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SSSゲーム  作者: 和猫
高校二年編
111/113

猫と黒幕

「私の……勝ちだ」


「ま、何にせよ……借りは返したぜ」


「八ッ……ハッ……ざまぁ……見やがれ」


「二勝一敗、文句ねぇよな。俺の勝ちだ」


 四人がそれぞれ勝ち名乗りを上げると同時にその場に大の字になって寝転がった。エックスだけは最初から寝たままだったが。


「さて、君達……これからどうするんだい?俺達ジャッジメントを打ち破り最強の名は名実共に君達のものだ。だがそんな称号あった所で邪魔にしかならんよ?改めて俺達と組む気はないのかい。君達がジャッジメントを名乗り少年犯罪抑制を訴えかけてくれればトシキ君並の発言力となるのだが」


 今負けたばかりにも関わらず合いも変わらずの軽口で話しかけてくるヒデさん、その問いかけに皆首を捻る中、カズが口を開いた。


「ま、元々は百万円に目が眩んでこんなゲームに参加したんだ。バイト代が良いなら考えるけど……」

「勿論良いよ、高校生のバイトじゃ考えられないくらいにね。オジサンここの給料で食ってんだから」


 ヒデさんがカズの問いかけに答えるがカズはまだ続きがあると言わんばかりに片手を前に出しそれを制する。


「けど……だ、まずはその上司に会ってみないとな。居るんでしょ?この上に」


 カズが上を指差す、市役所の最上階……市長がそこにいる。


「僕はここで休憩させて貰いますね、足折れちゃってますし」

「同じくだ。腕折ったせいでダルイんで」


 ユイとサトシが座り込んだままヒラヒラと手を振る。


「ま、行って来ると良いわぃ。どんな人間か自分の目で確かめんとのぅ」


 カツマもムクッと起き上がり首をコキコキと鳴らした。


「よし、そうと決まればとっとと行ってみるか」


 俺がへたり込んだみんなに発破を掛けた。するといつの間にか意識を取り戻したトシキが口を開いた。


「それが良い、とっとと言って来い。時間が無いんだ。そんでとっとと戻って来い。お前らの力が必要だ」


 ???

良くは解らないがトシキの言葉を後にし俺達六人はエレベーターに乗り込んだ。


………

………

………


「さてさて、どんな奴かな?」

「ポスターで顔くらいは見たこと有りますがどんな人物かまでは解りかねますね」


 エレベーターの中タケシとヒロシがまるで新しい服を買いに行くかの様なテンションで会話している。


「こんなゲームを考えるんだ、まともな人間とは思えんな」

「だが逆にこんなゲームを考えて実現させるだけの行動力があるとも言えるな」


 エックスはあまり良い印象を持っていないようだ、それとは逆にシンゴは高評価なのか?


「ま、会って見りゃ解る。ソンケーに値する人間ならバイトさせて頂きましょうかね」


 この感じのカズは絶対にそんな気は無いのに言ってる顔だ。悪い顔してる。

そうこう言っている間にエレベーターの表示が八階を指す。最上階だ。

 エレベーターを降りると扉がたった一つ……無遠慮にカズがその重苦しい扉を蹴り飛ばした。


「お邪魔しますよー」


 静まり返った部屋にドアを蹴り破った音が響き渡る、部屋の中にはたった一つの椅子と机、そして何台ものテレビが置いてある。どうやらこのフロア全部が一部屋で隠しカメラの監視を行っている様だ。


「歓迎しようチーム路地裏猫アレーキャットの皆さん。さて、早速ですが商談に入りましょうか。君達の暴力と呼ばれる力は社会に出ては全くの無意味な力です。それを私が有効利用してあげようとしているのです。無論それなりの報酬もお渡ししよう……どうかね、断る理由は無いとおもうが?」


 男の癖にキンキンと耳に残る甲高い声だ、これだけで癇に障ると言うのに徹底した上から目線。とてもじゃないが仲良くはやっていけそうに無い。


「キサマ金をチラつかせてこんなゲームを企てて置きながら何だその態度は……」

「ムカつくね、オッサン」


 エックスとタケシが前ににじり寄る。しかし、それを見ても市長は慌てる様子は見せずに寧ろ椅子にふんぞり返った。


「先ほども言ったはずだが。暴力と呼ばれる力は社会に出てからは全く意味の無いものだ。監視カメラは当然ここも映している。深夜の市役所に忍び込み市長である私に暴行を加えた悪漢……どこの少年刑務所に送られたいのか希望があるなら聞いておこう」


