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SSSゲーム  作者: 和猫
高校一年編
30/113

誰なんだ

 冬にも関わらず背丈ほどもある赤茶けた草が所狭しと生い茂り、壊れた車が何台も積み重なっている。

きっともう何年も放置されたままなのだろう、人どころか動物も踏み入れてないんじゃないか思えるほどの荒れ果てた廃墟。ここが話のアジトなのだろうか。

 入り口にはくぐる事もまたぐ事も可能な何の防犯にもなっていない鎖が一本だけ掛けられている、俺達三人はは無言でその鎖をまたぎ奥へと進んだ。

 月明かりのみで慎重に進んでいくと廃車と廃車の間から光が見えてきた。どうやらこの土地の真ん中辺りに少し大きめの小屋が建てられているようで、そこから漏れた光のようだ。

 廃車に身を隠しながら小屋の様子を伺う、こんな廃墟にどうやって電気を通わせているのかは解らないが窓の中を見るとストーブらしき物も確認でき、中々過ごしやすそうな印象を受けた。

 小屋から漏れる光の逆光で外に居る人間のシルエットが見える、どうやら外の見張りは二人だけのようだ。

 それを確認するとサトシが右手を俺とユイに見えるように広げ、左手の親指を立て自分自身を指す。

ここで待て、自分が行って来るの合図だろう。俺はサトシの目を見て頷いた。ユイもサトシを見て大きく頷き立ち上がり二人の見張りの前に飛び出した。え?飛び出した?

「僕はS中学生徒会執行部の者だ、リョウコを返してもらいに来た!」

 ユイは迷う事無く正面から向かい、大声で宣言した。えー……今の間違いなく待ってろの合図だろう。サトシを見ると大きくため息を吐き、頭を抱えていた。

「仕方ない。先輩、片方お願いします。俺が先に仕掛けるんで」

 サトシは小声でそう言い残すと俺の返事も待たずにスルスルと廃車を上りはじめた。

「お前が対戦相手の?本当に中坊が相手だったのかよ。シンヤさん別に戻ってこないでやっちまえば良かったのに」

 小屋の前の一人が笑いながら言うともう一人も笑い出す。次の瞬間上からサトシが降ってきて一人を思い切り踏み潰した。

 早っ、車上り始めてから一分も経ってないのにもう相手の頭上に陣取っていたのか。流石カズの弟子だな。身軽な奴だ。

 俺は感心して自分の役割を忘れそうになっていたが、すぐさま思い出し暗闇から走り出す。急に相方が踏み潰されてパニックになっている無防備な顔面を思い切り右ストレートで振りぬいた。

 しかし殴った場所と角度が悪かった、殴った相手は小屋のドアにぶつかり、そのままドアごと部屋の中に吹き飛んだ。


 ガッシャーン……


 確かにダッシュのスピードも乗せて全力でぶん殴ったけどこんな派手な事するつもりは無かったのに。隣を見るとサトシはさっきユイが正面から堂々と自己紹介した時と同じようにため息を吐き頭を抱えていた。

「ナオ先輩、ここは僕にやらせてくださいよ」

 ユイが俺の肩を掴み困った様な顔で見つめてくる。

「あー、その方がまだマシだったかもな」

 サトシは相変わらず頭を抱えながら呟いた。

 すると小屋の中から声が聞こえてきた。

「来るとは思っていたが一応ここは天下のキゾク様のアジトだぞ。こんな派手な殴りこみされたのは初めてだな、まぁとにかく入れよ」

 それを聞くとユイは俺を押しのけるようにして中に入り、俺とサトシも後に続いた。

 中はちょっと大き目の教室くらいの広さだ、入って左側には少し高台になった畳スペースがあり、その上に赤髪とフードとトモノリが居た。真ん中には昔この工場で使っていたのであろう見た事もない機械がドンと置かれている。

 その真ん中の機械にもたれる様にトシキが立っていた、その奥にはカズ。カズの背中に隠れるようにリョウコちゃん。

 そして壁際にはずらっとキゾクのメンバーと思しき奴等が並んでいている。二十人近くはいる……

「ユイ!」

「リョウコ」

 二人が互いの姿を確認し、名前を呼び合う。ユイが駆け寄ろうとしたがそこでフードのイクオが待ったを掛けた。

「待っていましたよユイ君でしたっけ?ですが感動のご対面はそこまでです、それ以上一歩でも動いたら彼女さんの身の安全は保障しませんよ?」

 どういう事だ?確かに大人数に囲まれてはいるがリョウコちゃんの前にはカズも居る。協力してくれるか解らないがトシキだって居る。この状況で人質が自分の手の内に有るような口ぶりはおかしい気がするが……

