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SSSゲーム  作者: 和猫
高校一年編
60/113

勝つさ

「心配すんな、両者失格にはならねぇよ」

 オロオロする俺達を嘲笑うかのように煙草に火を付けながらトシキが喋りだす。

「……フー、四回戦に出た時点でジャッジメントの選別は終ってる。バトルロイヤル時の特別ルールだ、三チーム以上が出場してる場合は引き分けでも全チーム勝利となる」

 煙を吐き出しながら尚もトシキが付け加えてくれた。

「全チームって事は……」

 俺達の側まで来たカズが既に意識を失っているかぐや姫に目を向ける。

「そいつ等も一応は五回戦に進む権利はあるな、だがもう戦闘不能だ。少なくともニ、三日で戦闘に参加できるコンディションには戻れねぇだろう。それにそのメットを脱がない限りジャッジメントは興味を持たないだろうしな」

興味をもたない?どういう意味だろう。カズはその事には触れずにトシキに更に質問を投げかけた。

「じゃ、トシキさんは?」

「俺はこの四回戦が終った時点で奴等の飼い犬になるしか道は無い、五回戦に出場してジャッジメントと戦う選択をしたらシンヤ達が粛清されちまう。奴等の仲間になるかならないか考えるだけって話だったが、断った瞬間に……だろうな」

 トシキは首を掻っ切るジェスチャーをした。

「ジャッジメントの仲間って事は次の試合でもトシキさんは俺達の敵になるってことですか?」

「そうなるな……」

 マジかよ、次もコイツとやる羽目になるのか?

