奴隷と言う名の盾
後半はちょっと暗い話かもです
バカル帝国の三銃士達と別れたあと遅れを取り戻すため二人は先を急いでいた。この辺の魔物も多少は強いもののチート二人の相手ではなかった。13層まで来たところでようやくフロアボスとご対面である。きっとこの先へ進んでいった探検者達はみんな避けて進んだのだろう。他の雑魚モンスターには無い覇気がある。これは少しは楽しめるであろう。思わず胸が高まるタイジであった。
ドラゴンを小さくした様なモンスターだ。ライブラリで確認してみる
スモールドラゴン LV20
そのまんまの名前かよとツッコミを入れてやりたいがいまは戦闘中だ。落ち着こう。そんなことを考えてるとスモールドラゴンはドラゴンブレスを二人目掛けて吐きつける。
「【マジックシールド】」
すかさずレオはマジックシールドを発動する
ドラゴンブレスはマジックシールドにぶつかり消滅する
「タイジあまりよそ見しないでくれるかな」
「悪いな。助かった」
戦闘中のよそ見は命取りである
「おれがあいつの攻撃を防ぐから首狩ってきてよ」
「了解だ!頼んだぞ」
言葉通りレオは相手のブレスを全部防ぎきる。タイジはスモールドラゴンの首を掻っ切ろうと槍を振り降ろす。がスモールドラゴンもバカでは無い。ブレスを吐くのを止め爪でタイジを引っ掻く。防御は出来たものの威力は殺せずタイジは飛ばされ木にぶつかりようやく止まった。マジックシールドで防げるのは魔法だけであって物理攻撃は防げないのだ。
「水の精霊に力よ。【ウォーターボール】」
レオの魔法によって大きな水に覆われたスモールドラゴンは動きが遅くなる
そこへタイジが槍で頭を突き刺す。
断末魔とともにスモールドラゴンは消滅していき魔石が残った。
ここで軽快なファンファーレが頭に鳴り響く。
この音は BWGではお馴染みのレベルアップ音だ。
二人はステータスを確認する
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レオ・サザナミ ヒューマン 魔法使い
【称号】大魔法使い
レベル 79
HP1100 /1100
MP 3300/3700+500
力 250
体力 250
敏捷 800
器用 400
魔力 1400/1100+300
【属性】全解除
雷魔法(神級)火魔法(上級)水魔法(中級)風魔法(中級)光魔法(中級)闇魔法(中級)空間魔法(中級)
【スキル】
杖術Lv3 魔力強化 高速詠唱 MP回復強化 ライブラリ アイテムボックス
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タイジ・オオミヤ ヒューマン 槍使い
【称号】聖槍
レベル 83
HP2000 /2100
MP 1500/1000+500
力 1300 /1100+200
体力 650
敏捷 900
器用 300
魔力 450
【属性】回復魔法(下級)補助魔法(下級)
【スキル】
剣術Lv5 槍術Lv5 格闘術Lv5 身体強化 自動HP回復 ライブラリ
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レオは相変わらず魔力とMPだけは高い。他は一般の兵士と変わらないんじゃないだろうか。三銃士戦とドラゴン戦によりだいぶMPが減少しているようだ。タイジは初のダメージを食らった事によりHPが少し減少している。一気に三つ上がったのはこの世界ではレベルアップ補正がかかっているからなのかもしれない
「初ボスは難なくクリア~」
「ノーダメージで行きたっかたのに!くそ!」
やはりダメージを受けたことが悔しいようだ
「前衛でノーダメージなんて無理無理。一番リスクのあるポジションなんだから」
レオの言うことは正しい。本来ならば前衛はもっと攻撃を受けるものなのだ。スモールドラゴン相手に一撃しか受けてないだけでも普通なら奇跡と言えるにだが二人にはこの世界の常識が無いため気づく訳もない。
「これからはノーダメージでいく!」
タイジの宣言は虚しく第14層のフロアボスで終わった。第14層のフロアボスはタランチュラのデカイバーションで無数の足から繰り広げられる攻撃を塞ぎきれず一撃を受けてしまう。宣言をそうそうと破かれたタイジは腹が立ったのか、悔しかったのかわからないが、回避を捨てひたすら切り刻み、最後に槍をタランチュラに突き刺し戦いはすぐに終わった。
一方レオはなにをしてたかのかと言うと、虫が大の苦手らしく遠くの木の影から見守っていたのであった。
はたから見れば圧勝であったが回避を捨てたタイジのHPはだいぶ減っていた
◆
タイジ・オオミヤ
HP1000 /2100
MP 1500/1000+500
◆
「癒しの精霊に力を【ヒール】」
しかし一回では回復せず結局もう一回ヒールを唱えた。
ようやくタランチュラから避難していたレオが戻ってきた。どんなけ遠くまで行ってただ。こいつは。
