焼肉食い放題な
「んっ!」
俺は思いっきり伸びをした。
長かった入院生活がやっと終わりを迎えたのだ。
入院中も筋トレはしていたが、体が思い通りに動くか軽く屈伸とストレッチをする。
鈍りどころか絶好調、やはり体壊しても筋トレは欠かしちゃいかんな
そのお陰で看護婦さんにはかなり怒られもしたが、その代わり可愛い看護婦さんとも必要以上にお話出来たし全く後悔はしていない
「よし、帰るとするか」
殆どの荷物は親が昨日持って帰ってくれたので軽い手荷物だけである
その手荷物を持った所でドアが開きカズが入って来た
「おう、退院おめでと」
「あんがとよ、でも別に迎えなんか要らないぞ?帰りに寄っていくつもりだったし」
「何気持ち悪い事言ってんだ、誰がそんな気回すかよ。ここに寄ったのはついでだ、シンゴが気が付いたんだ、一緒に行くだろ?」
「本当か!もちろんだ、すぐに行こう」
シンゴの病室はここの上だ、俺達はエレベータに乗りシンゴの病室に向かった
「シンゴ!起きてるか!?」
俺はノックもせずにドアを開けいきなり声をかけた
「お、二人とも無事だったか。結構長い事寝てたらしいな、心配かけさせちまったか?」
いつもと全く変わらずシンゴは笑いながら言った
見て解るほど俺達とは比べ物にならないほどシンゴは重症だ、改めてその姿を見て俺は言葉を詰まらせた
「心配もしたし、礼と謝罪もしたい……シンゴ、ごめん。」
カズが急に頭を下げた、こいつが真面目な顔して人に頭下げるの初めて見たかも……
「おいおい辞めろよ、別にお前のせいじゃない。三人で決めて三人でやった結果だ、痛いのはみんな一緒だろ」
相変わらずシンゴは笑いながら答える
「そんなんじゃない、オレはあの時微かに意識があったんだ。シンゴだけが重症の理由はオレ達を庇いながら最後まで抵抗してたからだろ」
!?!?
知らなかった、早々に気を失った俺は途端に自分が恥ずかしくなった
「シンゴ……そうだったのか……オレ何も知らずに……」
何と言っていいか解らない、不覚にも泣きそうになってきた
「それもひっくるめて辞めろって、俺はやりたいようにやっただけだ。あの時動けたのがお前等でも同じ行動を取ってたはずだろ?たまたま俺の番だったってだけだ」
俺は俯いたまま色んな感情が入り混じり何も言えない。情けないのと悔しいのと嬉しい気持ち、そして俺の友達をこんな目に合わせた奴等への怒りだ
「わかった、じゃあせめてこっちの言葉は受け取ってくれ。シンゴありがとう」
カズが気持ちを切り替えてまた頭を下げる、オレもそれをみて頭を下げた
「んな堅苦しくすんなっての、でも礼は受け取るぜ。退院したら焼肉食い放題な」
「任せとけ、胃が破れるまで食わせてやるよ」
カズの返答を聞いてふとシンゴが真面目な顔になり言った
「それに、どうせまだ続けるつもりなんだろ?」
「ああ、次は五人集めて挑戦するつもりだ、もう油断もない。全力でいってくるよ」
「その答えだけで体張って守った甲斐が有るってもんだ、無理するんじゃねぇぞ」
「心配しなくても賞金はオレとナオの分を三等分するさ、な?」
カズの問いに俺は迷いなく頷く
「当然だ」
「誰もそんな心配してねぇよ」
シンゴはいつもの笑顔に戻った
「んじゃ今からその残りのメンバー三人と会う予定なんだ、そろそろいくよ」
「そっか、俺は暫く動くのは無理そうだ。暇だからまた遊びに来てくれよ」
俺達は片手を挙げ応え部屋を出た
そこから無言でエレベーターに乗り、病院を出た所でカズが言った
「絶対勝つぞ」
「あったりまえだ!やってやるぜぇぇ!!」
俺達は互いの拳を合わせた。と、そこにお世話になった看護婦さんが
「ちょっとナオさん!退院してもですか!いい加減にしてください」
「……ごめんなさい」