 こ、この野郎。なんてムカつく奴だ。


「なるほど。市長さん、アンタのやり口は解ったよ。実際の所ヒデさんやカツマさん並の実力者だったらどうしようかと考えていたんだけど……どうやらそういう事は無さそうですね」


 カズだ、こうなったらコイツに頼るしかない。


「肉体労働は相応の者に任せてある、私は私の仕事をするだけだよ」

「その仕事なんですけどね、何でこんな回りくどい事を考え付いたんです?政治家なら政治家らしくヤクザでも飼ってれば良いじゃないですか。何でガキ共集めて愚連隊なんか作ろうと考えたんです?」


 この言葉に今まで飄々としていた市長の顔が一瞬曇った。


「当然私も政治家端くれだ、ヤクザとの繋がりも人並みにあるさ……だがな奴等は飼ってやった恩を忘れ私に噛み付こうとしやがる!それが許せんのだよ!暴力で人を脅す事しか出来んゴミ共が!」


 急に人が変わったかのように叫びだす市長。それに対して冷ややかにカズが話を続ける。


「なるほど、そう言えば数年前市長に暴行を加えた人間が居ましたね、刑務所送りになったそうですが」

「ああ、送ってやったさ!私に対して暴力を振るったゴミ共をな!有りもしない薬のでっち上げで数十年刑を増やしてやったよ!けひゃひゃひゃひゃ!ゴミ共が!身の程を弁えないからだ!」


 さっきまでの余裕は何処へやら、よだれを垂らしながらけひゃけひゃと笑い続ける市長。


「なるほど、読めましたよ……つまり少年犯罪抑制は仮の目的。本当の狙いは……」

「そうだ、ヤクザ共を撲滅してやるんだ!私の作った私兵団でな!」


 うわー……とんでもねぇな、良いバイトと思って雇われてたら行く行くはヤクザと喧嘩させられてたのかよ。


「よし、こんなもんかな」


 カズが携帯をポケットに仕舞い込み市長に近付いて行った。


「何だ?私に協力する気が無いのならとっとと帰りたまえ」


 再び椅子に座り込んだ市長はシッシッと犬を追い払うように片手を振った、しかしカズは無表情のままズンズンと間合いを詰める。


「な、なんだ?来るなと言っているんだ!それ以上近付くんじゃないいいいい」


 ガッシャー……ン


「あーあ。やっちゃいましたね」


 ヒロシが頭を抱えた。やっちゃったなぁ……気持ちは解るけど。するとタケシとエックスもカズに駆け寄った。


「おい、ズルいぞ。やるなら俺にも一発殴らせろ」

「私も堪忍袋の緒が切れた!少年刑務所でもどこでも行ってやろうではないか」


 背後で叫ぶ二人を余所に市長ががなり立てる。


「キサマ、この私に暴力を振るうなど!何を考えているんだこの馬鹿ガキめが!許さんぞ、一生後悔させてやる」

「はいはい、良いからこれ見てみ……今のアンタの会話の一部始終だ」

「そ……それがなんだと」

「これをネット動画に晒すとどうなると思う?」


 市長は鼻で笑いカズを見た。


「ふん、何かと思えばそんな手か。警察は丸め込んであるしここの映像記録もある。私の優位はうごかないんだよ!」

「あんたが無意味と見下してる町のヤンキー達。それにいつか潰そうとしているヤクザがあんたを狙う……もうアンタ外歩けねぇぜ」


 カズがニヤリと笑うと市長の顔がサーッと青ざめる。


「ザマーみやがれ、馬鹿市長!」


 タケシがそう言いながら市長を蹴り上げようとするがそれをカズが止めた。


「おいおい、無茶すんなよ。コイツをシメルのはオレに任せておけ。何だかんだ言ってもここの映像は生きてるんだ……少年刑務所ネンショーの方は免れねぇよ」


 カズがそう言うとシンゴが市長の頭を踏みつけた。


「俺も付き合うぜ、また一人で良いカッコして消えるつもりか?そうはさせねっての」


 するとそれを見たタケシも市長の頭に足を乗っける。


「俺も俺も」

「全く……こんなことになってしまうとは。父と母になんて言いましょうか」

「一連托生だな」


 エックスとヒロシまで市長の頭を踏みつけた。


「っとに……お前等馬鹿じゃねーの」


 俺も笑いながら市長の頭を踏みつけた。




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