タイジがよくも逃げたなと怒ったが虫だけはだめ、と苦笑いするだけであった。
気を取り直して二人は第15層へ向かう。
第15層への階段を降りるとすぐフロアボスと戦っているパーティーが見えた。
「ありゃ~先越されちゃったか」
レオが残念そうに言う
この迷宮には戦ってるパーティに割り込んではいけないという暗黙のルールがある。らしい。二人はさっき三銃士からそのことを聞かされ知った。
クラブロス LV23
第15層のフロアボスはカニとカメを合体させたようなとても硬そうな魔物だった。レベルも23と結構高い。
よくよく見ると同い年位の女の子三人と男の子二人のパーティーだ。それも凄く消耗してるように見える。特に前衛の男の子と女の子二人はたいした装備もせずに戦ってるため体中傷だらけでボロボロだ。戦術を知らないのかなんなのかわからないが異常であることは確かである。ライブラリで見てみるとその謎はすぐに解けた。
◆
ジューク・レイヤ 獣人 奴隷
HP170 /500
MP 0/50
◆
ミランダ・シー 獣人 奴隷
HP100 /300
MP 10/10
◆
――― 奴隷だ ―――
主人であろう女達は自分たちにしか回復薬を使わない。奴隷たちを囮にして遠くから魔法を撃つだけ。
これがこの世界の普通なのか?そんなのが許される訳がない!タイジはワラワラと震えている。正義感が人一倍強いタイジには耐えれない状況であろう。いや、日本で生きていた者なら耐えられる者はいないであろう。レオはこの状況にまだ気づいていない。前世の二人が生きていた時代には奴隷制度など終わっていた。人間には当然のように人権があった。自由があった。それが普通であった。
――― この世界は腐ってる ―――
そんなことを思ってる間に最悪の事態が起きた。クラブロスの鋭い腕が奴隷少女に突き刺さった。男の子の奴隷が助けようとするが主人はそれを許さない。
居ても経っても居られなくなったタイジは飛び出す
「レオ!手伝ってくれ!」
「めんどっ。!? わかったクラブロスは任せて」
いつものめんどくさいを言おうとしたところでこの異常な状況に気づいたようだ。
レオが詠唱をする
「風の精霊に力を【エアーロック】」
風がクラブロスを挟み動きが止まる。その隙にタイジが奴隷少女を救出し回復魔法をかける。傷口は塞がったが流した血が多過ぎる。このままでは死んでしまうかもしれない
「君たちはやくこの子を連れて治療院へ行って!」
主人であろう女の子たちに訴える。すると一番若いであろう女の子から驚く答えが返ってきた
「なに言っちゃってんですか?あなたは。そう言って獲物を横取りするつもりですか?」
おかしい。考えがおかしい。全てがおかしい
「獲物なんてくれてやる!だからこの子をはやく連れてけ!」
「あははは、おかしな人。でもその子はなんとも無いですよ。ほら、早く立ちなさい」
鋭い目で奴隷少女を睨む
「はい。すみません」
奴隷少女はよろけながら頑張って立ち上がる
「治療して頂きありがとうございました。もう大丈夫です」
タイジにそう言う奴隷少女だが明らかに呼吸するのもやっとな程、辛そうである。しかし大丈夫と言われてしまった手前更に口を出すことは出来ない。
レオは既にクラブロスは倒してたようで奴隷の主人は魔石を渡すようレオに要求する
「君たちは見たところ貴族の子息かなんかでしょ?なんで迷宮なんかにいんの?」
面倒事には関わらないレオだがこの件についてはやはり思うところがあるようだ
「クラスメートに力を示すために決まってるじゃないですか」
「そんな事のためにこの子達は命の危機に晒されてるわけ?」
レオの怒りは手に取るようにわかる。隣のタイジも同様だ
「大変名誉なことではありませんか。私の盾となり剣となり戦えるのですから」
心からそう思ってる顔をしている。そして本当に二人の言ってる意味がわからないようだ。これがこの子たちの普通。そして常識。
奴隷二人が申し訳なさそうな顔している。きっと主人も奴隷たちのせいで自分が怒られてると思っているだろう。これ以上とやかく言うと奴隷の立場が危うくなってしまう可能性がある。それでは本末転倒である
二人が沈黙を貫いていると奴隷の主人達が「ごきげんよう」と去っていく。その後ろ姿をただただ見てることしか出来なかった
「やっぱりこういう世界には奴隷がいるんだな」
先に沈黙を破ったのはタイジだ。先程より暗い顔している
「この世界で生きてたらおれたちもいずれは奴隷を物と扱うようになっちゃうのかな」
「そうはならない絶対に。おれ達は絶対に」
力強くタイジは宣言する。
「ああ、そうだね。おれたちは日本人だもんね」
二人は第20層まで行ったところで今日の迷宮探索を終えて10層同様テントをアイテムボックスから出しテレポートで宿へ帰っていく。
寝ないで書いたから変な所多いかも…
明日見直しますのでご勘弁を
そろそろハーレム第1号と出会いたい…