「なんだと?リョウコの前にはカズさんがいる、この距離で僕達がリョウコに辿りつく前にあの人を一瞬で倒せるとでも?リョウコの安全が確認できた以上、貴様等全員この場で叩き伏せる。覚悟しろ」

 ユイの疑問は最もである、この部屋の中はせいぜい十メートル。障害物を迂回しても二十秒も掛からずに辿り付ける。余裕ぶってこの小屋に迎え入れた時点で人質を盾にする作戦はもう通用しない。後はこの人数相手に勝てるかどうかの心配だけだ。

「そうですね、君達にもわかり易い様に見せて上げますよ」

 そう言うとイクオは指をパチッと鳴らした、それに反応して壁際に並んだキゾクメンバー達がそれぞれ手にもった武器を見せびらかす。ナイフや鉄パイプ、ペンチや鉄アレイまで持っている奴がいる。

 それに反応してカズが構えを取る。

「動くなよ、ユイ」

 それを見て走り出そうとするユイをサトシが肩を掴み抑える。

「理解できたようですね。理想は奪い返して手元に貴方の彼女を置いておく事でしたが、そこの人……カズさんって言うんですか?その人と元総長が暴れてくれましてね。そこまでは出来なかったんですよ。ですが出来ないのなら手段を変えるまでの事。この距離で一斉に武器を投げたらどうなるか解りますよね?一方なら何とかなるかもしれませんが左右と正面の三方向からを一人の人間が受けきれるわけがありません、もしかしたらわが身可愛さに逃げ出すかもしれませんね」

 イクオが可笑しくて堪らないといった様子で語りだす。

「くそ……」

 ユイが固く拳を握りながらイクオを睨みつける。

「この場に居る限り彼女は人質のままですよ、残念でしたね。ハァーッハッハ!……さて、ユイ君。自分の立場を理解したところで貴方の玉をこっちに放り投げてください」

 ユイは言われるがままポケットから玉を取り出しイクオに投げ、それをキャッチするイクオ。

「さっきはいたぶるのに夢中で玉は奪ってませんでしたからね。一個でも貰っておけば時間切れの時に勝つのはこっちです。これでゲームは僕達の勝ち。後は……ユイ君、貴方の手で助けに来てくれたこの人達を始末して貰えますかね?僕達もこんな奴等にいつまでも構ってるほど暇では無いんでお願いしますよ」

「なっ、そんな事出来る訳がないだろうが!」

 ユイが怒りをあらわに叫びだす。

「しないならしないでも構いませんよ」

 イクオが右手を上げ指示を出そうとした。

「待て!ユイ良いから言う事を聞いておけ。まずは俺からやるんだ」

 サトシはそう言うとユイを見つめ頷いた。

「おい、イクオちょっと待て。そのナオってのは俺にやらせろ。元とは言えキゾクの総長に泥付けた奴は俺がけじめつけねーとな」

 ニヤニヤ笑いながら俺の方に近付いてくる赤髪。

「それじゃカズは同級生の縁だし俺が相手してやるよ」

 無抵抗と解ってトモノリが急に元気を出し始めた、本当に小物だな。

「やめろ、やるなら僕をやれ!」

 俺の方に近付いてくる赤髪の胸倉を掴みユイが叫ぶ。

「いてーな、何だこの手は?反抗か?おい、イクオ……」


 ガシャン


 突如ガラスの割れる音、そしてそこには見知らぬ男が立っていた。

「いかんな、これはいかんよチーム猫の諸君。あ、ここにはチーム猫がニチームいるんだっけ?ややこしいな、じゃあ君たちは偽猫って事で」

 ガラスを破り突入し、ついでにその場に居るキゾクのメンバーを二人蹴り飛ばし見知らぬ男はイクオを見据えそう言い放った。

男はそこそこのオッサンだ、ジーンズにトレーナーのどこにでもいる格好をした普通の不精髭のおっさんだ。しかし普通ではないその眼光はハッキリと自分が只者ではない事を表して居るようだった。

 誰なんだ。

 

 

とある作家さんのエッセを読んで少し書き方を変えてみました。

これからも少しづつでも精進して行こうと思っています、何とか完結に向けて頑張りますので読んでくださってる方が居ましたらこれからも何卒宜しくお願いします。

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