表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/177

第三十五話「船上の日常」



雷牙号の甲板に、ブレイドの面々が整列していた。


「ようこそ、雷牙号へ」


ガラン・ベルが、いつもとは違う真面目な顔で挨拶した。


「俺がこの船の船長、ガラン・ベルだ」


船員たちも並んでいる。モニカ、トム、ジャック、アザリア、アティ。皆、興味深そうにブレイドの若者たちを見ていた。


「こっちが俺の船員たちだ。モニカはメカニック、トムは機関士、ジャックは砲手......」


一通り紹介が終わると、ガランは船員たちに手を振った。


「よし、持ち場に戻れ」


船員たちが散っていくと、ガランの表情が一変した。厳しい目で、ブレイドの面々を見つめる。


「さて、最初に言っておく」


声のトーンが低くなった。


「この船の中では、お前らの背景は関係ねえ」


セラフィナが眉をひそめたが、ガランは構わず続けた。


「四大家だろうが、皇帝推薦だろうが、俺には関係ない。ここでは全員、ただの乗客だ」


「しかし——」


エリスが何か言いかけたが、ガランは手を上げて制した。


「クルーに敬意を払えねえ奴は、即刻降りてもらう。いいな?」


重い沈黙が流れた。


「それと」


ガランは腕を組んだ。


「船の中では、船長である俺の指示は絶対だ。軍の階級も、家の格も関係ねえ。命令に従えないなら、今すぐ降りろ」


ディアスが苦笑いを浮かべた。


「分かった、船長。お前の船だ、お前のルールに従う」


「賢明だな」


ガランは満足そうに頷いた。


「じゃあ、部屋を案内する。ついて来い」


各自に個室が与えられた。狭いが、清潔で快適だ。


荷物を置いて船内を歩いていると、ニーナはレイと出くわした。


「よう、ニーナ」


レイが気さくに声をかけてきた。


「暇?」


「まあ、そうですね」


「俺もだ。正直、ちょっと肩身が狭かったんだよな」


レイは頭を掻いた。


「平民出身は俺だけだし」


「私も」


ニーナは肩をすくめた。孤児院育ちなんて、もっと酷い。


「そうだ、船員たちと話してこようぜ」


レイの提案で、二人は食堂に向かった。


そこでは、船員たちがカードゲームをしていた。


「お、嬢ちゃん!」


トムが手を振った。


「また会ったな」


「トムさん、ジャックさん」


ニーナが笑顔で応えると、モニカも顔を出した。


「ニーナ!久しぶり!」


「モニカ!」


女同士、すぐに打ち解ける。


「一緒にやるか?」


ジャックがカードを示した。


「いいですね」


レイも興味深そうに座った。


「お、兄ちゃんも一緒か」


「レイです。よろしく」


すぐにゲームが始まった。船員たちは遠慮なく、ブレイドの二人も普通に楽しんでいる。


「なんつーか、お家柄?ってやつ?」


レイがカードを切りながら愚痴った。


「メルベル様の推薦で入ったはいいけどさあ、元の部隊に戻りたいって思ったこと、何回もあるね」


「分かります」


ニーナも頷いた。


「どいつもこいつも、お高く止まってるのよ」


レイは笑った。


「まあ、俺の態度が悪いからかな?いや、関係ないかも!」


そう言って、また新しい手を配る。


(こんな可愛い女の子の監視なんて、大歓迎だぜ)


レイは内心でにやけながら、ニーナを見た。金髪に赤い瞳。美少女だ。


「ニーナ、こっち来て」


モニカが手招きした。


「女子トークしましょ」


「はーい」


ニーナが移動すると、レイは男たちと話し始めた。


一方、廊下では、セラフィナが不機嫌そうに立っていた。


「品がないわ」


食堂から聞こえてくる笑い声に、顔をしかめる。


「セラフィナ」


ディアスが後ろから声をかけた。


「何してる」


「別に」


「まだ任務は始まったばかりだ。そんな顔してたら、今から疲れるぞ」


ディアスは肩をすくめた。


「クルーと話でもしてこい。情報収集も任務のうちだ」


「......分かりました」


セラフィナは嫌そうな顔をしたが、仕方なく食堂とは別の部屋に向かった。


そこには、マルコとエリスがいた。


「あら、セラフィナ」


エリスが微笑んだ。


「どう?船は」


「狭くて、臭くて、最悪よ」


セラフィナは椅子に座った。


「でも、仕方ないわ。任務だもの」


「そうね」


エリスも苦笑いを浮かべた。


「でも、あの船長、意外と骨があるわ」


「ただの成り上がりでしょう」


「でも、ベオルブ家の——」


セラフィナが鋭い視線を向けたので、エリスは口を閉じた。


マルコが話題を変えた。


「それより、任務の詳細はまだ聞いてないよな」


「ええ」


「アジョラ様の隠れ家って、どんな場所なんだろう」


三人は顔を見合わせた。それぞれの家から、それぞれの指示を受けている。だが、今はまだ、カードを見せる時ではない。


夕方になり、ガランが全員を集めた。


「明日の朝、最初の目的地に着く」


地図を広げる。


「ここだ。北部の山岳地帯」


「隠れ家が?」


ディアスが聞いた。


「さあな。俺は運ぶだけだ」


ガランは肩をすくめた。


「詳しいことは、お前らの方が知ってるんだろ?」


誰も答えなかった。


「まあいい。とにかく、明日に備えて、今日は早く寝ろ」


解散後、レイは自室で報告書を書いていた。


『メルベル様へ。雷牙号に乗船。ニーナ・クロウは船員と親しくしている。特に異常なし。明日、北部山岳地帯へ』


短い報告。だが、これで十分だ。


(さて、明日から本番か)


レイは窓の外を見た。


雷牙号は、夜の空を静かに進んでいく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