Db6
そのクリスマスの日以来。
あいつと会うことは無かった。
僕が部屋から出られなかったんだ。
あいつも尋ねてくることは無かった。
元々、一人ではあんまり街に来なかったから。
どうして、だろう。
どうして、僕は。
その幸せを腕一杯に、素直に、抱きしめなかったんだろう。
いつまでも、じっと古傷を眺めて。
その傷が消えないように何度も瘡蓋を剥がして。
そして、またそれをこれ見よがしに高く掲げて。
「どうだ。僕はこんなに不幸なんだ」なんて。
そんな事ばかりに必死になって。
でも、それが無ければ僕は生きてこれなかった。
生きてこれなかったんだよ。
そんなことばかり、一人でずっと考えていた。
傷が癒えてしまうのが、怖かった。
この出来事でさえ、また生きる糧になるんじゃないか。
そんなことも考えた。
でも、以前のようにそれをそのまま受け入れることも出来なかった。
変わってしまうことが、恐ろしかった。
だから、変わらないままで、あいつと生きていけたら、と思ったのに。
それは、その時の僕では無理だった。
幼かった。
愚かだった。
何よりも。
全てを受け入れて笑っているあいつに、嫉妬していた。
自分の後を、へらへらと笑って着いてきているだけと思っていたあいつの方が。
自分よりも、ずっと前を歩いていた。
それを認めることが怖かった。
自分が前に立って、主導権を握っていないと、怖かった。
じゃないと、また、母親の時のように、いつか置いていかれるのではないか。
そんな事も、思った。
そして、そんなことを思う自分が。
また、嫌になった。