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SSSゲーム  作者: 和猫
高校二年編
85/113

猫の迷走

「大体試合に何の関係も無いお前が玉を奪ってどうするつもりだよ、そんなんでうまいこと両者失格にできるとでも思ってんのか?」

「確かに私は試合出場者ではない、だからこそ私が玉を奪った所で玉の所有者はチーム猫のままですよ。玉の数は五対五、何の問題もないと思いますが?」


 全く悪びれする様子も見せず堂々と言いやるメットの男、何て憎たらしい……


「忘れてないか?ナオ達の玉を奪った所で俺たちだって玉も持ってるんだ。この玉をナオ達に渡せば引き分けではなくナオ達の勝ちになる。残念だったな、お前の目論見はそれで終わりだ」


 そうか、玉を無関係な奴に奪われたとしても試合に関係は無い。俺たちが玉を持っている事になるならタケシ達の玉を奪えば俺達の勝ちだ。

 しかし、それを聞きメットの男が笑い出す。


「くっくっく、確かにそうしたらチーム猫の勝ちですね。それをするなら私は邪魔をしませんよ。その横たわっているシンゴさんか前の試合のせいでロクに動く事も出来ないナオさんに玉を渡すと良い」

「くっ……」


 顔をしかめるタケシ。プライドの問題だ、俺達は本気でやり合った、その結果が今だ。

それを忘れて玉を渡す行為は相手に花を持たせるのと同じ意味。俺達は友達関係ではあるが手加減などした事が無い、俺だってそんなお情けで勝ちを譲られるのはゴメンだ……

 コイツは俺達の心情をも理解し、今回の作戦を立てたのか。


「くそ、ナオ!シンゴ!今から試合再開するぞ、二人まとめて掛かって来い。そんで俺を倒して見せろ!こんな陰険ヤローの言うとおりに事を運ばせてなるもんかよ」


 タケシが俺に向かって怒鳴り散らす、俺だって同じ気持ちだ……こんなムカつく事は無い、だが体が言う事を効かない、シンゴも倒れたままだ。この状態でタケシ達に勝つなんて……


「……ならばテメーだけでも仕留める、何もかも巧く行くなんて思うなよ!」


 タケシが俺の表情を見て全てを察知し戦うのは無理だと理解したのか、メット男に飛び掛る。


「残念だがここまで全て想定内、話していたお陰でユイ君達を逃がす時間も試合終了までの時間も稼げた。そしてここから逃げ出す算段も出来ている」


 パンパンパン!

 急に破裂音が響く、余りの騒音に耳がキーンとする。これは爆竹か?マントの下でそんな仕掛けを……そして俺の方に飛び込んでくる。

 急に間合いを詰められ戸惑う俺の鳩尾を蹴り飛ばし、倒れた上を飛び越えられた。

更にまたがれた瞬間にパラパラと何かが降ってきた。

 パパパパンパパン!


「ふぎゃああぁぁぁ」


 倒されはしたが蹴り自体に然程ダメージは無かった、しかしまたがれたと同時に爆竹を巻かれたのだ。

こいつ最初から動きの鈍い俺を穴だと見越して突破する事にしてたんだ。

 タケシ達が何かを言っているが何も聞こえなずキーンと耳鳴りだけが響く、後ろを振り返ると観客に紛れたメット男は既に姿を隠していた。

 ……ちくしょう、完璧にやられた。しかも俺がみんなの足を引っ張る形になるなんて。

屈辱だ。

 そこで携帯電話が振るえ試合終了の告知が流れた。音は聞こえないがタケシも携帯を受け取っている、同じ内容が流れているのはずだ。


「な……何という事でしょう、去年の覇者の猫の面々がたった一人の乱入者に良い様にやられてしまいました。しかもチーム猫のユイ選手とサトシ選手が裏切ってしまったのでしょうか?こんな結末誰が予想できたでしょう、優勝候補の二チームが引き分けによる両チーム失格。なんとも歯切れの悪い結末を迎えてしまいました」


