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第8幕 〜破裂〜

「なんか……1本の光の量がいつもより大きい気がしない?」

牧田さんはそう言うと、主人の方を見た。

「確かにドームの中もいつもより明るく感じる」

主人は奥の方へと進み、一つのシイノトモシビタケに触れる。私は手の上にいるあかりさんを見た。確かにあかりさんも昨日の部屋で見た発光量よりも一回り大きく感じる。それよりも気になったのが、手の上で横になりぐったりとして、表情が暗い事だった。

「大丈夫ですか?」

私はあかりさんに話しかけた。つもりが、牧田さんも振り返った。

「いえ、あのあかりさんに……」

「ああ、そう」

未だ険しい顔の牧田さん。今度はあかりさんが乗っている手を自分の顔に近づけて、もう一度あかりさんに話しかけた。

「調子が悪そうですが?」

「ああ、すみませんちょっとなんだか、体が熱いんです……」

「熱い?」

あかりさんの乗っている私の手は、それほど熱くはない。雨は少し強まっている。

「なんだ!」

急に主人が向こうで大きな声を出した。私と牧田さんは主人がいる少し奥の方へと向かった。

主人の背中越しに見えたシイノトモシビタケが1本。光を放っている……が、なんだか光が大きい。その大きさが尋常じゃない。淡い光という領域を超えている。もう電球かと思うくらい光っていた。しかもその光がさらに増している。

「これは……」

私はあかりさんを見た。あかりさんから恐怖の表情が浮かんでいる。

「だめ、だめ、……いや、そんな!」と小さい声しか聞かなかったあかりさんが、

限界に近いくらい大きな声で叫ぶ、と同時に、強い光を放ち続けるシイノトモシビタケは弾け飛んだ。跡形も無かった。あかりさんが私の手の上で泣いている。

「こんな事になるなんて……言い伝えには無かったのに……」

私は何も声をかけてあげる事が出来なかった。牧田さんは驚くしか無いという表情を浮かべて立っていた。

主人はゆっくりと立ち上がりつぶやいた。

「早くどうにかしないと」

その表情に和やかさは無かった。

「この雨は、通り過ぎるんですよね?」

私は誰とも無く聞いた。驚きが浮かぶ表情の牧田さんが私を見た。

「ずっとは続かないと思うけど……」

「とりあえず、全てのシイノトモシビタケを入り口に集めませんか?」

私の提案に主人がうなずいてくれた。

「よし、それぞれの倒木を入り口の一カ所に集めよう」

そういうと主人は、目の前にあったシイノトモシビタケの生えた倒木を抱えて、入り口の方へと向かった。

牧田さんも慌てて、シイノトモシビタケを助けるべく倒木を拾いに向かった。私は一度、入り口まで戻り、あかりさんを入り口の側に置いた。あかりさんの息づかいが激しくなっていた。そして、光も増している。私はすぐに中へと振り返り、倒木を集める作業に参加した。先に拾いに向かっていた牧田さんが、シイノトモシビタケの生えた倒木を抱えて、入り口まで戻って来ていた。抱えているシイノトモシビタケが眩しすぎた……

「牧田さん……」

「え?」

牧田さんは私の目線に気づき、抱えている倒木の方に眼を向けた。光が増し続けている。

「ちょっと、何これ……いやああ!」牧田さんの絶叫と一緒に弾け飛んだ。

「大丈夫ですか?」私は近づきながら聞いた。

「ええ……別に痛くもないしなんともないわ……でも……怖い」

牧田さんは少し震えていた。

「おい!雨は止んだぞ!」

入り口に戻っていた主人が言った。私は近くにあった倒木を抱えて、入り口へと急いだ。

外を覗くと雨は止んでいた。しかし、雲がまだ晴れていない……月が見えない。

「大丈夫だ。あとは雲が流れるのを待つだけだ。とにかくこいつらを外に出そう」

主人はそう言うと、腕に抱えるだけの倒木を持ち上げた。私たちはドームを出たり入ったりしながら、全てのシイノトモシビタケを外に出した。その間、何体ものシイノトモシビタケが弾け飛んだ。月はうっすらと見えていたが、まだ雲がかかっている。私は入り口の側に置いていたあかりさんを拾いに行った。私の見たあかりさんは、膨張していた。体が膨れ上がっている。光もかなり強い。私はすぐに拾い上げ声をかけた。

「大丈夫ですか?」

あかりさんは辛そうにこっちを見た。

「なんだか……内側から……溢れてきて……」

限界が近い……。

「もう少し頑張って!」

私は月を見た。もう半分は見えている。月が大きく感じる……これがスーパームーン……。逆にそのせいで雲

がかかる範囲が広いのか……。私の前方にいる主人たちの足下に集められた群生から、光が大きくなり、弾け飛ぶシイノトモシビタケがいくつか見えた。牧田さんは膝をついて泣いているように見えた。主人はずっと空を見ている。私は、あかりさんを乗せた手を空に向けて挙げ、あかりさんの延長線上に月を置いた。もう少し……もう少しだ……。それでもあかりさんの膨張が止まらない。少し突けば破裂しそうなほど、体がパンパンに膨れている。光が眩しくて、顔の表情がはっきり分からない。

「あと少しなんだ、あかりさん!」

あかりさんの頭の部分が、少し私の方に動いたように見えた。

「……ありがとう……ございます」

あかりさんから小さな声でお礼を言われた。


そして、あかりさんは弾け飛んだ……。

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