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最弱職《記録者》は戦えないけど、なぜか仲間が最強になる  作者: 神崎ユウト


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第13話 参謀という肩書き

 冒険者ギルドに、妙な依頼が増え始めていた。


「戦術補助募集」

「作戦立案のみ」

「現地同行可、戦闘参加不要」


 掲示板の片隅。

 報酬は低く、条件は曖昧。


 だが、確実に――

 アルトを意識した依頼 だった。


「……これ」


 アルトは、一枚の依頼書を剥がした。


【小規模討伐・作戦補助】

報酬:銅貨+成果給(少額)

備考:戦闘不参加


「随分、都合がいいな」


 背後から声がした。


 振り返ると、ギルド職員の中年男が立っている。

 管理担当だ。


「君に直接頼むと、角が立つからね」


「……角?」


「“戦えないのに結果を出す存在”は、扱いづらい」


 男は、正直だった。


「だから、肩書きを与える。

 参謀、補助、顧問……何でもいい」


 アルトは、少し考えた。


「……報酬が低いです」


「それが“相場”だ」


 男は肩をすくめる。


「君が戦っていない以上、

 成果の中心には据えられない」


 それも、事実だった。


「……分かりました」


 アルトは、依頼書を受け取った。


 今回の依頼は、五人パーティだった。


 経験はそこそこ。

 だが、決定打に欠ける。


「参謀役の……えっと」


「アルトです」


「よろしく。

 正直、よく分かってないんだけど」


 前衛の男は、気まずそうに笑った。


「戦わないんだよな?」


「はい」


「命令は?」


「……提案だけです」


「……助かるような、困るような」


 その言葉が、今の立ち位置をよく表していた。


 討伐対象は、洞窟棲みの魔物。


 地形は狭く、音が反響する。


「……まず、順番を変えます」


 アルトは、地図を指差す。


「前衛二人が同時に入らない。

 一人ずつ、交代で」


「え? 火力足りるか?」


「足ります」


 根拠は言わない。


 言っても、理解されないからだ。


 戦闘開始。


 アルトは、最後尾で壁を背に立つ。


「今、踏み込まない」

「魔法、次」

「……待って」


 短い言葉。


 誰も逆らわない。


 結果、魔物は崩れた。


 被害は、軽微。


「……勝ったな」


「正直、楽だった」


 パーティ内に、安堵が広がる。


 だが――


「作戦が良かったな」

「参謀のおかげだ」


 誰も、アルトを見ない。


 “役割”として評価しているだけ だった。


 ギルドでの報告。


「成功ですね」


 管理担当が書類に目を落とす。


「参謀料として、こちらを」


 渡されたのは、銅貨数枚。


「……少ないですね」


「そうだな」


 男は、悪びれずに言った。


「だが、これが君の立場だ」


 アルトは、頷いた。


 怒りはなかった。


 ――予測通りだ。


 問題は、別にある。


「……次も、同じ依頼が?」


「増えるだろう」


 男は、声を落とす。


「だが、気をつけた方がいい」


「?」


「“参謀”は、

 失敗した時に真っ先に切られる」


 アルトは、その言葉を胸に刻んだ。


 夜。


 宿の部屋で、アルトはノートを開く。


 今日の戦闘。

 配置。

 順番。


 そして、最後に一行。


 《肩書き:参謀》

 《評価:補助的》


「……歪んでる」


 小さく呟く。


 結果を出しても、

 中心には立てない。


 だが、それでいい。


 ――自分が前に立てば、壊れる。


 それを、もう理解していた。


 ノートの隅に、文字が浮かぶ。


 《再現:第三者介在時》


 アルトは、静かにページを閉じた。


 この世界は、

 自分を“便利な道具”として

 扱い始めている。


 そして、それは――

 最も危険な扱い方 だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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