第四十四話「四家緊急会議」
帝国中央会議室。
普段は月に一度しか開かれない四大家の会議が、緊急招集されていた。
「諸君、状況は想像以上に深刻だ」
エンキドゥ・ボムが重い口を開いた。
円卓を囲むのは、ベオルブ家のイナンナ、イシュタル家のエレシュキガル、ナブ家のギルガメシュ。そして、大元帥としてメルベルも同席していた。
「捕獲した共和主義者への尋問結果をまとめた」
エンキドゥが資料を配る。
「主犯格は五名。リーダー格一名と、部下四名」
イナンナが眉をひそめた。
「たった五人?」
「たった五人で、帝国を震撼させている」
エンキドゥの声に苦渋が滲む。
「全員、青白い肌。ルカヴィの重症患者と思われる」
「ルカヴィは治療可能なはずよ」
エレシュキガルが口を挟む。
「ええ、通常なら。だが、彼らは違う」
メルベルが続けた。
「治療不可能域まで進行した症例。理論上は存在しないはずだが......」
ギルガメシュが咳払いをした。
「年齢は?」
「不明。だが──」
エンキドゥが言葉を切る。
「推定、百年以上」
静寂が落ちた。
「百年......」
イナンナが呟く。
「見た目は全員二十代。老化が止まっている」
エレシュキガルが資料をめくる。
「リーダーの特徴は?」
「左腕」
メルベルが答えた。
「切断痕がある。縫合の跡も確認されている」
「切断? 事故か?」
「分からない。だが、かなり古い傷だ」
ギルガメシュが指を組んだ。内心、冷や汗が流れる。青白い集団。自分が密かに接触した相手と同じだろうか。
「問題は、彼らの行動だ」
エンキドゥが話を戻す。
「各地のバンカー、つまりアジョラ様の隠れ家の場所を、なぜか知っている」
「なぜか、ですか」
イナンナの声に皮肉が混じる。彼女自身、アジョラから聞いた場所を知っているのだから。
「そして、扉を開けている」
この言葉に、全員が反応した。
「開けている? どうやって?」
エレシュキガルが身を乗り出す。
「不明だ」
メルベルが首を振る。
(俺も、母上も、血統があるから開けられた。なのに、なぜ......)
「盗まれた情報は?」
ギルガメシュが聞く。
「研究資料、法石精製技術、その他機密文書」
エンキドゥが指を折る。
「それらを資金源にして、テロ活動を展開。外国への技術流出も確認されている」
「帝国の技術的優位が......」
イナンナが歯噛みする。
「対策は?」
「まず、残りの隠れ家の確保」
メルベルが提案する。
「我々より先に、全て回収する必要がある」
(それぞれが、どれだけの場所を知っているのか......)
四人の当主は、互いに探り合うような視線を交わした。
「もう一つ」
エンキドゥが続ける。
「青白い集団の正体を突き止める必要がある」
「百年以上生きているルカヴィ......」
エレシュキガルが考え込む。
「アジョラ様の研究と、何か関係があるのかしら」
その言葉に、メルベルの眉がピクリと動いた。
「可能性はある」
「いずれにせよ」
イナンナが立ち上がる。
「早急に対処しなければ、帝国の根幹が揺らぐ」
全員が頷いた。