 ミッキーの実況が微かに聞こえてくる、そして観客のざわついた雰囲気……


「平気ですか?」


 ヒロシが俺に声をかけ手を差し伸べてくれた。それに捕まり体を起こす。


「何者ですかね……ナオさんは心当たりありますか?」

「ん……」


 ヒロシが奥歯にモノが挟まった言い方をしながら見つめてくる、俺も曖昧な言葉しか返せないでいるが心の中にはある思いが渦巻いている。

 あの人を喰った言い方にやり方、俺達の心の中までも読んだかの様な作戦。あの声、あの動き……

 あいつはカズだ。だとしたら何で俺達の敵になるような真似をしたんだ。本当にジャッジメントになったてのかよ……



 試合が終わり俺達は近くのコンビニで暖かいコーヒーを飲みながら足を休めた。

シンゴも目を覚まし、マサミチも動けるまで回復はした。だが皆暗い雰囲気だ。


「あの野郎裏切りやがって、絶対に許せねぇ」


 缶コーヒーを飲みながらタケシが隣にあった看板を蹴り飛ばす。


「裏切りか、そんな迷いのある戦いには見えなかったんだけどな」


 タケシとは対照的に落ち着きながらコーヒーを啜るマサトシ。そうだな、あいつ等も裏切ったんだよな。一体どんな理由で……


「少なくとも二回戦まではそんな様子は無かった。あのメットと関わったのは今日の試合からだろうな。両者引き分けにするのが目的でも何でも、最初からユイ達がいなければ出場すらも出来なかったんだ」


 そうだな、思えば誘われたのもユイからだったっけ。虚ろにユイとチームを組んだ事を思い出しているとタケシが激昂して話し出す。


「そっちじゃねーよ、俺が言ってるのはあのメットの方だ」


 皆沈黙し、タケシの言葉の続きを待つ。


「アイツはカズだろ?俺達が必死になってアイツの居所を知ろうとしてたのに、当の本人はのうのうとジャッジメントの一員になってましたってか。ふざけんな!」


 また同じ看板を蹴り飛ばす、今度は倒れ夜の闇に倒れた看板の音が響き渡る。


「やっぱりそう思いますか」

「そうに決まってるだろ、アイツ以外にユイ達に言う事聞かせられる奴がいるか」


 その通りだな、脅されて言う事を聞かされているよりも、カズに言われて裏切ったの方が可能性が高い気がする。ユイ達も馬鹿じゃない、そう何度も人質に取られる事も無いだろうし、そんな事があれば一言くらい相談してくれるだろう。


「とにかく、俺はあいつに一発入れてやらねーと気が済まねぇ。もう一度参加して今度はジャッジメントの所まで登りつめて堂々とぶん殴ってやる……ヒロシ、マサトシ、マサミっちゃん構わねぇよな?」


 三人とも頷く、ブレない奴だな。目標はカズの居所を探るためだったの今度はアイツをぶん殴る為にゲームに参加するのか。


「ナオ達はどうする?ユイ達が居なくなっちゃ出場も出来ないだろ、良かったらどっちか一人ならうちのチームに空きあるぞ」


 タケシの申し出にシンゴと顔を合わせる。


「いや、少し辞めておくよ。今回のゲームで体に無理が来てるからな、しっかり休んで体力戻さないと」


 シンゴも俺も少し休憩だと同意した。


「なあ、目的はジャッジメントなんだろ?だったらもうルールを破って奴等を誘き寄せるってのはどうなんだ。単純にメンバー以外の人を集めて試合に参加する。俺はジャッジメントってのと直接の面識は無いけどそれやったら向こうから来てくれるんだろ?」


 マサトシの提案に俺達は顔を曇らせる。


「それは辞めたほうが良いかもしれませんね、そうなったらあの人たちは僕達と敵対する為に現れる。場合によってはとんでもない事になるかもしれません」


 ジャッジメントは強い。特にあのオッサン二人は別格、読んで字の如く大人と子供の差がある。まともにやりあっては勝ち目は薄そうだ。

しかもトシキにイクオ。ついでにカズまでもアッチに居るとなると……

 マサトシは若干納得出来てない雰囲気だがそれ以上は何も言わず口を噤んだ。


「よし、今日は帰るか。ナオあの二人に会ったらちゃんと話聞いとけよ」


 俺は頷きシンゴと共に帰路に着いた。しかしマサトシの言った人数以上の反則、これが次の試合で行われる事をこの時俺は予測もしていなかった。

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