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男子高専生の謎

 岩城(いわき)隼人(はやと)――立花(たちばな)高専・機械工学科3年生、童貞――は、ほぼ満員で走行する列車の吊革に掴まっていた。


「なぁ……週でいくつ?」

「あぁ、俺? 俺は週七だよ」


 隼人は、近くの男たちがそんな会話をしているのを耳にし、その方向に視線を転じた。

 私服を着て、この時間、この路線のJRに乗っているということから、彼らが高専生(4年生)であるということが容易に推測できた。

 そして、年齢と会話内容から察するに、バイト(旋盤(せんばん)の切削工具ではなくアルバイト)の話でもしているのだろう。

 しかし、週七のバイトとは、もはやブラックバイトである。彼の躰や学生生活は大丈夫なのだろうか? 留年するのではないか? と隼人は慈悲じみたことを考えてみる。


「あぁ~、やっぱりそうか」

「でも、日曜に二回だったりするから、週八かな」

「ま、学校無いもんな」


 彼らは、けらけらと笑った。そこまで楽しいバイトでもしているのだろうか。


「で、お前はどうなのよ?」

「あ~、俺もそれくらいだわ。昔は週二か週三くらいだったか」

「そっか。お前、寮に入ってたもんな」

「そうそう。だから、土日しかできなかったわけよ。短期集中型だったんだわ」

「短期集中型とか進●ゼミかよ!」


 彼らは、またもけらけらと笑う。文章に起こせば、「w」がたくさん、草が生えている状況だろう(笑うたびに芝刈りの仕事が捗るのはご苦労なことだ)。


(短期集中……。塾の講師か何かか?)隼人は、断片的な情報から推測を行う。


 男たちの会話はなおも続いていた。


「寮を出たら毎日できるわけだから、今は天国」

「でも……やっぱ、自分で慰めるよりは女の子にしてもらいたいよな」

「口で?」

「それもよい」


 隼人は、そこですべてを悟る。

 お前ら、車内で何て会話してるんだ! 近くには無垢で純真で清楚(死語)な女子高生(JK)だっているんだぞ!

 ――と心の中でほざいて、隼人は、さきほどまでの彼らの会話が見事に暗号化(エンクリプション)されていたことに感心した。途中まで何の話かまったく分からなかったからだ。

 同時に、公共の場で堂々と下ネタをぶち込む男子高専生が怖いと感じたのだった。




      *




「トイレ一緒に行こ~」

「いいよ~」

「あ、わたしも行く~」


 という光景、学校で一度は目にしたことがあるのではないだろうか。

 女子のその不思議な光景に、男性は少し首を傾げたかもしれない(もちろん、女性でもそれはあるだろう)。


「――なぁ、トイレ一緒に行こうぜ」

「あぁ、いいよ」


 授業と授業の休み時間、クラスの男子学生がそんな受け答えをしているのを隼人は目撃した。目を擦るが、その会話をしているのは紛れもなく男子である。

 お前らは女子かよ! と突っ込みを入れたくなるのはやまやまだろうが、高専ではなぜかこの光景を目にすることが多い。

 この現象について、隼人は考える。


 1.トイレで素敵なことをしようとしている(ご想像に任せたい)。

 2.単に「ぼっち」が嫌なだけ。「ぼっち」に見られるのが嫌なだけ。

 3.肉体的には男子だけど中身が女子(あるいはそういう傾向にある)。


 一つ目の可能性は排除できる(と思いたい)。二つ目はかなり有力な説ではある。しかし、それを裏付けるだけの証拠が少ない。

 となれば、可能性としては「精神的に女子に近づいている」というのがもっともだろう。

 やはり、男子しかいない(100%ではないが)という高専の状況が、そうさせているのかもしれない。

 不足した女子を補うため、自らの女子化を行おうとしている。そこで手始めに、もっとも簡単な心理から真似てみよう、といったところだ。

 これも突飛な推測かもしれないが、裏付ける証拠はある。

 まず、女装男子が多いこと。普段から女装する男子は極めて稀だが、文化祭のときになると女装祭りが起こることが多い。やはり、普段からそういう願望があるのだろう。

 さらに、自身の趣味でニーソを購入し、それを履いてSNSに画像を上げる男子学生もいる。

 これらを踏まえると、無意識下で、男子高専生は女性へと近づいているのかもしれない。

 ――これが真実か虚構かは、誰も知らない。




      *




 結論として、この学校には変態しかいない。

 いや、これは正しくない。

 人が人である以上、必ず「変態的資質」は存在する。

 しかし、人に備わった「正気」が、変態的資質の表面化を抑制している。

「変態」というのは、「正気」の壁を破り「狂気」の境地へと達した人間だ。

 つまるところ、この学校には、「狂気の人」や「自分の欲に忠実な人」が多いのだ。


 と、いうところで、高専の闇はまだまだ深い――そういうことだ。





 深夜テンションで書いた。後悔はしていない。

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