STORY 1 始まり
JOKER MOON…それは、死と生を賭けたゲーム。
愛する者を失ったとき、全ての者にそれに参加する権利が与えられる。
勝てば光、負ければ死のみ…それが、月夜のゲーム、JOKER MOON。
そんなゲームに参加する日は、死と同じくして何でもない日常に突如現れる…。
真夏の夜、ほとんど何も見えないような暗闇の中、小さくすすり泣く声だけが聞こえる。
「母さん、何で死んじゃったの…」声の主は、十四歳くらいの少女だった。
彼女は一昨日母を亡くし、途方に暮れていたところだった。
泣いても泣いても涙が溢れてくる。どうにもならない状況だった。
そうして泣いているうちに、彼女は、自分が今までいた場所ではなく、何もない暗闇の中に
いることに気付いた。
「ここは…?」彼女がつぶやくと、不意に、暗闇から低い男の声が聞こえてきた。
「おまえは、母親を亡くしたのか?」
「…誰??」男の問いに答えず、少女は聞き返した。
「おまえは、母親を亡くしたのか、と聞いている」また、男も少女の問いに答えず、同じ問
いを繰り返した。
「何で知ってるの?」
「…母親を、生き返らせたいか?」
「は…??」少女は、男の言葉に一瞬呆然とし、耳を疑った。
「それは…新手の詐欺か何かですか?」
「違う。断じて違う」男は少し取り乱した声でそれを否定した。
「生き返るなら、いいと思うよ。けど、もう取り返しがつかない。帰ってくるわけがない。
漫画じゃないんだから」男を半ば無視し、少女は首を振った。
「…JOKER MOON…月夜のゲーム……」男が聞き取れないくらい小さな声でつぶやいた。
「ジョーカームーン?月夜のゲーム?何それ?」少女の問いに、男は静かに答えた。
「このゲームに参加すれば、おまえの母親は生き返るかもしれない」
暗闇にしばらく沈黙が訪れた。




