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STORY3 魔除け

 「? 何、これ?首飾り?」黒狐に渡された月の首飾りを見て、あかりは首をかしげた。


 「見ての通り首飾りだ。これからは常時、それを付けておいてもらう」


 「なんで付けなきゃいけないの?」言いながら首飾りを首にかけると、あかりが訊いた。


 「色々理由があるんだよ。長くなるから以下省略!」


 「省略するなよ。困るじゃん」あかりに言われ、黒狐はめんどくさそうに説明を始めた。


 「その首飾りはあれだ、魔除け(チャーム)っていうのでな、まあ…あれだ、魔から守って


くれんだ、その名の通り」


 「魔?異世界(ここ)、そんなものあるの?」


 「あるぞ。現実世界(そっち)みたいに平和な場所じゃないからな、ここは。誰もが自分の


愛する者を取り戻すために死んだり殺したりだからな。おまえより小さいのもいるぞ」


 「あたしより!?」黒狐の言葉に、あかりは驚き入り、JOKER MOON(このゲーム)に改めて


恐怖を感じた。


  あたしより幼いこどもが愛する者を取り戻すために死んだり殺したりしているなんて…


 恐いというか、気の毒というか、可哀そうというか、すごいというか、ありえないという


か…。すべてに当てはまる気がした。


 「で、でも、そんな小さくて勝てるの?」あかりの問いに、黒狐は平然と答えた。


 「勝てるぞ。余裕で。JOKER MOONには年齢は関係ないからな。五歳くらいのガキが三十代の


おっさんに勝っても全然おかしくない。異世界(ここ)はそういう世界だ」

 

 「うそ…。じゃあ、あたしがそれくらいの子に負ける可能性もあるの!?」


 「あるな。十分に。異世界(ここ)では大人よりこどもが強い力をもっているからな」


 「なんで?異世界(ここ)って、現実世界(あっち)と何が違うの?」

 

 「JOKER MOONは純粋さとか、優しさとか、そういうのを要するゲームだからな。基本はこど


も向きだな。まあJOKER MOON(これ)をやり続けてるうちにどんどんドス黒くなっていて、死


んでいくガキもいるがな」黒狐が現実世界ではありえないことをあまりにも平然というので、


あかりの頭の中は混乱し始めた。


 「う…なんかよくわからないけど、とにかく、いつまでもこどもでいればいいのね?気持ち


だけ!それはわかったけど、JOKER MOONって、どうやるの?」


 「ん?ああ、そういえば言ってなかったな。JOKER MOONはな、その魔除け(チャーム)と自


分の体技、頭脳を使うんだ」


 「体技?頭脳?あたしどっちもできないよ?体技は何も習ったことないし、頭脳はあたし、


成績中の下だったし。それに、魔除け(チャーム)ってどう使うの?」あかりは嫌なことを思


い出したようで(恐らくテストのこと)、少し声のトーンを低くして言った。


 「そこらへんは問題ない。これから成長していくからな。魔除け(チャーム)に関しては、


これから教える。まあ主には防御に使うだけだ。魔除けだからな」


 「へー。あ、魔除けっていえば、魔って、本当にいるの?異世界(ここ)


 「いるぞ。まぬけな(プレイヤー)魔除け(チャーム)を付けるのを忘れていて、魔


に殺されてゲームオーバーになったバカもいたからな」


 「うわ…」あかりの顔が引きつる。自分の場合を想像してしまったのだろう。


 「でも、これ付けてたら襲われないんでしょ?」あかりが訊くと、黒狐は黙りこくってしま


った。

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