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META LEGA  作者: WONKA
7/10

怪奇事件簿 ~シャーク・スナッチ~

人物/宇岡初季

場所/永神高校~道楽町西通り~森の奥

解説/初季は部長の説得に成功し、部長は人殺しの難を逃れた。その頃、不可解なひったくり事件が道楽町で相次いで起こる。警察お手上げの事件を四人は、呪われた力を駆使して事件解決を臨む。

いよいよ明日だ。

星野刑事との約束の日が、間近に迫る。

オカルト研究部の部室では、鬱然とした雰囲気が立ち込めていた。

永神温泉の旅行以来、羽若部晴二は自分の行いを悔い改め、部室に戻ってきてくれたことは嬉しかったが、初季と黎司にとって、星野刑事との会合が大きく心に負担した。

数十個にも及ぶ金庫が部室内に散乱していた。

昨日、温泉旅行から学校に帰って来た時、そのどれかに“パンドラの古書”を閉まっておいた。

ダイヤル番号も、この部室にいる初季、黎司、麗香の三人が知っている。

羽若部部長は、自分からパンドラの本の存在を否定し、もう見たくもないらしい。

「気晴らしに怪異事件の話でもしようか?」

羽若部部長は、湿気の籠もった声で言った。

初季は俯いたまま頷いた。

「ここ最近、妙な強奪事件が起きている。所謂(いわゆる)ひったくりってやつさ。だが、被害者は一人も犯人を目撃してない。どうやら犯人は人間じゃないらしいんだ。」

「人間じゃない?」

初季は眉間に皺を寄せて訊いた。

「あぁそうさ。事件のあらましを説明すると、襲われるのは概ねが若い女性だ。それも、一人でいるところを襲われている。場所は全てこの道楽町の西通りだ。」

道楽町というのは、数年前まで繁華街として有名だった街だ。

だが、不景気の波に人口や経済はさらわれ、今となってはゴーストタウンと化した街だ。

「そのゴーストタウンの西通りを通りかかった被害者は背後から襲われ、首の項を鮫の歯で噛まれる。」

「鮫の歯だと?どういうことだ?」

黎司の問いに部長は食いついてきたなという感じに笑った。

「専門家によればノコギリ鮫の歯らしい。犯人は鮫の歯を凶器として使う変質者。というのが大凡の見解だ。襲われた被害者によれば、人の気配は全くなかったらしい。首の後ろに激痛が走った後、被害者の大半が気を失っているから、犯人の姿を目撃した者はいない。」

「じゃぁ、犯人は人間じゃなくて、ノコギリ鮫の幽霊か何かかしら?」

麗香は唇にリップクリームを塗りながら言った。

「だから、警察も手を焼いてるんだ。昼夜張り込みをしているらしいけど、鮫の歯を武器とした変質者なんて、そうそう現れるはずもないからね。」

部長は立ち上がった。

「興味がある者は、ぼくに着いて来てくれ。さぁ、オカルト研究部らしいことをしようじゃないか。これがぼく達の最初の 事件(課題)だ。」


道楽町は、数年前まで繁華街だったとは思えないほど、酷く寂れた廃墟の街だった。

西通りの立ち並ぶビルの廃墟は、動物達の棲家と化している。

こんな場所に何故、人が立ち寄るかというと、この通りが永神駅への最短の近道であるからだ。

だからこそ、朝はサラリーマンやOLがこの道を通って駅へと向かう。

四人は制服姿で道路の真ん中に立っていた。

陽が落ちる前のこの時間帯は、人通りも少ないため、夜の警備の為に警察は切り上げているらしい。

人の気配はここにいる四人だけで、唯一聞こえる音が廃墟のビルを吹き抜ける風の、ゴーッという不気味な音だけだった。

学校を出る前の部長の作戦では、麗香が囮としてヘルメスのバッグを所持して、道路に待機。

部長が透明となり、麗香のすぐ近くで周辺を見張り、その数メートル離れた位置で、初季が部長の視界を盗視して、犯人が万が一出現したとき、黎司が怪力で対抗すると言った感じとなった。

