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最弱職《記録者》は戦えないけど、なぜか仲間が最強になる  作者: 神崎ユウト


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第5話 追放

 焚き火の音だけが、やけに大きく聞こえた。


 ダンジョン踏破訓練を終えた夜。

 四人は簡易の野営地で休んでいた。


 ガルドは無言で剣を手入れしている。

 ミレイナは少し離れた場所で魔力制御の練習。

 リシアは、包帯を巻き直しながら、ちらちらとこちらを見ていた。


 空気が、重い。


「……なあ」


 最初に口を開いたのは、ガルドだった。


「今日の戦闘、どう思う?」


 唐突な問いだった。


「どう、とは?」


 ミレイナが答える。


「普通に成功でしょ。訓練としては上出来」


「だよな」


 ガルドは頷き、ちらりとアルトを見る。


「でもよ、引っかかることがある」


 アルトは、何も言わず待った。


「戦闘中の指示だ。特に、お前だ」


 焚き火の火が、ぱち、と弾ける。


「お前の言った通りに動いて、たしかに助かった場面はあった」


 アルトは、わずかに目を見開いた。


「だがな」


 ガルドの声が低くなる。


「指示が多すぎる」


「……」


「しかも、お前は戦えない」


 それは、事実だった。


「前に出るわけでもなく、責任を取る立場でもない。

 そんな奴が、戦闘中に口を出すのは――」


 ガルドは、はっきりと言った。


「危険だ」


 ミレイナが、腕を組んで頷く。


「正直、怖かったわ。

 間違ってたら、誰が責任取るの?」


 アルトは、唇を噛んだ。


 ――間違っていなかった。

 ――だが、それを証明する術はない。


「私は……」


 リシアが、声を上げかける。


 だが、ガルドが先に続けた。


「リシア。お前は優しすぎる」


 リシアは、はっと口を閉じた。


「結果は出た。

 だからこそ、次はもっと安定を求めるべきだ」


 ガルドは立ち上がり、アルトの前に立つ。


「アルト。悪いが――」


 一瞬、言葉を切り、深く息を吸う。


「このパーティから外れてくれ」


 焚き火の音が、遠くなった気がした。


「……追放、ということ?」


 アルトは静かに確認する。


「ああ」


 ガルドは目を逸らさない。


「これは感情の問題じゃない。

 戦闘効率と安全性の話だ」


 ミレイナも、どこか安心したように言った。


「記録者が悪いってわけじゃないの。

 ただ、冒険者向きじゃないだけ」


 アルトは、ゆっくりと頷いた。


「……わかった」


 あまりにも素直な返事に、ガルドが一瞬だけ眉をひそめる。


「荷物は持っていけ。

 訓練所までは戻れるだろ」


「うん」


 アルトは立ち上がり、静かに荷をまとめ始めた。


 ノートを手に取った、その時。


「アルト……!」


 リシアが、ついに声を上げた。


 彼女は立ち上がり、何か言おうとして――

 だが、言葉が続かなかった。


 止めたい。

 間違っていると思う。


 それでも、空気を壊す勇気がなかった。


「……ごめん」


 絞り出すような声。


 アルトは、振り返らなかった。


「大丈夫」


 それだけ言って、歩き出す。


 夜の闇に、背中が溶けていく。


 しばらく歩いた後、アルトは立ち止まった。


 月明かりの下、ひとり。


 風が冷たい。


「……やっぱり、そうなるよね」


 誰に向けるでもなく、呟く。


 ノートを開く。


 そこには、今日までの記録がびっしりと書かれていた。


 ガルドの剣癖。

 ミレイナの詠唱速度。

 リシアの回復成功率。


 ――誰よりも、仲間を見ていた。


「……無駄じゃなかった」


 アルトは、そう言って、ノートを胸に抱いた。


 戦えなくてもいい。

 必要とされなくてもいい。


 それでも、自分は見てきた。


 世界は、再現できる。


 その事実を、まだ誰も知らないだけだ。


 アルト・レインは、夜道を進む。


 最弱職《記録者》として。

 そして――


 世界を揺るがす存在になることを、

 まだ誰も知らないまま。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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