学科のプログラムで、化学実験室に移動して行われた。テーマは炎色反応。

 炎色反応は、教科書でしか見たことがなかった。うちの中学では、過去に先輩が実験でやらかしてから、実験という実験ができなくなってしまっていた(とくに火を使うものは)。

 そんなわけで、私はちょっと興味津々だった。理科の計算問題はあまり好きになれないけど、目に見える実験は、小学生の頃からも興味をそそられる対象。

 どんな金属を加熱すれば、何色になって、っていうのは知識としては持っているけれど(何と何色が対応するかは忘れちゃったけど。)、ホントにそうなるのかな、っていうのをこの目で見たい。そう思っちゃう。

 そして、実際に実験してみて、私は感動した。ほんとにそうなるんだ、って。

 4人1グループで行った実験には、各グループに1人、学生が付き添っていた。私のグループには、髪を後ろで束ねて白衣を着た女学生がついていた。

 一通りの実験のあと、どうして色が変わるのかを、白衣の女学生が説明してくれた。ちょっと私には理解できなかったので、ここには書き留めない。


 プログラムの終了時刻が間近に迫ったとき、

「高専ってこんな実験とかが多いんですか?」

 私は、白衣の女学生に、そう尋ねてみた。

「あー、そうだね。化学科は来年度から新設されるから、まだどうなるかは分からないけど、もっと専門的な実験をするようになると思うよ」

「そうなんですね」

 こんな楽しい実験ばかりなら、高専も悪くないところだと思う。

「私、今、建設科の3年生なんだけど、化学科に入り直したいなって思うよ」

「えっと、先輩はどうして建設科に? 化学と建設って、なんか全然、結びつきがないように思うんですけど……」

「いやーね、オープンキャンパスのときにさ、化学っぽいことやってたんだよ。水質調査って知ってるかな? BTB溶液って言えば伝わるかな。生活排水とかが酸性がアルカリ性かっていうのを調べるとか、そんなことをね、建設科がやってたんだ。それで、ここに入ったら化学もできるんじゃないか、って思って入学したんだよ」

 そこまで言って、女学生は少し表情を曇らせた。

「でも、入ってみたら、そんなものは欠片も存在しなくて……。騙されちゃったなぁって思ったね」

「じゃ、今回みたいな炎色反応とか、そういうのも、化学科に入ったらやらない可能性があるってことですか?」

「しょ、正直に言うとね」女学生は少し困った顔を見せる。「オープンキャンパスだと、中学生のみんなにとって、興味をひきそうなことをやってる感じだね。私もそれに食らわされたって感じだし」

 あぁ、でもでも! と女学生は両手を振った。

「入ってみると楽しいからね。それに、うちには化学部もあって、私はそこにいるんだけど、こう、自分の興味を持てる部活動とか、そういうのもきっとあるはずだよ!」

 この人は嘘は言ってないんだろうな、と私の直感がそう告げる。ちょっとキラキラしてる。好きなことをできていて、楽しそうに映る。

「……というか、君、鎗戸さんっていうんだよね」

 突として、女学生が、参加者名簿に目を落としてそういった。

「は、はい。そうですけど……」

「高専にお兄さんいる?」

 ドキッとする。そうだ、この人、兄貴と同じ建設科の人だった!(しかも学年まで同じ。ヤバい。)

「やっぱり。じゃ、鎗戸楓馬くんの妹さんかー。噂? には聞くけど、確かに可愛い子じゃん。いやー、そっかっか。鎗戸くんの気持ちも分からなくもないなー」

 私は、ここにはお忍び(?)で来ている。

「あの、私がここに来たことは、兄にはご内密に……」

「ん? あー、大丈夫大丈夫。言わないよー」

 女学生は、あはは、と笑う。私たち兄妹の事情を知っているような感じがする。

「お兄さんのこと、大変だと思うけど。高専には入らなくていいかもだけど、高専には気が向いたら遊びに来てよ。秋に高専祭あるし。友達と来たら楽しいと思うよ。うちの化学部も催しがあるから、ぜひ!」

 文化祭かぁ。いいなぁ。

「ことあと、お昼ご飯だよね。いってらっしゃーい」

 笑顔の女学生に見送られて、私は化学実験室を後にする。



 お昼ご飯は、高専の敷地内にある寮の食堂で食べることになっていた。メニューはカレーライスだった。

 寮の中だったし、クソ兄貴と顔を合わせるんじゃないかとヒヤヒヤしていたけど、杞憂に終わった。よかった。


 お昼ご飯のあと、女子寮を見学した。低学年は2人で1部屋を共用で、高学年だと1人部屋になるらしい。トイレ、洗面所やお風呂も共用だった。毎日が修学旅行とか、そんな感じなのかな……。



