ここのコンビニ十一時で閉まらないのか
「しかしナオさんが無事で安心しましたよ、本当にトシキって人に闇討ちされたんじゃないかとユタカさんやタケシさんと学校で話してたんですよ」
トシキとの試合が終わった次の日の夜中の二時、場所はいつもの公園である。
ヒロシは昨日のダメージが抜けていない俺に対して、痛みと疲労を思い出させる一言を言い放った。恐らく悪気は無いのだろうが……
「あー、そうだな。巻き込まれたくないしオレもなるべくナオと一緒に居る時間減らそう」
カズは友達とは思えない言葉でトドメを刺してくる。コイツは悪気あるな。よし、学校以外でもなるべくカズと一緒に過ごして絶対に巻き込んでやろう。俺は心に誓った。
「しかし連日で試合はきついな、勝っても負けても疲労感が貯まっていくばかりで、いつか潰れちまいそうだ」
タケシは眠そうに地面に座り、うなだれながらそう言った。
「そうだよな、寝不足だけでも体調不良になっちゃいそうだよ」
これはユタカ、今日はミスターエックスにならずに直接公園に来たようだ。
「今日の対戦相手はチーム姫だったっけ?弱そうだけどそう簡単にはいかないんだろうな」
「ん、まぁ始まってみれば何とかなるもんだ。もう時間だろ?気合い入れ直そうぜ」
そう言いながらカズがタケシの肩に手を掛けた。
それとほぼ同時にいつもの発信機の音が鳴り響いた。その音の鳴る発信機を見ながらカズが「んん?」と妙な声を出す。
「どした?」
四人ともカズのみる発信機を見つめる。俺達の反応は何時もの様に真ん中に五つ、そしてそれを囲むようにほぼ均等に離れて五つの反応。
「これは五人とも別れて一人づつかかってこいとか、そういうことか?」
「そうかもしれないけど、こんなのに合わせてタイマンする事もないだろう。五人で一つを取って時間切れまで待てばそれで終わりだ」
タケシとカズが発信機を見ながら分析を始めた。
「でも何かの罠が仕掛けてあって取りに行った一つを取れなかったら、それで終わっちゃいますよ。いくら何でもこの発信機の端から端まで移動してたら二時間じゃ間に合いません」
確かにそうだ、広い町じゃないとはいえ町外れから行ったり来たりしてたら試合時間の二時間なんてあっと言う間だろう。
「仕方ない、ちょっと危険かもだけど二人と三人で別れよう。こっちはオレとナオとタケシで行こう。ヒロシとユタは西側を頼むよ」
「解りました、急いだ方が良いですね。早速行ってきます」
「発信機はオレ達が持っていくよ、三人で確実に一個は取りたい。ヒロシ達は無理はせず罠だったら逃げろよ。取られない事を第一に考えてくれ」
「解ってますよ。動かれたらどうしようもないけど、大体の位置は覚えました。それじゃまた後で」
そう言うとヒロシとユタカは自転車に乗って闇に消えて行った。
「よし、俺たちも行こうぜ。こっちは市民プールの方か?街のど真ん中だな。コンビニとかもあるし、こんな場所で喧嘩できんのかな」
「あ、ここのコンビニは十一時で閉まらないのか。この辺も都会になってきたな」
タケシの発言に対して何か切ない返しをするカズ。悲しいからあんまり言うなよ。都会って二十四時間が当たり前なんだぞ……
そして俺達も自転車に乗り二十四時間営業になったコンビニに向かった