「しかし、この作戦、よく出来てるぜ。全員が最適の役割をもってやがる。部長の頭のキレっぷりは尊敬したいところだが・・・」

廃墟のビルにもたれかかりながら黎司が言った。

「万が一、鮫の幽霊が現れたらどうするんだ?幾ら怪力を持ってる俺でも、幽霊相手に応戦できるかどうか」

「幽霊なんて存在しない。」

初季は固く言い聞かせるように断言した。

「もし、幽霊が犯罪を犯す様になったらこの世界は滅茶苦茶になる。防犯システムも拳銃も警察も手に負えなくなる。だから、鮫の幽霊なんている訳がない。」

「超能力は存在してるってのにな。」

黎司は肩をすくませる。

「超能力と心霊は別だろ」と言って初季は目を閉じてみる。

透明人間の視界が、目の前にいる麗香を映し出している。

麗香は時々部長に話しかけると、警戒して周辺を見回している。

「ねぇ、あれ。犬がこっちを見てる。」

麗香の言葉で、部長は周辺を見回した。

「犬?何処に・・・」

「あなたの後ろ・・・」

部長の視界が振り返る。

だが、視界は足元を素通りする黒い影を一瞬だけ捉えただけで、その直後、麗香の悲鳴が聞こえた。

初季はかっと目を開く。

「まずいことになった・・・!」

黎司に問われる間もなく、初季は駆け出していた。

後ろで黎司が困惑したように何が起きたのか問いただす。


数十秒後に初季が駆けつけると、道端に座り込んだ麗香と、透明を解除した晴二部長の姿があった。

「バッグを盗まれたわ。鮫の歯で引きちぎられたの。」

麗香は、恐怖と悔しさの入り混じった声で、引きちぎられたショルダーバッグの肩掛けの断片を見せた。

「噛まれなかったのが不幸中の幸いだ。あの時、逸早く麗香が気付いていなければ惨事になるところだった。」

晴二は深刻な表情で言った。

「僕が部長の視界を覗いてる時だけど。麗香、君、犬がこっちを見てるって言ったよね?」

初季の問いかけに、麗香はゾッとするように口を手で押さえた。

「私、犬にそんなに詳しくないけど、よく映画やドラマで警察に飼われてた犬よ。黒くて凶暴そうな・・・。」

「ドーベルマンか。」

初季はその犬種の名前に妙な懐かしさを感じた。

入学して間もない時、踏切の向こう側で、女性が肩からよくかけている高級ショルダーバッグを咥えているドーベルマンを目視したことがある。

「それに、あの犬。鮫の歯を入れ歯にしていたわ。一瞬だったけど、ギザギザで大きな歯が見えたの。」

麗香の証言で、何となく事件の全貌が明らかになってきた。

犯行を繰り返していたのは、なんとドーベルマンという犬種の犬で、鮫の入れ歯をしている。

被害者が人間の気配が全く無いと言っていたのは、それだったのだ。

この付近一帯の廃墟は、動物の棲家である為に、犬が一匹いようが誰も怪しまない。

警察ですら、馴染みのあるドーベルマンには、何ら警戒する必要もないわけだ。

「だが、犬が女性の高級バッグを欲しがるわけがない。必ずドーベルマンを操っている飼い主がいるはずだ。犬を使って悪質な強奪を繰り返しているんだ。この手口の良点は、飼い主が手を汚さず、安全地帯で待機できる点だ。ぼくらは犬を追う必要がある。」

