第十五話「機密指令」
帝都新エリドゥ、軍事司令部。
メルベルは緊急召集された幕僚たちを前に、深刻な表情で立っていた。
「諸君、極秘情報が入った」
会議室の空気が一層重くなった。
「自由戦線が、大規模テロを計画している」
幕僚の一人が身を乗り出した。
「大規模テロとは?」
「新型爆弾を使った攻撃だ」
メルベルは資料を見つめた。
「詳細は不明だが、従来のテロとは比較にならない規模になると予想される。ガルガンド市が標的だ」
会議室に衝撃が走った。
「ガルガンド市で実験使用を計画している」
ガルガンド市——メルベリア大陸南部の地方都市。人口約8万人の商業都市だ。
「直ちに該当地域の空域を封鎖する」
メルベルは命令を下した。
「第四艦隊をガルガンド上空に配備。半径100キロの空域を完全封鎖せよ」
「了解」
「住民への対応は?」
参謀が質問した。
「パニックを避けるため、爆弾のことは絶対に漏らすな」
メルベルは厳しく言った。
「軍による大規模捜索作戦、それだけを理由とする。検問も強化しろ」
「航空関係者には?」
「同様だ。軍事演習のための飛行禁止とだけ伝えろ」
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ガルガンド市では、突如として帝国軍の車両が街中に現れた。
「何だ、この騒ぎは?」
商店主たちが困惑していた。
兵士たちが建物を一軒一軒調べ始める。倉庫、地下室、屋根裏まで、徹底的な捜索だ。
「軍事演習の準備だそうです」
兵士の一人が説明した。
「しばらく騒がしくなりますが、ご協力ください」
住民たちは不安そうに見守っていたが、避難までは命じられていない。日常生活は続いている。
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航空管制センターでは、管制官たちが慌ただしく動いていた。
「全航空機に緊急通達」
管制官が無線に向かった。
「ガルガンド市半径100キロ空域、即座に飛行禁止。理由は大規模軍事演習のため」
『了解、管制。迂回ルートは?』
民間機のパイロットから質問が入る。
「東回りルートまたは西回りルートをご利用ください。詳細は別途通知します」
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雷牙号の船橋では、ガランが管制からの通達を聞いて舌打ちしていた。
「軍事演習だと?こんなタイミングで?」
航路図を見直す。ガルガンド空域は、エリドゥへの最短ルートの真ん中にある。
「これを迂回するとなると......」
計算してみると、少なくとも2日は余分にかかる。
「ちくしょう、帝国の連中のせいで......」
選択肢はない。軍事演習空域に侵入すれば、問答無用で撃墜される。
「東回りで行くしかないな」
ガランは方針を決めた。
「乗客には何て説明するか......」
金持ちの客に、さらに遅延を告げなければならない。しかも、料金は既に交渉済みだ。
「まあ、仕方ない」
雷牙号は、予定より大幅に長い迂回ルートへと向かった。
エリドゥへの道のりは、さらに険しくなった。




