第六話「高台の決断」
高台から見下ろす空港は、地獄絵図だった。
「あれは......」
ニーナは息を呑んだ。5メートルのアーマーから見える景色でも、惨状は明らかだった。
滑走路に並ぶ民間の飛空艇が、ほとんど共和主義者の手に落ちている。白い旗を振る船員たち、機体に群がるテロリストたち。空港施設からは黒煙が上がっている。
「あの船だけだな」
ラムザがコックピット内で呟いた。視線の先には、一隻だけ抵抗を続ける輸送船があった。船体には「雷牙号」という文字が読める。
「あれに乗るしかなさそうだな」
「船の周りの敵を蹴散らして、強行突破するしかありませんね」
ニーナも同意した。他に選択肢はない。
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雷牙号の船橋では、銃声が響き続けていた。
「船長!もう弾が足りません!」
船員の一人が叫んだ。汗だくになって法石銃を撃ち続けている。
「どこに逃げるんだよ!」
ガランは改造法石ライフルを構えたまま怒鳴り返した。30代前半の長身の男。褐色肌の黒髪の男だった。整った顔立ちだが、目つきには野性的な光がある。船長帽を斜めにかぶり、インテリアウトローを気取った風貌だ。
「荷物を見られたら縛り首だ!お前らわかってんのか!」
雷牙号の船倉には、帝国の法律では完全に違法な品物が詰まっている。武器、薬物、偽造証明書。航空連盟の自律性を悪用した密輸品の数々。
「いいからエンジンかけて離脱できるようにしろ!」
「エンジンかけるのに下に行ったら、船に侵入されますよ!」
機関士が反論した。
「くっそお!共和主義者のくそったれが!」
ガランは舌打ちして、また一人の敵を撃ち抜いた。銃の腕は確かだ。
航空連盟。帝国認可を受けながらも、法律の外で活動する自律組織。「空の民」と自称する彼らの誇りが、ガランを戦わせ続けていた。初代女帝ニイナを初代会長として標榜する、空の自由を愛する集団。
「船長、左舷に敵が回り込んできます!」
見張りの船員が叫んだ。
「くっそー!」
ガランは舌打ちした。このままでは包囲される。
「船長!もうダメです!逃げましょう!」
「だから、どこに逃げるんだよ!」
その時、船員の一人が空を指差した。
「船長!何か来ます!」
巨大な影が、空港に向かって駆けてくる。5メートルの法力アーマー。帝国軍の機体だ。
「敵の新手か!?」
ガランは目を細めた。帝国軍の機体だが、敵の増援かもしれない。
巨大なアーマーが空港の敵を次々と撃破していく。共和主義者の機体が爆発し、炎上する。
「おおっ!?」
「やっちまえ!」
ガランが興奮して叫んだ。
「やった!帝国の軍隊が来てくれたんだ!」
船員たちも歓声を上げた。救援が来たのだ。
「助かった......」
ガランは安堵の息をついた。しかし、次の瞬間、顔が青ざめた。
「待てよ......荷物......」
船倉の違法品の数々軍人に見られていいものでもない、どうしよう。