 昼からは、午後の体験プログラムに参加した。

 情報科のプログラムで、私は、なんかゲームを作ってみよう、みたいなやつに参加することになった。

 ちょっと埃っぽいニオイのする部屋で、ずらっと並んだパソコンのうち指定されたものの前にある回転イスに座る。

 生徒三人に対して、高専の人(たぶん学生。私服だけど。三十代かな、って思う顔の人だった。)が一人ついて、レクチャーを受ける。

 やったことといえば、ポップなイラストのネコを、ある規則に従って動かそう、とか、そういう感じだった。あんまりよくわかんなかったけど、プログラミングによってゲームが作られてる、っていうのは理解できた。(お腹いっぱいで眠くなっちゃってた。)

 高専の学生が作ったやつも見せてもらったんだけど、シューティングゲームみたいなやつとか、キー操作に合わせて迷路をクリアするやつとか、そういうゲームが出来上がっていた。(男子はこういうの好きそうだなって思う。実際、隣りにいた他校のいかにもオタクって感じの男子は、喜んでゲームを作り込んでいた。)


 ちょっと時間が余ったので、質疑応答の時間になった。

 老けた学生は、何でも聞いていいよ、と言う。

 彼女いるんですか? と身のない馬鹿げた質問をしたのは、チャラそうな見た目の他校の男子だった。

 学生は、「いない」とだけ即答する。顔は笑っていたが、目が笑っていないのを私は見逃さなかった。

 オタク男子は、さっきまで作っていたゲームをもう少しいじりたげで、しきりに画面の方を見ていた。

 時間と機会を有効に使うことを知らないおバカさんを横目に、私は身のある質問をしてみる。

「高専に入ったきっかけって何なんですか?」

 決まった。

 学生は、そうだなぁ、と唸り、「自由だからかな」と返答する。

 意外な答えだった。私は、自由ですか、とオウム返しをしてしまう。

「高専って、普通科の高校と比べると、校則が緩かったりするんだよね。1年生から3年生は、制服の着こなしでとやかく言われたりするから、その限りじゃなかったりするんだけど。まぁ、ド派手じゃない程度の髪色や化粧をしてようが、看過されることはあるかな。縛られないっていうか。みんな自由に、自分の……その、癖を出せてるっていうか。そういう点に惹かれて、僕は高専に入った気がするなー」

 よくしゃべる人だな、と私は思う。学生は立て続けに、

「あ、あとね、休みは多いよ。春休み、夏休みが特に。一ヶ月と少しはあるかな。冬休みは普通くらいだね」

「でも、その分、宿題とか多いんじゃないんですか」

「そうだね、3年生までのうちは、数学とか物理の課題が多かったかな。でも、学年が上がってくると、講義の課題だけこなしてればよくって、休みは自由に時間を使えるかな。これも僕は魅力の一つだといえる。大学受験というものがないからね、ここは。進学校だと、やっぱり、大学進学する人が多いから、学生生活の大半は勉強に費やすことになるよね。まぁ、もちろん勉強は大事で、それに打ち込むことはとてもすごいし、僕自身、高専生よりも高校生の方が優秀なんじゃないかな、って思うときもあるね。勉強に部活に、……それに薔薇色の青春を両立できているってのは羨ましくもあるね」

「高専から大学に入る人はいないんですか?」

「それは、もちろんいるよ。3年生で高専を辞めて、大学に行く人もいて、それは少数派なんだけど。学科とか年によってまちまちだけど、半数いかないくらいの学生は、大学に編入するって聞いたかな」

 ここまでの話を聞くと、高専って、わかってたけど、すごく特殊なんだなって思った。


 なんだかんだ話していたら、終了時刻になった。私は学生に礼を言って、パソコン部屋を出る。

 私はスマホを取り出すと、友人に向けて、集合場所についてのメッセージを送る。校門をくぐってすぐの噴水あたりで集合することにした。

 連絡先教えて? とさっき一緒に体験プログラムを受けたチャラい男子が聞いてくる。当然私は無視。オープンキャンパスでナンパしてくんな。私は歩みを早めてナンパ野郎と距離をとる。

 そんなハプニング(?)はあったものの、私は友人たちと合流できた。「どんなだった?」と顔に笑顔を貼り付けて、情報を交換し合ってみつつ、校門へと進む。


 さて、と。なんだかんだで楽しんでしまった。高専、悪くないのかもしれない。

 でも――。

 聞いた話では、中学を卒業した生徒の1パーセント程度しか、高専には入らないんだって。私は、その1パーセントの側の人間じゃないと思う。ここは自分には合っていない。

 でも、合う人もきっといる。(クソ兄貴はなんだかんだで通ってるし、合う側の人間なんだろう。でも私は奴とは違う。兄貴さえいなければ、私の気持ちは変わっていたかもしれない。)

 それじゃ、さよなら、高専。




 以上、鎗戸(やりど)(さくら)さんの物語でした。

 時系列的には、拙作『アセンブル・ロジック ~高専祭殺人事件~』の数か月前ですね。(そちらもぜひお読みいただけますと幸いです。)

 最近、まとまった時間が取れるようになったので、久々に小説を書いてみた所存です(本作の前回投稿が5年前でした。もう社会人になってしまいました)。

 仕事でも文章を書きまくってますが、型にはまったものしか書けないので、自由に書ける小説はいいですね。短編は特に、プロットなしで自由に書けちゃうので楽しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