第4幕 〜観賞〜
ジープに揺られ夜の森の中。木々に囲まれ坂道を登りきると、開けた場所に出た。
『ようこそ!光るキノコの森へ』看板が立っていた。もっと密かにやっているもんだと思っていたが、結構大々的にアピールされている。看板の向こうには天井に草木を駆使して人工的に作られたアーチ状のドームが立っていた。
「あのドームの中で生息させてんのよ。出来るだけ光が入らないように天井を覆ってるから中に入ってみ」
私はジープを降り、看板のある入り口の方へと向かった。入り口は私が中腰になる事で通れるくらいの高さしかない。私は俯きアーチ状の入り口を潜る。もう頭がぶつかる心配は無いだろうと顔を上げ、そして息を飲む。そこには幻想的な淡い光の道が出来ていた。
「どうだい?感動した?」主人が後ろから声をかけてくる。
ドーム内の道両サイドに、光るキノコが奥までずらっと並んでいる。淡い光に自分の眼がぼやけて、ピントをずらされているような錯覚に陥る。私は少し眼をこすった。これが現実だった。
「これは……思っていた以上です」
「だろ?これを見て感動しねぇ奴はいねぇよ」
私は奥に入り込み、大き目の光るキノコの前に跪いた。持っていたショルダーバックを地面に置いて、鞄の中から一眼レフカメラを出した。
「お、良いカメラ持ってるね。趣味かい?」
「いえ、単なる記録する為の道具です。家にあったから持っているそれだけです。趣味でもないので滅多に写真なんか撮らないのですが、その“滅多”に出くわすのが遠出だったりするので」
「そうかい。じゃあこれは“滅多”みてぇだな」
私はうなずいてレンズカバーを外す。
「このキノコに名前とかあるのですか?」
「ああ、シイノトモシビタケって言うんだ」
「なるほど……シイノトモシビタケ」
「1951年に八丈島で初めて発見されたんだってよ。今では和歌山なんかでも見れるみてぇだけど」
私は一眼レフを構え、ファインダー越しにシイノトモシビタケを見る。暗闇の中で光るキノコは画になる。
しかし、実際に眼で見るのとでは、その淡い光の加減を感じる事が出来ない。
“……うわあぁ……”
「ん?」
今、とても小さかったが悲鳴のような声を聞いた気がした。私はファインダーから眼を外して、当たりを見渡した。そこには、いつまでも和やかに笑う主人しかいなかった。気のせいかと私は気を取り直して、同じ被写体を角度を変えて3枚撮り、地面に置いてあったショルダーバックにカメラを閉まった。
「えっ……もうおしまい?」いつまでも和やかに笑う主人の顔から笑顔が消えていた。
「ええ。2枚でもいいかと思ったのですが、一応記念に3枚撮らさせて頂きました」
「記念に3枚って、普通バシャバシャ皆撮るんだけどねぇ」
「いえ、写真に収めた所でこれはこの場でしか味わえない物なので、必要以上にいらないかと」
「ああそう……まあ石尾さんがそう言うならいいんだけどね」和やかに笑う主人に戻った。
私は入り口のアーチを潜り、送迎車のジープへと向かった




