そろそろ時間だな
「玉ってのはこれか」
「こんなもん発信機あっても、少し見えにくく隠しておけば見つからないんじゃね?」
大きさは卵程度、確かにこんなに小さければいくらでも隠し様がありそうに思える
「発信機は開始時間になったら自動で電源入るらしいな」
「開始時間は0時、後三十分くらいか」
俺達は玉を持ち近くの公園にいた
一応何が起こるかわからないので、広い所にいようとなったのだ
「後はこれだな、三人の参加になりますので優勝賞金は三百万円になります。ご健闘をお祈りしております」
俺は玉と一緒に同封された手紙を見ながら言った
「しくじったな、一人百万なら適当に後二人捕まえてくるべきだったよな」
「だな、登録メンバー変更も出来ないらしいし、もう少しホームページに丁寧に書いて欲しかったよな」
「だけど、一人百万て書いてあったら、こんな話に乗らなかったかもな。怪し過ぎて」
カズがボソっと言った
「なんだよ、お前が言い出したくせにビビッてるのかよ」
「ああ、ビビッてるな。正直マジで始まるとは考えてなかったよ」
不吉だ、こいつは昔から勘が良くたまに予言のような事も言い出しやがる
シンゴもそれを知っているせいか口をつぐんだ
空気が重くなったのを感じたのか急にカズがいつもの調子に戻り
「ま、今更ビクビクしても仕方ないか。それにオレ達なら誰が相手でもそう簡単にはやられないだろ」
カズの自信の根拠は俺達の格闘技経験の事だろう。
シンゴは柔道でかなりの腕前を持ち高校柔道ではかなりの有名人である
カズにしてもおちゃらけた態度をしているが空手の全日本に出場経験があるくらいだ
俺だってガキの頃から合気道を習っていた、俺の場合は喧嘩の方が慣れているかもだが
「さて、そろそろ時間だな」
「ああ、後十秒、九、八……」
三人が背中合わせになり前を見つめた
「一、ゼロ!」
その途端俺の携帯が鳴りだす
思わぬ所からの不意打ちの音で三人共ビビって飛び跳ねる
「何だよ!バイブにしとけよ!」
「あー、びっくりした……」
そんな事言われても俺だって驚いたのだ
自分の携帯とはいえ被害者である
しかしこんな夜中に誰だろうか、携帯を取り出してみた……非通知?
俺の携帯に非通知でかけてくる奴に思い当たる節はないのだが、いやいやながら電話に出てみる
「もしもし?」
「おめでとうございます、チーム猫様。相手チームが城山町に到着していない為、一回戦不戦勝で勝利となりました」
変声機でも使って居るのだろう、刑事ドラマの誘拐犯の声が聞こえる
「何か不戦勝らしいよ」
「かなり緊張してたのに、拍子抜けだな」
「でも、これで後四回勝てば優勝か。行けそうな気がしてきたぞ」
俺達は何もしていない実感のない勝利を祝いあったのだった