晴二は一気に語り終えた。

「だが、あんなに足の速いドーベルマンをどうやって俺達が追えってんだ。」

黎司の言葉に、皆は黙り込んでしまった。

だが、静寂を介して初季が口を開く。

「僕の (盗視)がある」


どんよりとした灰色の空。廃墟のビルから覗く獣の眼。この条件下の環境で気分が晴れ晴れする奴は早々いないだろう。

初季達は、再びドーベルマンが現れる前に、念入りに作戦を練った。

先程の作戦が、麗香にとって切り離せないトラウマとなり、麗香をおとりに使うという案は不採用となった。

「この道を通る通行人に尾行するという形で、ぼくの透明化の能力で、初季とぼくが透明になって、その通行人の後を追う。麗香と黎司は廃墟のビルの屋上からドーベルマンが現れないか監視してくれ。もし現れる様なら・・・これを。」

部長は、制服のポケットから携帯電話二機を取り出した。

コマーシャルで見る様な、テレビやメールし放題という最新機ではなく、大分古い機種の物だった。

「通話専用の携帯さ。マナーモードにしておいてくれ。さもないと通行人に怪しまれるからね」

初季と黎司が其々手に取り、二班に別れる。

初季は周辺を警戒しながら部長の手を握る。

自分の身体が一瞬で透明になっていることが分かった。

「陽が落ちて警察が来る前に、なるべく早く高級ブランドバッグを下げた女性を見つけよう。」

何もない虚空から部長の声だけがした。

すると、道の奥から二人の若い女性が歩いてきた。

その風貌から女子高生であることが見受けられる。

顔ははっきりとは見えなかったが、どちらもそれなりに高そうなバッグを肩に下げていた。

「よし、彼女たちに気づかれない様に後ろに回ろう。」

二人は足早に女子高生の後ろ側へ回り込もうとした。

だが、初季はその女子高生を拝顔してしまった。

二人のうち一人が佐野藍梨だった。

初季は思わず声を漏らしてしまった。

「藍梨、何か今聞こえなかった?」

佐野藍梨の隣を歩く気の強そうな雀斑(そばかす)の目立つ娘が言った。

佐野は首を横に振って気のせいだよと返す。

透明であっても、晴二部長に睨まれているのが嫌というほど感じられた。

初季は、ギュッと部長の手を握って、自分が半透明にでもなってないか用心する。

佐野との距離は僅か数メートル。

初季は心臓の鼓動が早まったのを感じ取った。

気付かれないかどうかのパルスではなく、寧ろ佐野藍梨に近づいているからビートが早まっているようだ。

足音を感づかれない様ゆっくりと二人の女子高生の後ろに回り込む。

「ねぇ、藍梨知ってる?この辺って、気の狂ったひったくり犯が出るらしいよー。」

「え、やめてよ瑠璃子!・・・もし、本当に出たらどうするの?」

「ははっ、出る訳ないじゃんそんなのー。藍梨の怖がりー」

瑠璃子と呼ばれた女子生徒は、度々廊下ですれ違ったことがある。

他クラスなので、直接話したことは無いが、よく佐野と喋りながら廊下を歩いていた。

二人の女子高生の他愛もない会話を聞き流していると、不意に初季のポケットの携帯電話のバイブが振動し、初季は飛び上がりそうになった。

初季は電話に出ることなく指先で携帯の電源を切る。

どうやら、ドーベルマンが現れたようだ。

初季と部長は、後方や廃墟のビルを隅々まで警視する。

その拍子に、前を歩く女子生徒の言動に変化が現れた。

「ねぇ、見て。あの犬怖くない?」

瑠璃子が前方を指さして、愛梨に訊く。

驚いたことに、ドーベルマンは背後からではなく、前方から現れたのだ。

先程、獲物を仕留め損ねた為にいきり立っているのか、将又(はたまた)初季と部長の存在に気が付いているのか。

初季は目を瞑った。

女子高生二人の背中腰から、ドーベルマンを見据える部長の視界。

ドーベルマンを見つめる二人の女子高生の視界。

そして・・・、低位置から女子高生二人をじっと睨み付ける視界。

初季は動物の視界も盗視することが出来ることを確認し、目を開けた。

