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Db4

「やめて」

鋭い声で、話を止められた。

いつもへらへらとしているあいつからは想像もつかない、硬い声だった。

「……デザート、食べよう。ノエル」

一度。息を大きく吸い込んでから、笑顔を作ってあいつはそう言った。

でも、僕は止められなかった。

どうしても避けられないと思っていた。

この先、あいつを幸せにするには。

あいつと生きていくためには。

どうしても、傷を共有しなきゃ、駄目だって。

そう思っていた。

「……あのさ。どうしていつも笑っていられるんだよ」

「デザートもね。結構自信あるんだ」

「言えた義理じゃないけどさ、どうして泣かないんだよ。どうして怒らないんだよ」

あいつの顔から笑顔が消えた。

いや、笑顔の形はしていたのだけれど。

それは僕には確かに、泣き顔に見えた。


一回でいい。

たった一回で良いから、僕の前で泣いてくれよ。

辛いって言ってくれよ。

そうすればさ。

僕は馬鹿みたいに胸を張って。

「お前を守るよ」なんて阿呆な台詞が吐けるんだ。

こんな街から連れ出してやるんだ。

どこか遠い知らない街へ行ってさ。

そこで、二人で暮らすんだ。

もし、それが出来ないのなら。

お前が望むのなら。

こんな街、滅ぼしてやるさ。

お前の傷を、僕にも分けてくれよ。

それさえあれば、何だって出来るんだよ。

生きてるって、ずっと強く感じられるんだよ。

嫌な奴らを全部、喰い殺してやるからさ。

なあ、いいだろ。「サリー」


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