第八話「違法船の掟」
雷牙号の船内に足を踏み入れた瞬間、ラムザは顔をしかめた。
壁際に積まれた木箱から、明らかに法石銃の銃身が覗いている。別の箱には、帝国では禁制品の麻薬らしき結晶が見える。偽造証明書の束、密造法石、盗品らしき装身具。
『とんでもないところに来てしまった』
苦い表情を隠せない。皇族の身で、このような違法船に乗るなど......
一方、ニーナは目を輝かせて船内を見回していた。孤児院と軍隊しか知らない彼女にとって、全てが物珍しかった。
「おい」
ラムザが小声で注意した。
「堂々としてろ。田舎者丸出しだ」
「すみません」
ニーナは慌てて表情を引き締めた。
雷牙号のエンジンが轟音を響かせ、空港から離脱していく。下を見ると、共和主義者たちが悔しそうに見上げていた。
「よし、とりあえず窮地は脱したな」
ガランが船橋から降りてきた。
「お前ら、部屋を用意してやる」
船員の一人を呼び、下っ端の船室を空けさせた。狭い部屋だが、二人には十分だった。
「それで、エリドゥまでどのくらいかかるんですか?」
ラムザが聞いた。
「ああ、それなんだが」
ガランは困った顔をした。
「直行するわけにはいかない。いくつか経由して移動することになる」
「なぜですか?」
ラムザの声が厳しくなった。皇族として、理由のない遅延は受け入れがたい。
「荷物の都合だ」
ガランは船倉を指した。
「時間通りに届かないと、俺たちが大変なことになる。契約ってもんがあるんでな」
「しかし、僕たちは急いでいるんです」
「わかってる。でも、この船では俺がルールだ。船長の命令が絶対なんだよ」
ガランは腕を組んだ。
「嫌なら、他の船を探せばいい。もっとも、今の状況じゃ他に選択肢はないがな」
ラムザは歯噛みした。確かに、今は選択の余地がない。
「......分かりました。でも、できるだけ急いでください」
「了解だ、ライネル坊ちゃん」
ガランは皮肉っぽく笑った。
二人が船室に向かった後、ガランは船員の一人に耳打ちした。
「あの二人、見張っとけ。何かきな臭い」
「商人の子供でしょ?」
「商人の子供があんな戦闘ができるか?それに、あの少年の立ち振る舞い......貴族のそれだ」
「あー、確かに服がね、仕立てが普通じゃないっすよね」
「わかる!」
ガランは慎重だった。長年の密輸業で培った嗅覚が、危険を察知している。
「まあ、金は確実にもらうがな」
空の彼方に、エリドゥの方角が見えた。しかし、まっすぐには帰れない。
雷牙号は、違法荷物と共に、謎の乗客を乗せて飛び続けた。




