第9幕 〜灯火〜
手の上からあかりさんはいなくなり、その代わり私の手の上には、大きな月が乗っていた。雲はもう晴れていた。私の前方に見えるシイノトモシビタケたちに月からの光が当たっている。そのシイノトモシビタケたちからは、今まで体内にあった光が浮かび上がっている。光の入れ替えが行われているようだった。
私は、耐えるとかいう理性もないまま静かに泣いていた。泣くなんてほんとに何年ぶりの事か。胸が詰まる感覚を思い出していた。暫くして少し落ち着いた私は、手の上に何かが乗っている事に気がついた。そこにあったのは、あかりさんがしていた小さなペンダントだった。光は失われ抜け殻のようなペンダント。
「なんだいそれ?」
そう言ったのは、私に近づいて来ていた主人だった。私の手の上を見て言っていた。
「これ……何に見えますか?」
「何って……小さなペンダント?にしては、飾りも無い枠しか無いような……」
主人には私と同じ物が見えていた。
「あかりさんがくれたんです」
「え、あかりちゃん?これ?そういえば……どうなったのあかりちゃんは?」
主人は心配そうな顔で私を見ている。私があかりさんであるシイノトモシビタケを持っていない事で、多分、薄々分かっていたんだと思う。しかし、私は……
「大丈夫ですよ……皆を救ったヒロインですから、彼らの中で生きていますよ」
色んな意味を込めてそう言った。納得したかのように主人はうなずいて、シイノトモシビタケたちがいる方へと戻って行った。私はそのペンダントを大事に胸ポケットにしまおうとして、気がついた。月明かりの下では分からなかったが、暗い所で見るとそのペンダントは、淡い小さな光を灯していた。




