全自動 :約1000文字 :発明系 :SF
――ジリリリリ!
いつものようにやたら大きいブザー音で、おれは目を覚ました。まぶたを開けるのとほぼ同時に、身体の下で機械が低く唸り始めた。ベッドがゆっくりと持ち上がり、膝の部分が折れ曲がる。あっという間に椅子の形に変形した。
ドアが開き、配膳ロボットが滑るように部屋に入ってきた。テーブルの前で停止し、朝食を並べていく。
配置を終え、ロボットが部屋を出ていくと今度は天井から細いアームが何本も降りてきた。ゆらりと揺れながら、位置を確かめるように先端をおれの顔と食事に交互に向ける。
パンに牛乳にスープ。こちらが手を使う必要は一切ない。アームの一本がパンをちぎり、別の一本が器用にスプーンでスープをすくい上げた。寸分の狂いもなく、おれの口元へと運ばれてくる。おれはただ口を開けているだけでいい。それだけですべて済むのだ。
最近では、一般家庭でもこうした設備が増えているらしい。高齢化社会への対応というやつだ。実に楽な世の中になったものだ。
朝食を食べ終えると、アームが濡れタオルで口元を拭った。次は歯磨きだ。ベッド――今は椅子だが――がわずかに後ろへ傾き、顔が自然と上を向いた。口に歯ブラシを差し込まれ、一定のリズムで歯列をなぞられていく。最後にうがい用の水が口内に流し込まれ、すぐさま吸引された。毎回、このときは歯医者にでもいる気分になる。
歯磨きが終わると、ベッドは再び椅子へと姿勢を戻し、そのまま静かに動き出した。
このベッドの下部には車輪が組み込まれており、座ったまま移動できる仕組みになっている。天気のいい日には、このまま外に出て日光浴だ。
自動ドアが開き、廊下に出た。そのまますべるように進んでいく。
さて、その間にもうひと眠りしようか。
しかし、まったく便利な世の中になったものだ。もともとは富裕層の老人ホーム向けに開発されたものらしい。それが今ではここまで普及しているとは。こんな時代が来るなど、いったい誰が予想できただろう。SF作家くらいのものだろうか。
おれは誰にも気づかれないように小さく笑い、そっとまぶたを閉じた。
――ん?
どれくらい眠っていたのか。
目を覚ますと、首に妙な違和感を覚えた。ざらりとした感触が皮膚に食い込み、じわじわと圧迫してくる。これのせいで目が覚めたのか。……いや、これはなんだ? 何かが巻かれている?
……縄? ああ、まさか、まさか……!
「た、頼む、やめてくれ! 誰か! 誰かー!」
叫んだ瞬間、ベッドがゆっくりとせり上がり始めた。膝の部分が引っ込み、背もたれが垂直に近づいていく。耳元のスピーカーから、低くくぐもったお経のような音声が流れ始めた。
身体が下へ滑る。重力に引かれるままに。
首が絞まる。
肺が軋み、声が喉の奥で潰れた。視界が狭まっていく。
絞まる。
絞まる。
きつく。
きつく。
ああ……せめて処刑は人の手でやってくれ――。




