世界一の好物?
――ともあれ、そんなこんなで奮闘すること数十分。
「……ごめん、暁人くん。その……駄目だった」
「……そっか、残念だったね。でも……お疲れ様、雪那ちゃん」
中庭のベンチにて、力なくそう伝える私。すると、怒るでも落ち込むでもなくいつもの――いや、いつも以上の暖かな微笑で労ってくれる暁人くん。そんな彼の優しさに感謝しつつ、それ以上に申し訳なく思う。
「……あの、それで……何か、食べたいものとかある? 私、すぐに買ってくるから」
その後、ほどなくそう問い掛けてみる。電話で聞いても良かったんだけど……まあ、まずは直接謝りたかったから。
とは言え……争奪戦にそこそこ時間を要してしまったわけで、通常時の商品すらもうどれくらい残っているのか。……それでも、流石に何も残ってないことはないだろうし、出来る限り希望に――
「……えっと、それなんだけど――」
「……えっ?」
出来る限り希望に添って――そんな思考を遮るように言葉を紡ぐ暁人くん。そんな彼の手には、桜色のランチクロスに包まれた長方形の箱――いつも私に手渡してくれる、小さなお弁当箱が。……えっと、なんで? だって、今日は私が――
「……その、雪那ちゃんが頑張ってくれることは分かってたけど……それでも、買えるかどうかは分からない。だから、一応のためお弁当を……その、プレミアパンには遠く及ばないけど、いつもと違って今日は、雪那ちゃんの大好物をふんだんに詰め込んだんだ」
「……暁人くん」
――思わず、瞳が潤む。いつもと違って――その言葉通り、普段は私の体調を気遣い栄養バランスを重視したお弁当……もちろん、それも本当に有り難いし本当に美味しい。
だけど……今日は今日で、私のためを思って作ってくれたのだろう。頑張った私を労うために、大好物をふんだんに詰め込んでくれて――
「……うん、ほんとにありがと暁人くん」
「うん、どういたしまして。こちらこそ、頑張ってくれて本当にありがとう、雪那ちゃん」
そう、ありったけの感謝を告げると、同じように感謝を返してくれる暁人くん。……うん、プレミアパンなんて要らないや。だって、私はこれが――私のために心を込めて作ってくれる暁人くんのお弁当が、世界一の好物なんだから。
再び深く感謝を告げ、ランチクロスを解きゆっくりと蓋を開く。さてさて、中身は如何なる――
「――いやタコワサとスルメかい!!」