「おい、何くっちゃべってんだよ?続きしようぜ」

 カズとトシキの会話に業を煮やしたワタルが吠えた。

「っと、忘れてたな。おいワタル、ちっとお前に話がある。付き合えよ」

「あ?この後に及んでお話だぁ?こんなに熱くさせる奴等がより取り見取りのこの状況でそんなもんする気はねぇよ。話があるなら拳でこいや!」

「場合によってはお前の願いが一つ叶うかもしれねぇぞ」

 トシキのその言葉を聴いてワタルが静かになった。

「……話だけは聞いてやろうじゃねぇか」

 ワタルはそう言うとポケットに手を突っ込み、トシキの方に巨体を揺らしながら近付いて行った。

「お前らはこれでジャッジメントからこのゲームの目的を教えられる事になる。胸クソ悪ぃ話聞かされる準備はして置けよ」

 トシキはそう言い残し、ワタルと共に闇に消えていった。本当にワタルの面倒見てくれたな……

「どうせ知る事になるなら今トシキさんが教えてくれりゃいいのにな」

 カズのポツリと言った言葉の後に自動販売機からガシャンと音が響いた。そしてプルタブを開けパシュっと小気味のいい音も後から聞こえた。

「ま、後のお楽しみでもいいさ。とにかく今は休みたい」

 コーラを飲みながらタケシが呟く。本当に疲れているんだろうな、頭から流血して顔が血まみれだ。

「同感だな……意識を保っているのも限界に近い、早く戻ろう」

 エックスもタケシ以上に怪我が酷そうだ、全身傷だらけである。

 その後俺達は皆で支えあうようにカズの家に行き、たどり着いた瞬間に泥のように眠った。



 目が覚めた時は既に夕方の日が差していた、赤い光が窓を照らしている。

「起きたか、そのまま目覚めなかったらどこに捨てようかと悩んでたとこだぞ」

「ん……タケシ達は?」

「一時間ほど前に帰ったよ、風呂入って寝なおすってさ。ヒロシ達に報告はまた明日にしようって事になった」

 こんな時間じゃなぁ……行ってすぐに面会時間終っちゃいそうだ。

「体は平気か?」

 カズの言葉を聞き、腕をぐるぐる回したり腰を捻ってみたりと身体の異常を調べる。

「問題なさそうだ」

 んっと伸びをしながら答える。

「なら二人っきりだし丁度良い。表に出ろよ、相手してくれ」

「へ?」


 まだ起きたばかりで頭がボーっとしている俺を外に連れ出しカズが構える。

「ちょ、ちょっとタンマ。まだ頭が……」

「だからこそ今が良いんだよ、今からナオの長所を教えてやる!」

 問答無用で仕掛けてくるカズ、咄嗟に俺は向かってくる右拳を左に避けながら、右手で後頭部掴み、左手をへその辺りに置いて回転させた。

 勢いが付き過ぎたのか、カズは一回転し巧い具合に着地した。

「お……とっと」

「危ねぇな、急に来るなよ。咄嗟に来られたら手加減も出来ないだろ」

「それだよ」

「それって何が?」

 カズの言ってる事の意味が解らない。

「あのな、ナオって馬鹿だろ?」

 ムカッ、何だいきなり。

「格闘技ってのは本来知識の塊だ、馬鹿には出来ないものなんだよ。しかもその中でも合気道ってのは最強の護身術と言われ日本武道でありなごら、世界では芸術とまで評価されるほどの武術なんだ」

 ふむふむ?

「その知識が無ければ出来ない武術をナオは本能でやってのけてる……合気道いつからやってるっけ?」

「物心ついた頃にはもうやってたな」

「だよな、もう身体に染み込んでるんだよ、だけどつい最近まで合気道を喧嘩に使わなかった。そしてここ最近急に使い出した、それはなんでだ?」

 うーん、使わなかったってより使う機会がなかったんだよな、使うようになったのは何でだろ?

「その顔は忘れてるな、二回戦でM高のラグビー部の先輩とやった時に合気道を始めて実戦で使って、んでその威力を実感してオレって強い?ってなったんだよ」

 言われて見ればあれからか、そう言えば一回戦でトシキと戦った時は合気道のアの字も出てこなかったな。

「こう言っちゃ悪いがあの人は踏み台になるにうってつけの人だった。攻撃方法は単純、そして格闘技経験無し。さらにパワーだけは凄い、合気道でやられる為に存在した人だったな。あんなデカイ人をぶん投げたらそりゃ癖になって合気道をこっちから狙いたくもなるさ」

 なるほどなぁ……言われて見れば最近は戦い方が待ちの戦法になってたもんな、今まで喧嘩で合気道を使わなかったのは俺が攻めていたからって事か。

「だが、合気道を使う事によってお前は弱くなっちまった……実際トシキさんとやってアイキはつかえなかったんじゃないか?」

 コイツどこまで見抜いてるんだよ。確かにトシキ相手には全く巧く行かなかった。

「合気道ってのは女子供がやる護身術、お前みたいにムキムキヤローがする武術じゃないんだよ」

「ええ?ここに来て合気道否定?」

「まぁ落ち着いて聞け。あのな、ナオの強さの秘密はその腕力から繰り出すノウキンパンチと攻撃されたら身体に染み込んだ合気道が勝手に発動する最強の盾と矛だと思ってるんだ」

 おお、最強の盾と矛か。かっこいいじゃないか。

「だから考えるな、ナオの強さは考えないで突っ込んでこそだと思うぞ、最近は何か戦闘の最中にごちゃごちゃ考えすぎてるんじゃないか?」

「あー。そうかも、しかし俺の事良く知ってるんだな、気持ち悪いくらい」

「そりゃ長い付き合いだからな、小学校の時漏らして白いズボン茶色くしたのも知ってるし田んぼにハマッて泣いたのも覚えてるぞ。後は母親の事をママって呼ん……」

「もういい!やめろ!」

 こいつ性質タチ悪すぎる。今色々聞いて少し凄い奴だと思ったけどカズはカズだ。陰険だ。

「次の試合ジャッジメントとの戦いだろ……あのオッサンも出てくるだろうし、その上トシキさんまで。勝てると思うか?」

 フと真面目な顔になったカズが聞いてきた。

 正直絶対勝てるとは言えない。だがそれでも俺の言う言葉は決まっている。

「勝つさ、絶対にな」

 

 その夜、早すぎる五回戦の通知が届いた。期日は明後日、今回に限り場所も告知されていた。


「零時に城山市役所内にて試合を開始します。十分前から正面入り口を開けておきますので速やかに中にお入りくださいませ」

 

 何で市役所?よく解らんが場所指定されちゃ小細工は使えなさそうだな。

 俺は次の日に病院に行き、ヒロシの病室でみんなにこのムネを伝えた。


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