ドーベルマンと女子生徒の距離は僅か10メートル。

そして、黒き猛犬がウーッと唸り始め、ノコギリ鮫の入れ歯を口内から覗かせる。

「何この犬!しっしっ、あっちいけ!」

瑠璃子が引き攣った顔で、犬を追い払おうとするが、ドーベルマンは一歩ずつ接近した。

ドーベルマンは明らかに敵意剥き出しで、獲物を仕留めようとする眼光だ。

「離すぞ!」

晴二部長がそう言うなり、初季の握っていた手を離す。

そして、部長は目の前を歩く二人の女子生徒の腕を掴んだ。

あっという間の出来事だった。

二人の女子生徒の姿は消え、透明化が解除され、姿を現した初季だけがその場に佇んでいた。

突然の出来事にドーベルマンはたじろいだ。

「やぁ、会いたかったよ」

初季は漸く透明から解き放たれた解放感を味わいながら言った。


黎司と麗香が駆けつけると、部長は透明化を解除した。

黎司がボディーガードのように困惑する女子生徒達を廃墟のビルの方へ誘導させる。

ドーベルマンは唸り続けて、初季を睨み付けたままじりじりと後ずさりする。

そして、踵を返して元来た駅の方角へ駆けて行った。

ここからが正念場だと初季は目を瞑った。

「行くぞ!」

黎司が、初季の身体を軽々と持っていき、背中におぶらせた。

道路を駆ける犬の視界を保持しながら、初季は「真っ直ぐ!」や「右!」「左!」と合図を出す。

流石にドーベルマンのずば抜けた運動能力は、人間を上回るように思えたが、木呂場黎司の潜在能力はそれを凌駕した。地面を蹴りつけるバネ力はとんでもない物で、一歩踏み出すごとにコンクリートが歪むのが初季の身体にも感じられた。

ドーベルマンの視界が時々振り返る度に、初季を背負った黎司が近づいていき、ドーベルマンに追いつこうとしていた。

ドーベルマンの視界はいつかの踏切を横切り、森の中へと飛び込む。

視界は鬱蒼と生い茂った木々を駆け抜ける。

耳音で草木の掠れる音が聞こえ、黎司も同様に森に飛び込むのが感じ取られた。

そして、ドーベルマンの視界の前方は、森の中央に立つ、黒いワンピースを着た女の前で止まった。

「黎司、犯人はこの奥だ!」

初季は目を開いて言った。

「よし、下ろすぞ」

黎司は初季を背中から下ろした。

「俺はやるべきことがある。先に行っててくれ。」

黎司は部長から受け取ったであろう携帯電話をポケットから見せた。


初季は森の奥で立ち止まった。

キャンプ用のテントが森の中にポツンと設置され、その前でドーベルマンと、その飼い主であろう黒いワンピースを着た女が待ち構えていたように立っていた。

初季は、女と犬の前で足を止める。

女の年齢は30代後半くらいと見受けられた。

目を隠すほど大きな麦色のブレード帽。

真っ赤なネイルアートを施した爪。黒いサングラスを着けていた。

「・・・そのサングラス、取ってもらえませんか?」

「何故?」

女は不気味にニタリと笑う。

初季の要請を受け入れてくれないようだ。

「ドーベルマンが貴方の元へ座ったとき、貴方は顔をピクリとも動かさなかった。

それで僕は思ったんだ。本当は貴方は盲目なんじゃないかって。」

本当は違った。

ドーベルマンを盗視した後、犯人の視界も盗視しようとしたが、真っ暗で何も見えなかったのだ。

「そうよ。私は目が見えないの。」

女はサングラスを取った。

焦点の合っていない灰色の瞳の眼球が、グルグルと眼孔を泳いでいた。

「動機は恐らく、目の見える女性への嫉妬。だから貴方は、盲導犬を使って街を歩く女性を襲ってバッグをひったくらせた。何故、ドーベルマンに首の後ろを狙わせたか。簡単だ。首の骨は頸椎。つまり、頸椎損傷は四肢麻痺に繋がらせることが出来る。体が動かなくなったり、一生に渡る障害が出来たり。そう、街を歩く女たちを一瞬で、今の貴方に近づけることが出来る。だから、ドーベルマンに頸椎を損傷させやすくするための鮫の歯を付けさせ、廃墟の道を徘徊させた。」

