第九話「鬼神降臨」
軍用飛空艇の腹部が開き、法力アーマーが次々と投下された。
パラシュートを展開することなく、そのまま地面に激突する5メートルの巨体たち。着地の衝撃で地面に亀裂が走るが、機体には傷一つない。
「ブレイド、展開完了」
通信機から報告が入る。12機の新型アーマーが、テロリストたちを包囲した。
そして最後に、一人の男が飛空艇から跳び下りた。
メルベル・イシュタル。
黒い装甲が腕と脚を覆っている。アーティカルアーム——法力を増幅する特殊装備。彼の300という法力測定値を、さらに倍加させる恐ろしい兵器だ。
着地の瞬間、地面が砕けた。
「始まるぞ」
メルベルの低い声が、戦場に響いた。
共和主義者たちの法力アーマー8機が迎え撃つ。改造機とはいえ、テロリストたちも命がけだ。
「帝国軍大元帥メルベル・イシュタルだ!」
敵の一人が叫んだ。
「鬼神が来やがった!」
しかし、逃げる場所はない。
戦闘開始。
メルベルは地面を蹴った。アーティカルアームが法力を増幅し、人間離れした跳躍力を生み出す。一跳びで50メートルを移動し、敵の1号機に肉薄した。
「ぬん!」
メルベルの右腕が、5メートルの法力アーマーの胸部装甲を素手で貫通した。内部の法石炉が爆発し、機体が火柱と化す。
鬼の表情で敵を見据える。赤い瞳が殺意に燃えていた。
他の敵機がミサイルを撃ち込んでくる。爆発の中から、無傷のメルベルが現れた。黒い装甲が煙を払い、その顔には凶暴な笑みが浮かんでいる。
「だりゃあ!」
2号機に向かって駆け出す。アーティカルアームの脚部装甲が地面に深い足跡を刻んだ。
敵機が格闘戦を挑んでくるが、メルベルは軽々と避けた。そして、機体の頭部を掴み、力任せにねじり取った。
「らあああ!」
鬼神の名に恥じない殺戮ぶりだった。戦闘への狂気じみた喜びが、その表情に現れている。
ブレイド部隊も参戦していたが、メルベル一人で敵の半数を片付けていた。
「逃げろ!」
残った敵機が撤退を開始した。しかし、メルベルは追撃を止めない。
跳躍し、空中で敵機に取り付く。そのまま地面に叩きつけ、装甲を握り潰した。
「全機撃破」
10分足らずで、戦闘は終了していた。
メルベルは周囲を見回した。演説会場には、部下たちの亡骸が散らばっている。ゴーティス上等兵の死体も見つけた。
「ラムザは......」
B地点を確認する。誰もいない。
「どういうことだ」
メルベルは眉をひそめた。回収地点に来ていない。何か理由があったのか。それとも......
「5号機はどこだ!」
部下に命令した。
「空港にありました!」
報告が返ってくる。
「空港?なぜそこに......」
メルベルは空港に向かった。放置された5号機を確認する。
周囲を調べると、破壊された敵機3機の残骸があった。
「5号機で戦闘を行った形跡......」
メルベルは理解した。ゴーティスが戦死し、別の誰かが機体を操縦してラムザを救出した。そして、空港から飛び立った。
「空港の出入記録を調べろ!」
部下たちが散っていく。
30分後、報告が上がった。
「雷牙号という輸送船が、テロ発生後に離脱しています」
「雷牙号......」
メルベルはその名前を記憶した。航空連盟所属の、いわくつきの船だ。
「追跡しろ。帝国全域の検問に指示を出せ。その船を止めろ」
「了解」
メルベルは空を見上げた。どこかで、ラムザがあの怪しい船に乗っている。
「待ってろ、ラムザ。兄さんが迎えに行く」




