表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/146

第三十話「新たな道」



エリドゥ、帝国軍司令部。


「兄さん!」


ラムザが駆け寄ると、メルベルは珍しく顔をほころばせた。


「よく無事で戻った」


大きな手で、ラムザの頭をくしゃくしゃと撫でる。


「もう、子供扱いしないでくれ」


ラムザが顔を赤らめて抗議するが、メルベルは構わない。


「爆弾を回収してきたんだってな。大したもんだ」


「運が良かっただけさ」


「運も実力のうちだ」


メルベルは弟の肩を叩いた。二十五歳の青年にとって、十三歳の弟は何より大切な存在だった。


「ところで、俺も忙しくてな」


メルベルが地図を広げた。


「アジョラ様の隠れ家を突き止めて、保護する部隊を編成してる。ブレイドの精鋭を使ってな」


「そうか......母上の遺産は、危険だから」


「ああ。敵がいたら排除する」


メルベルの目が鋭くなった。戦場での顔だ。


「そういえば」


ラムザが思い出したように言った。


「兄さん、頼みがあるんだ」


「なんだ?」


「襲撃の時に助けてくれた兵士がいてね」


ラムザは、ニーナのことを話し始めた。最初の戦闘での活躍、雷牙号での珍道中、そして爆弾奪取での奮戦。


「へえ、女の整備兵が」


メルベルが興味深そうに眉を上げた。


「でも、本当に田舎者でさ」


ラムザは苦笑いを浮かべた。


「手づかみで飯を食うし、マナーも最悪。でも、根は真面目でいい奴なんだ」


「ほう」


「船での生活も、狭い部屋で過ごしたけど、なかなか刺激的だったよ」


「刺激的、ねえ」


メルベルがニヤニヤと笑った。


「お前、まさか」


「違う!そういうことじゃない!」


ラムザが慌てて否定する。


「じゃあ、気に入ったんなら、お前の秘書にでもすればいいだろ」


「だから、そういうことじゃないって!」


ラムザの顔が真っ赤になった。


「とにかく、兄さんのところで面倒を見てやってくれないか?」


「俺のところで?」


「ブレイドに入れてやってくれ。腕は確かだから」


メルベルは少し考えてから、肩をすくめた。


「まあ、かわいい弟の頼みだ。断る理由もねえな」


「ありがとう、兄さん」


「で、その田舎娘の名前は?」


「ニーナ・クロウ。帝国陸軍の二等整備兵だ」


「整備兵か......まあ、法力があるなら何とかなるだろ」


一方、その頃。


ニーナは兵舎の自室で、にやにやが止まらなかった。


机の上には、金一封の封筒。中を覗くと、札束がぎっしり。一万メルベラ。生まれて初めて見る大金だ。


「二階級特進......上等兵......」


新しい階級章を撫でる。ピカピカに輝いている。いや、実際は前と変わらないのだが、彼女にはそう見えた。


「給料も上がるし、個室ももらえた」


狭いが、自分だけの部屋。孤児院では考えられなかった贅沢だ。


「もう言うことなし!」


ベッドに寝転がって、天井を見上げる。幸せだった。


コンコン。


ノックの音に、慌てて起き上がる。


「は、はい!」


扉を開けると、そこには直属の上官、ゴーマン伍長が立っていた。普段は怒鳴ってばかりの男だが、今日は妙に優しい顔をしている。


「ニーナ、ちょっと来い」


「は、はい」


「いいニュースだ」


伍長がにやりと笑った。


「え?」


廊下を歩きながら、伍長が小声で言う。


「詳しいことは俺も聞いてねえんだが、お前、とんでもない出世をするらしいぞ」


「出世?もう二階級も上がったのに?」


「それどころじゃねえ」


伍長は振り返った。


「多分、お前は軍曹になる」


「軍曹!?」


ニーナは立ち止まった。


「嘘でしょう?」


「本当だ。つまり、俺より階級が上になるってことだ」


伍長は苦笑いを浮かべた。


「16歳で軍曹なんて、聞いたことねえけどな」


ニーナの頭が真っ白になった。軍曹。それは、あの偉そうなアーマーパイロットたちと同格か、ちょっと下くらいの階級。


(あの時、勇気を振り絞って皇帝を助けに行った甲斐があった!)


ウキウキしながら歩いていると、普通の兵舎とは離れた、立派な軍事施設に着いた。


「ここは......」


「上級法力兵の施設だ」


伍長が説明した。


建物の前で、別の軍曹が待っていた。制服のデザインが変わっている。紺色に金の装飾。ブレイドの制服だ。


「ニーナ・クロウか」


「は、はい!」


「ついて来い」


伍長と別れ、軍曹についていく。廊下を歩きながら、ニーナは緊張が高まっていく。


(なんだか物々しいな......)


扉の前で、軍曹が振り返った。


「入れ」


扉が開くと、そこは広い部屋だった。


中には、同じ紺色の制服を着た人々が二十人ほどいる。皆、精悍な顔つきで、明らかにエリート兵士だ。


「ニーナ・クロウを連れてきました!」


軍曹が大声で報告すると、そのまま部屋を出ていった。


ニーナは直立不動のまま、敬礼の姿勢を保つ。


(一体、どういうこと?)


すると、一人の男が近づいてきた。三十代くらいで、人懐っこい笑顔を浮かべている。


「君が新入りか」


「は、はい!」


「そんなに固くなるなよ」


男が肩を叩いた。


「俺はディアス。ブレイドの小隊長だ」


「ブレイド......」


皇室護衛隊。帝国最強の法力兵集団。まさか、自分がその一員に?


その時、奥の扉が開いた。


「おう、来たか」


現れたのは、メルベル・イシュタルだった。


「げ、元帥閣下!」


ニーナは慌てて敬礼した。帝国軍大元帥。伝説の「鬼神」が目の前にいる。


「君がニーナ・クロウか」


メルベルが近づいてくる。威圧感が凄まじい。


「は、はい!」


「ラムザ殿下の救出、爆弾の回収、実に見事だった」


「あ、ありがとうございます!」


「ラムザ殿下の推薦があってな」


メルベルがニヤリと笑った。


「君を俺の部下にしようかと思ってな」


「え?」


「今から検査を受けてもらう。ブレイド隊員としての適性検査だ」


ニーナの頭が混乱した。ブレイド?自分が?


「結果次第では、俺の直接指揮下に入る」


メルベルが振り返った。


「さっそく検査を開始する」


「ちょ、ちょっと待って下さい!」


ニーナが慌てて声を上げた。


「私、ただの整備兵で......」


「整備兵が、法力アーマーを操縦して敵を三機撃破したんだろ?」


メルベルが振り返った。


「それに、青白い化け物とも戦ったそうじゃないか」


「それは......」


「謙遜はいらない」


メルベルが手を振った。


「実力があるなら、上に行く。それだけだ」


ディアスが苦笑いを浮かべた。


「元帥はああ見えて、実力主義なんだ。出身とか関係ない」


「でも......」


「まあ、検査を受けてみろ」


メルベルが言った。


「受からなかったら、元の部隊に戻すだけだ」


そう言われては、断れない。


「......分かりました」


ニーナは覚悟を決めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