「その通り。私だけこんな辛い思いをするのは理不尽ですもの。街を歩く女たちの笑い声を訊く度に私は・・・そう、奪ってやりたいと思った。人生をね。あいつらも自由に動けない真っ暗な世界に引きづり込もうと思ったの。私と同じ苦しみを味あわせてやりたかった。」

女は悔しげにそう言った。

「目が見えなくなったのは、10代の時の交通事故の所為よ。」

「犯罪者に同情は出来ない。」

「分かってるわ」

初季は話題を切り替える。

「奪った高級ブランドバッグは戦利品として恐らくそのテントに・・・・」

初季はテントを指さした。

「そうよ。」

女はドーベルマンに向かって何か呟く。

すると、ドーベルマンはテントを歯で食いちぎった。

高級ブランドバッグが雪崩れるように破れたテントから溢れだした。

「だが分からない。どうやってドーベルマンはこの深い森で飼い主の居場所まで的確に足を運べたのか」

「それはこれね」

女は細い管のような金色の笛を取り出した。

「犬笛?・・・そうか、その笛は人間には聞こえず、犬だけに聞こえる特殊な高音波を奏でる笛だ。確かにそれなら簡単に犬を自分の元まで呼び寄せることが出来る。」

「じゃあ次は私から質問。何故私の犬に追いつくことが出来たの?大型犬は陸上競技選手よりも速く走れるのよ?」

この質問にはどう返していいのか分からなかった。

犬の視界を盗み見て犬の逃走経路を監視し、人間最速の男が犬を追っていた、なんていっても到底信じては貰えないだろう。

能力が無ければ、今頃初季の前に立つこの女は完全犯罪を維持できていただろう。

警察がどうこう出来る相手では無いのだ。

「答えは簡単だ。俺達の(おつむ)の方が、アンタよりも一枚上手だったってことだ。」

部長と共に黎司が茂みの中から現れた。

「そうね、私の犯行にボロがあったってことね。」

女は哀しげに笑った。

遠くの方からサイレンの音が木霊した。

「さぁ、後は警察と仲良くやるんだな。」

黎司が携帯電話をポケットに入れ、真摯な口調で言った。

初季はドーベルマンを一瞥する。

ドーベルマンはクーンと声を漏らし、女は犬を優しく撫でていた。

本当にこれでよかったのだろうかと、初季は思った。

女の嫉妬が生み出した、殺傷強奪事件はこれで幕を閉じる。

だが、初季には何とも言い難い後ろめたさがあった。

自分が謎を暴いたせいで、この女は牢獄行きなのだ。

「罪は償わなきゃいけねえ。」

初季の心情を悟ったのか黎司が言った。

三人は森に佇むテントに背を向けて歩き出した。

女が見えなくなったところで、部長が初季と黎司の腕を握る。

三人は透明化し、駆けつける警察を素通りして街に戻った。


森を出た時にはすっかり陽が落ちかけていた。

「あの女子生徒二人は麗香に送ってもらったよ。」

夕焼が街を照らす中での帰り道、晴二部長はそう言った。

「あの二人は夢でも見たと思ってるんだろう。なんにせよ、ぼくらの能力については感づかれていない。」

街中の角を曲がって学校の門まで来る。

「いよいよ明日だぜ。星野刑事は手強い。部長、何かあったらすぐ逃げる準備はしといてください」

黎司は学校をまじまじ見ながら言った。

「分かってる。能力について感付かれたら君達もすぐに逃げるんだ。君達の能力を知ったら警察は是が非でも調査したくなるだろうからね。」

部長はそう言うなり、校内を歩き出した。

初季は暗くなる校舎を背景に、黎司と共に帰路に着いた。



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