表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/146

第十三話「戦後の現実」



戦闘の後、甲板に戻ってきたガランは、眼下に広がる光景を見つめていた。


黒煙を上げて墜落した小型艇。散乱した機体の破片。そして、動かなくなった敵の姿。


空の青さと、地上の惨状の対比が、妙に印象的だった。


「なかなかやるな」


ガランはニーナに声をかけた。気楽な調子だったが、その目は船内での出来事を見ていたことを示していた。


「えらいところのお嬢さんは、才能が違うな」


法力で敵を一撃で仕留めた瞬間を、彼は確かに目撃していた。あの怪力は、並の法力兵のものではない。


しかし、ニーナの表情は晴れなかった。


「帝国領内での戦闘なんて......どうかしてる」


声に困惑が滲んでいる。


「おまけに、相手を助けずに略奪まで......」


「あんな連中にまで、ご苦労な話だな」


ガランは肩をすくめた。


戦利品として持ち帰った荷物を指差す。箱や袋には、様々なタグが付いている。


「これは奪われた荷物で、タグがついてる。近くの空港まで持っていけば、連中に奪われた荷物を取り返したってことで、結構金が出る」


ガランの説明は淡々としていた。


「落とし物を拾ってきたってことでな。だから、これは略奪でもないし、第一俺たちは襲われた側だ。難癖をつけられる筋合いもない」


ひょうひょうとした口調だが、その論理は一貫している。


「あんたみたいな金持ちの連中には分からないだろうが、俺たちのやり方に口出しするな」


ニーナは反論しようとした。自分の本当の出自——戦争孤児、軍の底辺からの這い上がり——を思い出したからだ。


『私だって......』


しかし、言葉が喉に詰まった。正体がばれてはまずい。ライネルの姉という設定を維持しなければ。


ニーナが黙っているのを見て、ガランは彼女が反論できずにいることに気づいた。それに、改めて見ると、まだ16歳の少女だ。きつく言いすぎたかもしれない。


「とりあえず......手伝ってくれたのは助かった」


少し申し訳なさそうに、声のトーンを和らげた。


「エリドゥまで2日ほどだが、よろしく」


そう言って、そそくさとその場を立ち去っていく。


ガランが去った後、ラムザがニーナに近づいてきた。


「連中にはあまりまともに付き合うな」


低い声で忠告した。


「この船の中だけの付き合いだ。もっと愛想よくして、トラブルを避けろ」


実際的なアドバイスだった。しかし、次の瞬間、ラムザの表情に興味深そうな色が浮かんだ。


「奴の言う通り、なかなかの力だった。法力兵なのか?」


「はい......」


ニーナは頷いた。


「アーマーパイロットの志望者だったので」


「なるほど」


ラムザは納得した。パイロットは機体の操縦だけでなく、自身の戦闘能力も重要な評価要素だ。基本的に法力兵でなければ務まらない。


「それで、あの戦闘技術か」


二人の間に、しばしの沈黙が流れた。


青空の下、雷牙号は目的地に向かって飛び続けている。しかし、この船に乗る限り、平穏な旅路は期待できそうにない。


ニーナは改めて実感した。帝国の法と秩序の外には、全く違うルールで生きる人々がいる。そして今、自分はその世界の住人として扱われているのだ。


『あと2日......』


エリドゥまでの道のりが、やけに長く感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