表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/146

第四十八話「居場所のない夜」



港町の安宿、航空船員たちの溜まり場。


煙草の煙と安酒の匂いが充満する薄暗い酒場に、ニーナはまた現れた。


「よう、嬢ちゃん」


トムが手を挙げる。


「また抜け出してきたのか?」


「......うん」


ニーナはカウンターに腰を下ろした。モニカがすぐにビールを差し出す。


「今日も大変だったの?」


「大変っていうか......」


ニーナは缶を開けて、一口飲んだ。


「なんか、息苦しいんだよね」


ガランが奥のテーブルから顔を上げた。


「どうした? エリート部隊ってのは、そんなに堅苦しいのか?」


「堅苦しいっていうか......」


ニーナは言葉を探す。


「最近さ、四大家の事情とか、誰がどこの派閥とか、なんとなく分かってきてさ」


「ほう」


「ディアス隊長はイシュタル家の息がかかってて、セラフィナはベオルブ家直系で、マルコはナブ家の分家で......」


ジャックが口笛を吹く。


「そりゃ面倒くさそうだな」


「でしょ?」


ニーナはもう一口飲んだ。


「私、どこの家でもないから。孤児院育ちだし。だから、なんていうか......居場所がないっていうか」


モニカが隣に座った。


「分かるよ、その気持ち」


「それでさ」


ニーナの愚痴が加速する。


「今回の作戦だって、結局私が矢面に立たされることになってさ。『法力測定値が高いから』『才能があるから』って」


「化け物と正面切って戦えってか?」


トムが眉をひそめる。


「そう! まさにそれ!」


ニーナはテーブルを叩いた。


「なんか......面倒ごと押し付けられたなあって思うんだよね」


「それ、聞いて大丈夫な話?」


ジャックが心配そうに言う。守秘義務とか、そういうの。


「バレなきゃ大丈夫」


「だめじゃん」


ニーナはあっけらかんと答えた。


「第一、船には世話になってるんだからさあ。これくらい話したっていいでしょ」


---


「でもさあ」


モニカが酔っ払い始めていた。


「そんな職場、やめちまえばいいじゃん!」


「簡単に言うなよ」


「なんで? うちに来なよ、雷牙号に!」


モニカがニーナの肩を抱く。


「船長も絶対歓迎するよ~」


「そういうわけには......」


---


「よし、カードやろうぜ!」


トムがトランプを取り出した。


「負けたら一杯な」


「いいよ、やってやる!」


ニーナも乗り気になってきた。酒が回り始めて、頬が赤くなっている。


数時間後。


「ぶははは! また私の勝ち~!」


ニーナはすっかり出来上がっていた。テーブルには空き缶が山のように積まれている。


「嬢ちゃん、強すぎだろ」


ジャックが頭を抱える。


「だって、みんな表情に出すぎなんだもん」


ニーナがへらへら笑う。


「モニカなんて、いい手が来ると目がキラキラするし」


「そんなことないもん!」


モニカも真っ赤な顔で反論する。


ガランは苦笑いしながら、二人の様子を眺めていた。


(そんな危険な仕事なのか)


ニーナが語る話を聞いていると、ブレイドという組織の異常さが伝わってくる。化け物と戦い、仲間が次々と死んでいく。そんな環境に、この若い女の子が放り込まれている。


「ニーナ」


酒場の入り口で、声がした。


レイが立っていた。


「探したぞ。隊長が呼んでる」


「......もう?」


ニーナが立ち上がろうとして、よろめいた。


「うわっと」


「おい、大丈夫か?」


レイが慌てて支える。


「だいじょーぶ、だいじょーぶ」


明らかに大丈夫じゃない。


「ったく、飲みすぎだろ」


レイは苦笑いしながら、ニーナの腕を肩にかけた。


「悪い、また来るね~」


ニーナがへらへらと手を振る。


「おう、いつでも来いよ」


トムが手を振り返す。


ニーナとレイが出て行った後、モニカがガランに詰め寄った。


「ねえ、船長」


「なんだよ」


「あの子、ヘッドハンティングしましょうよ」


「は?」


「だって、可哀想じゃない。居場所がないって言ってるんだよ?」


ガランは頭を掻いた。


「でもなあ、あいつは推薦されてあの立場にいるんだろ? 才能が埋もれるんじゃねえかな」


「冷たいなあ、船長」


モニカがぷうっと頬を膨らませる。


「ニーナちゃんも、こっちに来たいから抜け出してきてるんでしょ? もっと構ってあげなよ~」


「構うって言ってもな......」


ガランは天井を見上げた。


確かに、ニーナはこの場所を求めている。エリート部隊よりも、この薄汚い酒場の方が、彼女には合っているのかもしれない。


「まあ、考えとくよ」


「絶対だよ!」


モニカはそのまま、テーブルに突っ伏して寝てしまった。


ガランは静かに酒を飲みながら、ニーナのことを考えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