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第十一話「身元調査」



襲撃現場で、メルベルは部下からの報告を聞いていた。


「生存者の証言をまとめました」


副官が資料を差し出した。


「5号機を操縦していたのは、ニーナ・クロウという整備兵です」


「ニーナ・クロウ......」


メルベルは名前を反復した。


「帝国陸軍第三師団整備班所属、二等整備兵。16歳、戦争孤児です」


「戦争孤児か」


「はい。ゴーティス上等兵の戦死後、権限委託を受けて5号機を操縦したものと思われます」


部下も同じ判断だった。


「整備兵が実戦でアーマーを......」


メルベルはほおと息を吐いて感心した。整備の知識があるとはいえ、実戦は別だ。よくやったものだ。


「それで、その兵士とラムザ殿下は?」


「おそらく一緒に雷牙号で脱出したかと」


その時、別の部下が駆け寄ってきた。


「大元帥!緊急報告です!」


「何だ」


「テロ組織が強力な爆弾を用意しているという情報が入りました。帝都への大規模攻撃の可能性があります」


メルベルの表情が険しくなった。


「それだけではありません」


続けて報告が入る。


「東征大陸で暴動が発生。緑海大陸でも独立派の蜂起が確認されています」


「植民地が......」


メルベルは苦い顔をした。テロによる混乱に乗じて、各地で反帝国勢力が動き始めている。


「大元帥、どう対処いたしますか?」


部下たちが指示を待っている。内心では、ラムザ殿下の救出は自分たちブレイド部隊に任せて、大元帥には植民地の反乱鎮圧を優先してほしいと思っていた。帝国全体の危機なのだ。


しかし、メルベルの思考は違った。


弟の救出、テロ組織の制圧、植民地の暴動鎮圧。全てが同時に起こっているが、彼にとって最優先は身内だった。


「第一艦隊を帝都防衛に回せ。第二艦隊は東征大陸の暴動鎮圧」


メルベルは指示を出した。


「緑海は第三艦隊で対処。俺はラムザの救出に向かう」


「しかし大元帥、植民地の反乱は帝国の根幹に関わる問題です。大元帥自らが——」


「ブレイド隊長として、皇族の護衛が最優先だ」


メルベルは部下の提案を遮った。


大元帥としての責任よりも、ブレイド隊長としての使命を選んだのだ。身内への執着が、帝国全体の利益を上回っている。


「了解」


部下たちが散っていく。


メルベルは資料を見直した。ニーナ・クロウ。16歳の戦争孤児。第三師団整備班の二等整備兵。


正式に配備されている帝国の兵士だ。記録も帳簿もすべて揃っている。


「気になるな......」


メルベルは呟いた。


整備兵の知識だけで、あれほどの実戦能力を発揮できるものなのか。整備兵にしておいたのが惜しい、どうも最近の帝国の兵隊の選考基準というのが歪んでいる気がする。


「無事にいてくれるといいんだが」


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